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久遠の神話

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第九十四話 憂いが消えてその十一

「どうにもならないまでに」
「大変な状況だよね」
「このままだと経済破綻は確実よ」
 悪いことにギリシア側もそう見ていて努力することを諦めている、どうせ破綻するのなら何をしても無駄だというのだ。
「欧州ではね」
「それを止められないね」
「ドイツの対応もまずいわ」
 智子は国際常識も冷静に見抜いて述べた。
「援助をするだけではね」
「今のギリシアは駄目だよね」
「援助をすると共に」
 それに加えてだというのだ。
「働かせないと」
「それと返済計画も立ててね」
 その莫大な負債のだ。
「そうしないと駄目だね」
「そうでもしないと」
 今のギリシアは、というのだ。
「どうにもならないわ」
「僕もそう思うよ。それがわかっていないのかなEUは」
「日本ならね」
 援助するだけでなく、というのだ。
「返済計画まで立てて出しているわね」
「そうしているね、この国だと」
「アメリカや中国なら援助と共に働かせるわ」 
 例えそれがまさに胸倉を掴んだうえでの強制的なものであったとしてもだ、返済させて健全化させるというのだ。
「そうしているわ」
「その辺り太平洋の方がいいみたいだね」
「今の欧州はどうもね」
「その辺りも衰退しているのかな」
「そこまではわからないけれど」
「けれどギリシアはだね」
「ええ、このままだとまずいわ」
 経済破綻が間違いないというのだ。
「そう見ているわ」
「難儀な話だよ。まあとにかく向こうでは今は仕事がないんだ」
「では暫くは」
「うん、この国にいるよ」
 アポロンは微笑んで妹に答えた。
「仕事もあるしね」
「八条病院ですね」
「そこに勤務するんだね」
「ええ、一時の予定だったけれど」
 また智子がアポロンに答えた。
「その辺りはどうにでもなるわ」
「そうだね」
「ええ、それにしても随分と駅弁が気に入ったのね」
「こんなに美味しいとはね」
 海鮮弁当は既に食べている、しかしそれでもまだ言うのだった。
「他のお弁当も楽しみだよ」
「そうなのね。けれどそこまで言うのなら」
「荷物は部屋に持って行くから」
「お家は」
 アポロンが住む場所についてもだ、智子は話す。
「用意出来るけれど、こちらで」
「いや、そこはね」
「貴方が自分でなのね」
「家はどうとでもなるよ」
 軽い調子でだ、こう答えたアポロンだった。
「僕の方でね」
「そうね、貴方ならね」
「何しろ神だからね」
 この辺りは聡美達と同じだった、彼女達にしても家は自分達の力で用意していたのである、それでなのだった。 
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