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久遠の神話

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第九十二話 百腕の巨人その二

「重罪を犯した人間達もです」
「報いを受けていましたね」
「それがタルタロスです」
「では僕達はかつては」
 その神話の頃、今の人生ではなく遥かな過去の人生ではというのだ。
「かなりの罪を犯していたのですね」
「そうでした」
「それはどういった罪でしょうか」
 ギリシア神話においても罪の話は多い、だが普通の殺人位ではタルタロスに落ちることはない、だからこそタルタロスが目立つのだ。
「一体」
「はい、国を奪いその国を滅ぼしただけの」
「それだけの罪ですか」
「殺した数が百人を超えた者もいました」
 言うまでもなく尋常ではない数だ。
「それだけの罪を犯したからです」
「タルタロスに落ちるとこだったのですか、僕達は」
「そうでした。しかし」
「そこを貴女がですか」
「その重罪人である貴方達を集め戦わせることによって力を集めることを思いついたのです」
「そして神話の頃からだったのですね」
「そうなります」
 まさにその通りだというのだ。
「私は貴方達を集め戦わせているのです」
「そしてその戦いも」
「間もなく終わります」
 声に期待が篭っていた、今も。
「その時が来たのです」
「そうですか。この戦いも終わる」
「貴方達はそこで解放するつもりでした」
 ここでだ、声は過去形の言葉を出した。コズイレフもそのことに気付き声に対して問うた。
「今の言葉は」
「最初から決めていたことです」
「では僕達の魂が解放されることは」
 剣士の戦い、それが終わればというのだ。
「貴女は決められているのですね」
「そのことは約束します」
「そうなのですか」
「私は約束を破る神ではありません」
 声はこのことを保障した、偽りではないというのだ。
「断じて」
「そうですね、声の色でわかります」
 そこに嘘が出ていないというのだ、コズイレフもそのことははっきりとわかってそれで声に言葉を返したのだ。
「貴女はそうした方ではありません」
「ですから」
「長い戦いが終わるのですか」
「ようやくです」
 声の色の切実さがさらに増していた、喜びすらあった。
「そうなります」
「何よりです。しかし僕は」
「今からですね」
「戦いから降ります」
 その決意をだ、今も声に告げた。
「そうさせてもらいます」
「わかりました。しかしです」
「その前にですね」
「闘ってもらいます」
 それは絶対にだというのだ。
「そのうえでとなります」
「では十二時にですね」
「約束の場所で」
 八条学園の中の動物園、そこでだというのだ。
「またお会いしましょう」
「では。あと立会い人ですが」
「はい、あの娘達とですね」
 聡美達、そして大石だった。
「四人ですね」
「それで宜しいですね」
「私のそのことを拒む権利はありません」
 立会い人が来ることはというのだ。 
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