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久遠の神話

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第九十二話 百腕の巨人その六

「この大きさではね」
「オリンポスの神々でもですか」
「ヘカトンケイルにはね」
 そう簡単にはだ、勝てはしないというのだ。
「難しい相手よ」
「そうなのですか、では」
「勝てるわね」 
 智子の言葉が強く問うものになっていた、コズイレフに対して。
「それで」
「勝ってみせます」
 絶対にという口調でだ、コズイレフも返す。
「必ず」
「若しこの戦いで生き残ることが出来れば」
「僕は戦いから降りられますね」
「そうよ、必ずね」
 そうなることが出来るというのだ。
「貴方はご家族と幸せに過ごせるわ」
「しかし敗れれば」
「死よ」
 智子はこのことは簡潔に述べた。
「それだけよ」
「簡単なことですね」
「そうよ、それならね」
「生き残るだけですね」
「勝ってね」
 まさにだ、それだけだというのだ。智子にしても。
「簡単よ。言葉ではね」
「わかりました、勝ちます」
 智子はコズイレフを見ながら告げた、そうしてだった。コズイレフにとって勝っても敗れても最後となる闘いがはじまった。まずはだった。
 巨人が動いた、何処からかその手に石、百の手にそれを出してだった。
 コズイレフに次々と投げつけてくる、その巨大な石を。
 次から次に繰り出して潰そうとする、だが。
 コズイレフは上に跳んだ、それでそこにいた場所に機関砲の様に繰り出された石達を避けた、そしてだった。
 空中で大刀を振るう、そうして。
 剣に込めた熱を思いきり前に出した、それでだった。
 熱を熱風にして巨人にぶつけた、しかしだった。
 巨人はその熱を受けても動じない、五十の頭のどれも何も表情は変えていない。そのうえでなのだった。
 今度はだ、巨人は空中にいる彼に無数の石を繰り出した、そして彼を空中で潰そうとするが幸いそれはかわせた。
 コズイレフは間一髪その石をかわせた、そのうえで着地してだった。
 五十の頭と百の腕を持つ巨人を見上げた、そうして言うのだった。
「熱風が通じないとは」
「その熱風は相当な熱さだったわね」
「炎と変わらない位でした」
 こう智子に答える。
「形は出ていませんが」
「そうね。相当な強さだったわね」
「ですが」
 それでもだった、その熱風を受けてもだった。
 巨人は動じない、それも全く。
「ダメージを受けていませんね」
「他の巨人と同じよ」
「その耐久力はですね」
「そうよ、同じよ」
 相当なものがあるというのだ、他の巨人族と同じく。
「尋常ではないわよ」
「そうですね。しかもですね」
「ええ、そうよ」
 智子はコズイレフの言葉を先読みして言った。
「五十の頭で考え見ていてね」
「考えが及ばないこと、見逃すことはですね」
「そうはないわ。それにね」
「百の腕で」
「攻撃してくるわ」
 二つではなくだ、百でだというのだ。
「相当なね」
「ではこれまでのどんな巨人よりも」
「強いわ」
 それがヘカトンケイルだというのだ、古の神々を見張っているというのだ。 
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