あかりの碁
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明日美さん強化編
囲碁を打つ時は笑っていてほしいから
前書き
ハーメルンで久々にヒカ碁小説探したら新しいのがあった。
未来の本因坊……ほむ、素晴らしいテーマ。
ヒカ碁小説増えてくれて嬉しいです。
ヒカ碁小説は全力でロックオンするのでおすすめあったらぜひ教えてください。
感情。
それは強くなるために必要なリソースでありながら、
一方で最も強くなるために最も邪魔なものでもある。
本当に強くなるためには、これを御さなきゃいけない。
レベルが高くなればなるほどその影響は顕著だ。
これは何にせよ言えることだけど、特に頭脳によって、1vs1で戦う囲碁は
他の、例えばチーム戦や肉体の能力差が強く影響するスポーツと比べると
その影響は非常に大きい。
例えばプロやそこに至ろうと努力している人の中に、感情を御せない人がいれば……
きっと、カモになることだろう。
だから、そうなりうることが分かったらそこを修正する他はない。
その上で、土台をチェックして再構築する。
こう言うと、まるで家でも建てるみたいだなと思う。
もし建築に例えるなら、感情のブレは地震やら台風やらになるんだろう。
私はそんな風に思いながら、明日美さんに振る明るい話題を考えていた。
ちっとも、思い浮かびすらしなかったのだけど。
明日美さんを弟子にして、連絡先を交換した後
私達は明日美さんの自宅に一緒に行って、そこで1局打ち始めた。
目的は明日美さんの現状を知ること。 これがつい30分前のことだ。
連絡先とは言っても、この当時は携帯電話がなかったので
お互いに自宅の番号を伝える他なかった。
そのせいで今日空いてるか気軽に聞けず、事前に予定を立てなければいけない。
その不便さを痛感しつつ打ち始めたら、打つたびに明日美さんの表情が暗く沈んでいく。
原因は分かる。ミスしているんだ。 そしてそれを打った後に気づいて落ち込んでいる。
こういったことが何度も何度も繰り返し目の前で繰り広げられている。
それを見ていると、正直対局どころではないと思ってしまう。
まあ、それでも惰性で打てるのがプロの悲しさか、上級者の悲しさか。
だから出来る限り明るい話題を振りたいんだけど、思い浮かぶことがない。
囲碁一筋だった自分が恨めしくなる。
と言うより、この年代の話題なんて正直な話
20年前くらいから全然やってないテレビゲームか、姉は見てるけど
私は興味ないのでほとんど見てないアニメ程度しか思い浮かばない。
もちろん姉が見ている影響もあって、いくらか目にはしているんだけど。
映像を見て、あれはないわとしか思えないのだ。
原色っぽい色合いとか、立体感の全くないところとか。
ここら辺の違和感は技術の進歩を逆流したから抱くものなんだろうけど。
でも、展開もおかしいと思うんだ。
ギャグアニメに匹敵する速度で進むストーリー展開とか。
白塗りに★ついた痛…… いや、乗用車が噴水から出てくるところとか
ギャグかとしか思えな…… ああ、あれギャグアニメだったんだ。
まあ最近全く見てないから路線転換したかもしれないけど、
とりあえず次見る時はギャグアニメだと思って見ることにしよう。
とまあ、こんな感じなんで話せることが何もない。
それに、そう言うのをプロ棋士を目指す彼女が手に取るとは思えない。
だから、本当に何も話すことがなくなってしまう。
彼女は、どういう娯楽を持っているんだろう。
何も娯楽がなくて、思いつめたりしていないかな。
彼女のプライベートを心配しながら打ち進める。
そして案の定、表情が沈むほどに彼女のミスが増えていく。
彼女の弱点が浮き彫りになってきた。 メンタル面に問題がある。
もちろん、メンタル以外にも何か原因があって、
そのせいで負け越して心が沈んでいるんだろうけど……
でも、心が沈んだことで隙を増やしていればどうしようもない。
「ねえ、明日美さん」
「なに?」
こういう時は、まず沈んだ心を入れ替えることが必要。
そうじゃないと、本当の彼女が見えない。 だから、今日は対局はおしまい。
「どっか、行きましょうか」
「え?」
困惑する彼女を引っ張って、どこに行こうかと思索を巡らせる。
「対局は?」
「悲しそうな顔をしてる明日美さん見たくないから、これでおしまい。
どっかに遊びに行きましょ!」
ひとまず、近くのゲームセンターにでも行こうかな。
多分、それが一番いいはずだから。
後書き
※白塗りに★ついた乗用車が噴水から出てくるところ:
当時やってた国民的な女子向けアニメの一幕です。
最近20周年記念だとかやってましたね。
それをユーザー層に合わない人間が一部を見て斜め上の視点でめちゃくちゃに解釈しています。
今から考えると、あのデザインの車に乗ったら周囲に人間性を心配されるレベルだと思います。
せめて企業名とか書いていてくれれば……!
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