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箱庭に流れる旋律

作者:biwanosin
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打楽器奏者、登場する。

 で、そのまま四人で南側、アンダーウッドに来ましたが・・・

「なんと言うか・・・すごいですね」
「ええ。確かにあの水樹はすごいと思いますよ」

 そう、ノーネームのとは比べ物にならないような水樹があったのです。というか、アレはもはや樹なのでしょうか・・・

「それより、早く主催者さんに挨拶に行こうよ~。ユイもう疲れた・・・」
「まあ、ユイさんはあんまり動くほうじゃないっスからね」
「・・・なら、急いで向かいましょうか。早めに挨拶をする分には問題ないでしょうし、それに・・・」

 そう言いながら回りを確認すると、屋台がずらりと・・・

「これ以上ここにいたら、何か食べたくなってきそうですし」
「そうですね。あの屋台のも、中々」
「食べるのは後にしましょうね?」
「美味しいですし」
「いつのまに買ってきたんですか!?」

 慌てて振り返ると、そこには見るからに美味しそうなものが。
 いいなぁ・・・

「お、こっちのも中々いけるっスよ」
「うん、レヴィちゃんいい見立て!」
「って、そっちもですか!」

 後ろでは、確かにユイちゃんとレヴィちゃんが買い食いをしていた。
 おかしいなぁ・・・気にしてはいないけど、一応僕って三人の主なのに・・・

 メイド服の人が三人。皆何か食べているのに普通の服の僕は何も食べていない。
 ・・・僕も何か食べよう。
 そう決めて屋台で適当に買い、四人で食べながら楽しく歩き・・・

「と、そう言うわけで少し遅くなってしまいました。申し訳ありません」

 僕は、そう言いながら頭を下げていた。
 そして、頭を下げていた相手が笑いながら頭を上げるよういってきたので、頭を上げる。

「遅くなったとは言っても、予定の時刻にはまだなっていない。私が気にしていないんだから、君も気にしなくていいさ」
「そう言っていただけると助かります・・・ありがとうございます、サラさん」

 こんないい人でよかった・・・そして、こういうときに限って普段賑やかな三人は一切喋らない。
 まあ、挨拶はあとでいいかな。

「さて、早速で悪いんだが、リハーサルのような形で一曲お願いできるか?」
「それは別にいいですけど・・・どうしてですか?」

 予定では、このまま休んでぶっつけ本番のはず。
 何か事情でもあるのかな・・・

「実は・・・大変失礼な話なんだが、一部のものが信用していなくてな・・・」
「OKです。ほぼ全部理解できました」

 ようするに、あれだ。マンドラさんと同じように考えた人がいる、ということだ。

「理解してくれて助かる。では、こちらに」

 サラさんの案内で、僕たち四人は当日も演奏するであろう場所に向かう。

「ぶー・・・ユイ、もう休みたーい!」
「お願いですから、少し頑張ってください」

 ユイちゃんは本当に疲れているように見えるけど・・・演奏には一切支障がないし、まあいいか。最近、こう考えることにためらいがなくなってきてるけど・・・良くない傾向かな?



♪♪♪



 案内された先には、もう既に何人かの・・・人?が来ていた。
 サラさんの話から考えると、ここの連盟のお偉いさんだろう。猫の人の影に隠れるようにしている小さな子が気になるけど、他の人も、お偉いさん、って感じがするし。

「えー・・・では、まずはご挨拶から」

 僕たち三人は既にステージに上がって楽器も持っているので、もう分かっている気はするけど。

「まず、僕から。ジン=ラッセル率いる“ノーネーム”所属の、“音楽シリーズ”歌い手ギフト保持者、“奇跡の歌い手”の天歌奏です」
「同じく、“音楽シリーズ”笛吹きギフト保持者、“ハーメルンの笛吹き”ラッテン」
「同じく、“音楽シリーズ”ヴァイオリニストギフト保持者、“強欲(アワリティア)のヴァイオリニスト”倉田ユイだよっ」

 ユイちゃんの元気が出たみたいなのは良かったけど・・・この場でその挨拶は・・・

「あー・・・今回は何でも一曲演奏すればいい、とのことでしたので、普段からよく演奏する曲を。本番ではまた違う曲を演奏させていただきます。・・・剣の舞」

 間違いなく、この曲が一番演奏することが多い。
 そんな理由からこの曲を選び、この場では演奏することにした。
 もちろん、本番で演奏する曲はしっかりと、選んである。


 そして、演奏が終わると・・・

「フン。確かに、音楽シリーズで間違いないようだな」
「ご理解いただけて嬉しいです。では、今日はこれで終わりでしょうか?」
「ああ。・・・本番も期待している」

 そう言いながら出て行ったのは、二翼のリーダーだと言う人。
 後から聞いた話だと、信用していなかったのはこの人だけで、他の人は興味本位から来ていたのだとか。

「ふぅ・・・ああいう人、僕苦手です」
「ユイもー・・・お兄さん、抱っこで運んで~」
「僕、そんな力ないですよ・・・」
「自分でよければ運ぶっスよ、ユイさん」

 レヴィちゃん、見た目に反して力強いですからね・・・
 と、そんなくだらないことを話しているうちに見に来ていた人も減り、二人だけが残っていた。
 こっちに向かってくるけど、何か話でもあるのかな?
 あ・・・あの子、最初に気になってた子だ。こんなところにくるには幼いな、とは思ってたけど・・・何か用があってきてたのか。

「初めまして、天歌奏。俺はコミュニティ“六本傷”のリーダーのガロロ=ガンダックだ」
「あ、これはどうも。僕は、」
「さっき聞いたよ。天歌奏、だろ?で、後ろの二人はラッテンに倉田ユイで、そっちのは・・・」
「あ、自分は風間レヴィ、皆さんの護衛みたいなことしてるっスよ」

 そういえば、さっき自己紹介したばっかりだった。
 レヴィちゃんはステージに上がってなかったから、知らなくて当然か。

「それで、話というのは?」
「いや、少し話を聞いときたくてな。昔、魔王“奇跡の歌い手”とは一悶着あったからな」

 その言葉に、僕はどう反応していいかわからなかった。
 先代は、魔王だった・・・そうである以上、被害にあった人は当然いるわけで・・・

「ま、その辺りについては今の演奏を聞いて何となく分かったけどな。奏は、そんなやつじゃなさそうだ」
「・・・ありがとうございます」

 正直に嬉しかった。
 偏見からこられるのは、かなりきつい・・・

「で、だ。オマエさんはなんだって同族を集めてるんだ?」
「・・・どうして、気になるんですか?」
「主催者権限を手に入れるかもれないんだ。気になって当然だろう?」

 まあ、危ないものをもつようになるんだもんね。
 気になって当然、か。

「特に、深い理由はないんですよ。ただ、一緒に音楽を演奏する友達が欲しいだけです」
「嘘では・・・なさそうだな」
「分かるんですか?」
「これでも、無駄に長くいきてるんでな」

 年の功、ということでしょうか?

「なら、あんたに任せるのが一番だろうな」
「えっと・・・任せる、というのは?」
「“音楽シリーズ”を、だ」

 ガロロさんのその言葉に、僕は心底驚いた。
 まさか、ここでその名前が出てくるとは・・・

「白夜叉から“狂気の指揮者”の事を聞いて、な。うちのコミュニティにも“音楽シリーズ”のギフト保持者はいるんだが、たった一人。音楽シリーズは同族でしか相手できないというのがセオリーだから、そんな相手から守れそうにないからな」
「そう、ですか・・・でも、あまりいい待遇は出来ませんよ?」

 これは、はっきり話しておいたほうがいい。

「知っての通り、僕たちのコミュニティは“ノーネーム”です。それも、打倒魔王を掲げている。必然的に、その戦いに巻き込むことになってしまいます。参加することも、かなり可能性は高いです」
「まあ、そうだろうな」

 でも、といいながらガロロさんは続ける。

「コイツ本人も行きたがってるし、何より、“狂気の指揮者”とやらに襲われたときの方が心配だ」
「・・・分かりました」
「そうか。ほら、オマエからも挨拶しろ」

 そこで話が纏り、ガロロさんは自分の影に隠れていた子を前に押し出す。
 そのこは恥ずかしそうにもじもじしていましたが・・・やがて、顔を上げて挨拶をしてくれました。

「は、初めまして!ロ・・・私は、ロロロ=ガンダックといいます!」
 
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