| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

久遠の神話

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

第九十三話 炎の選択その二

「そういうのは好きじゃないだろ」
「工藤さんと高橋さんは二人一組で戦われることが多いですけれど」
「それでもだよな」
「はい、僕もそうですし」
 他人数で一人に向かう、このことはだというのだ。
「どの方もそうした戦い方は好きじゃないです」
「だよな、じゃあ俺が降りて後はあいつ一人だけになったらどうするかだよな」
「どうなるでしょうか」
「一人だけ残して後は降りるとかな」
「それで加藤さんとはですか」
「一対一で戦うことにするか」
 上城の目を見つつ話していく。
「どうするかだな」
「多分ですけれど」
 中田の言葉を受けて気付いた、それで上城も言う。
「僕達もです」
「その時はだよな」
「一対一を選ぶことになると思います」
「あいつとな」
「多分ですけれど」
 言われてすぐに気付いた、それでなのだった。
 彼も考えてだ、それで言った言葉である。
「僕達のうち誰かが」
「戦うことになるな」
「そうなります」
「じゃあ君がそうなる可能性もあるな」
 ここでだ、中田の目が光った。上城の目を見つつそのうえで言ったのだった。
「最後の一人としてな」
「あの人と戦いますか」
「そうなってもいいか?」
 やはり上城の目を見ながら問うた。
「君は最後の一人になってもこの戦いを終わらせたいか」
「最後の一人になっても」
「あいつを止めて戦いを終わらせられるか」
「考えさせてくれますか」
 上城は中田の何時になく強い問いにはすぐに答えられなかった、それでだった。
 戸惑いを見せてだ、そのうえで中田に答えた。
「そのことは」
「まあすぐには答えられないよな」
「すいません」
「謝る必要はないさ。けれどな」
「最後の一人になった時にもですね」
「ああ、戦えるかどうかだよ」
 中田が問うのはこのことだった。
「あいつだけじゃなくてな」
「加藤さんだけでなく」
「俺ともな」
 あえて微笑みを作った、そのうえで出した言葉だった。
「出来るか」
「中田さんとも」
「出来るか、まあそのことは考えてくれな」
「わかりました、僕も」
「俺も考えてるからな。とにかく俺の方は希望は見えたさ」
「間に合えばいいですね」
「あと一週間だよ」
 両親と妹、彼にとってかけがえのない家族が助かるかどうかのタイムリミットはだ。その一週間を過ぎればもう何をしても助からないと医師に言われている。
 それでだ、中田は上城にこんなことも言った。
「これまで怪物を倒して何とか生命維持の費用を稼いできたしな」
「こうなればですね」
「あと一週間のうちにな」
 聡美達が家族を救うものを持って来てくれればというのだ。
「どうなるかだよ」
「そうですよね」
「希望が出て来たよな」
 中田はこのことは満面の笑顔で話した、そうすることが出来た。
「いや、本当にな」
「そうですよね、これまでは何とかお命を維持出来るかでしたけれど」
「希望ってあるんだな」
 しみじみとした感じでの言葉だった。 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧