万華鏡
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第五十八話 活動再開その二
「いい感じよ」
「じゃあ昨日調子が悪いって感じたのは」
「私の気のせいだったみたいね」
微笑んでだ、部長は琴乃に微笑んで話した。
「よかったわ」
「そうですか」
「それであんたの方はどうなの?」
部長は今度は琴乃を見て彼女に問うた。
「気合入った?」
「ううん、もうちょっと」
「アクセルがかかってないのね」
「もう少しかかりそうです」
こう言うのだった。
「演奏してみます」
「そうするのね。じゃあ朝の間付き合うわ」
部長は自分の楽器を持ったまま琴乃に笑顔で言った。
「そうしましょう」
「そうしてくれるんですか」
「そう、じゃあね」
「はい、今朝は」
「二人でね」
演奏しようとだ、二人で話してだった。
そしてだった、琴乃は部長と二人で部室で演奏した。そうして二人で演奏をしてそれが終わってからだった。
琴乃は微笑んでだ、こう部長に答えた。
「何か少しですけれど」
「スイッチ入ったのね」
「そうなってきました」
「そう、よかったじゃない」
「何かまだぼんやりとしてますけれど」
「少しずつでもね」
それでもだとだ、部長は自分の楽器を収めながら琴乃に話す。琴乃もまた自分の楽器を収めつつ部長の言葉を聞いている。
「かけていけばいいのよ」
「エンジンをですか」
「エンジンはすぐかかる娘とそうでない娘がいるじゃない」
「2ストと4ストですね」
琴乃は部長の話からバイクのこと、かつて友達から聞いたことを出した。
「それですね」
「そうよ、2ストはエンジンがすぐにかかるじゃない」
「それで4ストは」
「かかるのが遅いでしょ」
「そうですね」
「それぞれあるのよ」
人にもだというのだ。
「エンジンがかかる速さがね」
「じゃあ私は4ストなんですね」
「そう、私は2ストでね」
部長は笑顔で自分の話もした。
「それぞれ違うのよ。まあかかるまでやればいいから」
「そうですね、それじゃあ」
「焦らずね」
エンジン、つまり気合をかけろというのだ。
「頑張ってね」
「わかりました、そうしますんで」
「そういうことでね。さてと」
ここでだ、部長は。
ジャージの上を脱ぎだした、それでライトブルーのブラを琴乃に見せながらこんなことを言った。
「今から着替えるからね」
「そうですか」
「そう、見たいなら見てね」
「いえ、別にそれは」
「隠さないから」
琴乃にこのことも笑って言うのだった。
「私はね」
「女同士だからですか」
「隠しても何もないでしょ」
まさに女同士なら、というのだ。
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