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八条学園怪異譚

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第五十九話 時計塔の話その十

「それだけあるから」
「具体的にはどういう技か気になりますね」
 愛実は率直にこう返した、茉莉也が自分で言う技が具体的にはどういったものであるかというのだ。
「そこが」
「例えば着こなし、アクセサリーとか」
「そっちですか」
「そうよ、力も技も生き方よ」 
 それ自体に関わっているというのだ。
「だからファッションとかアクセサリーにもね」
「関わってるんですか」
「そこに」
「私の制服だってね」
 あの赤と黒の何処かのアイドルグループのステージ衣装を彷彿とさせる制服もだというのだ。言うまでもなくかなり目立っている。
「あれも技よ」
「あの制服もですか」
「そのままダンスを踊って歌いたくなりそうなあれもですか」
「そうよ、ただ技は集中的に仕掛けている相手がいるから」
「婚約者さんですね」
「その人ですね」
 実は二人はまだその婚約者と会ってはいない、茉莉也がいつも言っていて二人の通っている八条学園の関係者であることはわかっているが。
「何か背が高くてですね」
「美形なんですよね」
「そう、私より三十センチ近く高いのよ」 
 今度はおのとけだった、茉莉也は顔を赤くさせて自分の小柄さから話す。
「しかも怒ったことも見たこともないし一途でね」
「それでなんですね」
「先輩も大好きなんですね」
「何度も言うけれど女の子同士は何人でもいいけれど」
 つまり浮気も不倫もいいというのだ、女同士なら。茉莉也独自の倫理観である。
「男の子はね」
「一人じゃないと駄目ですね」
「そうなんですね」
「そうよ、絶対にね」
 そこは引けないというのだ、何があっても。
「だから私もね」
「男の人はその人だけですか」
「婚約者の人ですか」
「そう、一人だけよ」
 絶対だった、あくまで。
「何があってもね」
「先輩ってそういうところは真面目ですよね」
「婚約者の人のことは」
「だから、男の人はね」
 茉莉也はこのことはとにかく引かない、そして言うのだ。
「一人限定よ」
「女の子はよくてですね」
「男の子は一人なんですね」
「そうよ、一人主義よ」
 そこはだというのだ。
「何があってもね」
「浮気はしないんですね、先輩は」
「そういうのも嫌いなんですね」
「女の子はハーレムでいいのよ」
 こうまで言い切る、女子については。
「何人いてもね」
「何人でもですか」
「じゃあ私達以外にも」
「年上の人には興味がないけれど」
 茉莉也の趣味はそうなのだ、先輩には手を出すことはしないが同級生や後輩にはかなり積極的なのである。
 だからだ、愛実と聖花にもだというのだ。
「あんた達以外にもね」
「一年生で目をつけてる娘いるんですね」
「そうなんですね」
「そうよ、もうね」
 いるというのだ。
「何人もね」
「じゃあ本当にハーレム狙ってるんですね」
「そっちを」
「ハーレムはいいわよ」
 口元を緩ませてだ、茉莉也は言う。 
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