緋弾のアリアGS Genius Scientist
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
イ・ウー編
武偵殺し
13弾 交錯する剣戟
アリアとゲーセンに行った翌日の朝。
俺は何者かに尾けられていた。
昨日も誰かからの視線を感じていたんだが……今日のはその上に殺気までプラスされてる気がする。
「……やれやれ。風魔の奴、撒けてねーじゃねえか」
このことは後輩の風魔陽菜に対処を任せていたが、どうやら風魔の奴、失敗したらしい。報酬は減額だな。
「……しゃーない。自分で何とかするか」
めんどいけど。
俺は隠れていた木の陰から出て、尾行者に声をかけた。
「で、誰だおまえ」
あたしの名前は間宮あかり。東京武偵高校に通う、高校1年生。所属している学科は強襲科。
そして戦姉妹はなんと、あのSランク武偵のアリア先輩!
戦姉妹っていうのは、1人の武偵が1人の後輩について指導する制度のことで、徒友が女の場合は戦姉妹、男の場合は戦兄弟って呼ぶんだ。
で、私の戦姉のアリア先輩は、とっっっっってもすごい武偵なんだ!
だけど昨日からそのアリア先輩の周りに変な男が付きまとい始めた。
その名は薬師丸ミズキ。
なんでも昔は強襲科で天才とまで言われた武偵らしいんだけど、あたしにはとてもそうとは思えない。それになにより、あたしは苦労してやっとアリア先輩とお近づきになれたのに、アリア先輩の方から追っかけるなんてずるい。ずるすぎる!
だから今日はあの人のこと、先回りして調べようと思ったんだけど……同じ学年の風魔って子に邪魔されて見失っちゃった。
でも、きっとこの辺にいるはず。絶対に見つけてやる、薬師丸ミズキ!
そう決意して公園の中を歩いてると、突然後ろから声をかけられた。
「で、誰だおまえ」
「や……薬師丸ミズキ!」
振り返りざまにそう叫んだ少女は、どう見ても1年だった。
というのも、身長がアリアくらい……いや、アリア以下なのだ、この少女。
体型の方も、アリアに負けぞ劣らずの幼児体型で、髪型はツインテール。まあ、一般的に美少女と呼ばれなくもなくもなくもなくもなくもない(ようするに美少女だ)。とりあえずこいつのことはミニアリアと呼ぼう。
そんな少女に追っかけられるなんて、男なら誰でも喜ぶシチュエーションだろうが……その少女から殺気を感じた場合は別だろう。
というかこいつ、俺のこと呼び捨てにしたよな。後輩のクセに。
「……先輩」
と思ったらちゃんと先輩をつけてきた。うむうむ。こういう上下関係って大切だよな。
「なんで俺を尾けるんだ?」
めんどくさいから手短に、直球勝負で聞いてみた。
「そ、それは……だって……だってずるいじゃないですか!あたしは戦ってようやくお近づきになれたのに、アリア先輩が自分から追っかけるなんて!いったい2人はどういう関係なんですか!」
なんか逆ギレっぽく怒られたんだが。え、何これ。俺なんか悪いことした?
まあ今のでわかったこともある。こいつ、アリア絡みの人間だ。道理でめんどそうな感じなはずだぜ。
「?話がよくわからんが……アリアのファンか?言っておくが、俺はアリアに追われて迷惑してるんだよ。どうだ、これで満足したか?満足したらもう俺を尾けるな」
『アリアに追われて迷惑』のあたりから感じる殺気が強くなった気がするが……気にしなくてもよさそうだな。
とりあえずもう少し釘を刺しておけば大丈夫だろ。
「今の俺は武器の開発や売買ばっかで戦闘系の任務はほとんど受けてないが、これでも一応Aランクだ。1年の尾行ぐらいすぐにわかる。もし次に尾けてきたら、身体中の関節を解体すからな」
とても人とは思えないほど最低な発言をした気がする。やっちまった。
しかしミニアリア(仮名)はそれを気にした風も無く、何かに疑問を抱いたような表情と声で言った。
「――――何か隠してますよね。薬師丸先輩は……!」
何かってなんだよ。心当たりがありすぎて逆に分からないっての。
でもまあ、これ以上詮索されるのも不愉快だし、ちょっと本気で威嚇しとくか。
俺は軽く、本当にかるーく殺意を言葉に乗せて言った。
「度胸があるのと無鉄砲なのは違うぞ。1年」
瞬間、ミニアリアは何かに気づいたように上を見上げた。
そこには風魔が控えており、樹上からクナイでミニアリアを狙っていた。何やってんだあのバカ。そこのミニアリアを討ち取ったって、撒くのに失敗した分の減額はなかったこにはならないぞ。
まあいいや。ここは風魔の行動を利用させてもらおう。
俺はまるで見せびらかすように拳銃をホルスターから抜き、安全装置を外した。
するとミニアリアは俺と風魔、どちらかに攻撃するか迷っているように銃を両方に交互に向ける。
それがどう見ても武偵としての経験がそれなりにある武偵校付属中学から来た1年の動きに見えなかったので、俺は質問した。
「おまえ、出身どこ中だ」
ミニアリアはその質問に軽く驚いた後に、恐る恐るといった感じで答えた。
「い……一般出身です。中3の2学期に武偵校付属中に転入してきました」
「やっぱ一般中だったか……風魔いい。こいつは大丈夫だ」
俺は風魔に臨戦態勢を崩すように言った。風魔は了解したらしく、クナイをしまう。
そこで突然ミニアリアが怒鳴った。
「ぱ……一般中がなんだって言うんですか!そ、そんなことで相手の力量を判断するなんて、武偵の風上にも置けませんね!」
「ほほう。そこまで言うからには、俺が判断した以上の力量はあると見なしていいんだな」
今のセリフにはさすがにちょっとイラッときた。
「も、もちろんです!」
ミニアリアは少しだけ言いよどんだが、はっきりと言い切った。
「そうかそうか。なら、証明してみろよ」
「……はい?」
「今から俺と決闘しろ」
「え……ええええええええええええええええええ!!!!!!!!!?????????」
という訳で、決闘することになっちゃった。
ど、どどど、どうしよう。薬師丸ミズキにはああ言ったけど、実際あたしの実力はEランクなんだよ。仮にもAランク武偵のこいつに勝てるとは思えない。
……アリア先輩なら、こんな時なんて言うだろうな。
そんな益体も無いことを考える。
や、やっぱり決闘は取りやめにしてもらおうかな。き、きちんと謝ればなんとかなったり。アリア先輩だって、今のあたしを見たらきっとそう言うはず――――
『諦めるんじゃないわよ。最後まで諦めずに頑張れば、きっと道は開けるわ』
その時、アリア先輩の声が、聞こえた気がした。でも、アリア先輩はここにはいない。今のはあたしの幻聴。でも。
「そう、ですよね。諦めなければ、きっと道は開ける」
たとえ、さっきの声がただの幻聴でも。
「アリアの先輩の声が聞こえたから――――」
アリア先輩の声が聞こえたから、あたしは頑張れます。
「この決闘は『交錯する剣戟(クロス・エッジ)』で行う。異存は無いな?」
「……ありません」
いい眼だな。さっきまではあんなに慌ててたのに。
こりゃ、本気出してかないとやばいかもな。
「そうか。じゃ、一応ルールの復習だ。使用できる武器は刃物のみ。攻撃手段は刃物を用いた攻撃と徒手格闘だけで、銃の使用は不可。敗北条件は、気絶、降参の2つ。OKか?」
「はい。大丈夫です」
「それじゃ、始めるか。風魔、開始の合図を頼む」
「御意」
俺はバタフライ・ナイフを、ミニアリアはタクティカルナイフをお互いに構える。
「それでは御二方。いざ尋常に……始めっ!」
その言葉を合図に、俺とミニアリアは同時に駆け出した。
高校生2人のダッシュで2メートル近くあった距離はあっという間に縮まり、俺とミニアリアは切り結んだ。
が、しかし。さすがに単純な腕力は俺に分があったようで、すぐにミニアリアは押され始める。
「ぐっ……!」
ミニアリアはなんとかナイフの向きを変えて俺の攻撃を受け流し、その隙をついて俺の腕を狙ってくる。
「させるかよっ!」
俺は崩れた体勢のままミニアリアにタックルし、相手のバランスを崩して吹っ飛ばした。
危ない危ない。危うく決着が着くところだった。
俺はそのまま追い打ちをかけたりせず、ミニアリアが立ち上がるのを待った。
強い。分かってはいたけど、薬師丸ミズキは強かった。
あの一瞬で咄嗟に判断するなんて。あたしだったらきっと、どうするか考えてる間にやられてた。
Aランクとはいえ後方支援ばっかりで戦闘訓練をほとんど受けない装備科だと思って、ちょっとみくびってたかも。
相手は仮にも上級生。しかもAランク武偵で、強襲科でのあだ名はGenius(天才)。
そんな人相手に、手加減なんてしてられない。あたしの全力で戦わないと。
あれ――――『鳶穿』を使うしかない。
そう決めたあたしは、カウンターを取って『鳶穿』を決めるべく身構えた。
立ち上がったミニアリアはカウンター狙いなのか、身構えたままで攻撃しようとしてこない。
さて、次はどう攻めたものかな。
とりあえず、いつまでもミニアリアと(心の中で)呼ぶのもなんなので、名前を聞いてみることにした。
「なかなかやるな。おまえ、名前は?」
「……間宮あかり。所属は強襲科で、アリア先輩の戦妹です」
「間宮あかり、か。よし、憶えた」
てゆーか、アリアって戦妹いたのかよ。そういえば昨日そんなことを言っていたような気がしなくもないが。
って、いやいや。今はそんなこと考えてる場合じゃないだろ。どうする。あからさまにカウンター狙ってる奴の懐に飛び込むなんて自殺行為だが、間宮がどんなことをするのか、少し興味もあるし。
よし、ここはあいつにのってやろう。
「じゃあ、いくぜ!間宮!」
俺はそう叫んで、間宮の元へ突っ込んだ。
来た。
薬師丸ミズキはナイフを構えたままこっちに突撃してきた。それに合わせて、あたしも飛ぶ。
『鳶穿』はタイミングが大切。焦らずに機を待って……今だ!
あたしは薬師丸ミズキと交錯する瞬間に、高速で相手のナイフをスリ取った。
「鳶穿!」
なん、じゃこりゃ。
今、俺と間宮は再び対峙している。しかし、先ほどとは状況に大きな差があった。
それは、俺の手元には武器が無く、間宮には2つあるということだ。
つまり、俺の武器はあいつにスリ取られた。
さっき交錯した一瞬でスリ取ったのか、あいつ。ほとんど手の動きが見えなかった。
「……これで、勝負はついたも同然ですね」
間宮が勝ち誇ったような笑みを浮かべる。
まあ、確かに普通なら徒手格闘で二刀流に勝てる訳ないわな。そう、普通なら。
「……さーてね。それはどうかな?俺はまだ負けるつもりはないぜ?」
「そうですか。なら、あたしが直接負けにしてあげます!」
そう叫んで、間宮が飛び込んでくる。どうでもいいが、攻撃する前に叫ぶのって流行ってるのかな、俺もさっきやったけどさ。
まあそんな与太話は置いといて。
間宮が飛び込んでくるのに合わせて、俺も飛ぶ。
確かに、さっきの交錯の時、俺には間宮の手の動きがほとんど見えなかった。
だが、ほとんどということは少しは見えたのだ。
その少しの情報と、いくつかの状況を照らし合わせてみれば。
「俺も、ほとんど同じような技を再現できるんだよ!」
形勢が、逆転した。
「これで形勢逆転だな」
嘘。今、何が起きたの。
今のあたしの手元には武器がない。代わりに、薬師丸ミズキの手の中には武器が2つ。ちょうど、さっきの状況を逆転させたものとなった。
さっきの一瞬の交錯で、今度はあたしの武器がスリ取られた。
間違いない、あれは――――
「鳶、穿?」
思わず、呟いていた。
「ん?もしかして、さっきの技って『鳶穿』って言うのか?」
「なん、で、使え」
「見よう見まね。いや、ほとんど見えなかったから見よう見まねとは言わないのかな?」
「見よう見まね……?」
そんな。あたしだって何回も練習して使えるようになったのに。
薬師丸ミズキ。こいつ、いったい何者なの?
無理だ。勝てるわけがない。こんな奴に勝てっこないよ。
【……諦めるの?決闘が始まる前は、あんなに『諦めない』って言ってたくせに】
頭の中の自分が問いかけてくる。
(そんなのっ!……あの時はまだ知らなかったからだよ。薬師丸ミズキの強さを)
【ふうん。それを言い訳にして逃げるんだ。ま、いいんじゃない。所詮これはただの決闘。負けたって別に死ぬわけでも、誰に迷惑をかけるわけでもないし。アリア先輩だって、きっと許してくれるよ】
(そうだよ。いくらアリア先輩だって、ここまで頑張ったんだもん。『諦めろ』って言うはず――――)
【本当に?】
(そ、そうに決まってるでしょ。いくらなんでも、これは諦めてもいいって。そう言ってくれるに――――)
【本当に?】
(……………………)
……本当はわかってる。
アリア先輩は、こんな状況でも絶対に『諦めろ』なんて言ったりしない。
あのアリア先輩が諦めてもいいなんて、逃げてもいいなんて。そんなこと言うはずがない。あたしはそれを、誰よりも知ってる。
「……あたしは、アリア先輩の戦妹なんだ。諦めることだけは、何があっても許されない。だって、アリア先輩と約束したんだから」
『無理』なんて、もう一生言わないって。たとえ負けたとしても、あたしは絶対に諦めない。『無理』って言わない。
そう決めたんだ。
「で、どうする?降参する?」
薬師丸ミズキが勝ち誇ったような笑みで聞いてくる。
どうするか?そんなの決まってる。
降参するか?するわけない。
「まだ、あたしは負けてない!あたしは絶対に諦めない!」
あたしと薬師丸ミズキはほぼ同時に飛び、そして。
勝敗が決した。
夜。俺は自分の部屋でゴロゴロしていた。
あの後。勝負は結局俺の勝ちだった。
交錯する瞬間、間宮はまた『鳶穿』を使ってきたが、その前に俺が間宮を気絶させた。
俺は気絶した間宮を保健室に送り、教室へ行っていつもどおり授業を受け、帰って来た。
「にしても、つっかれたあ」
あんなに激しい運動をしたのはいつぶりだろう。
たぶん、強襲科をやめた時以来ではないだろうか。
あの時は、強襲科の生徒が総出で俺に勝負を挑んできて大変だったなあ。1人ずつ撃破するのが。
俺が懐かしい思い出に浸っていると、携帯の着信音がなった。
「誰からだ?」
アリアからだった。
「もしもし。俺だ。ミズキ」
『あ、ミズキ。ごめんね、こんな夜に電話かけて。今、時間大丈夫?』
「大丈夫だけど……どうしたんだ?」
『ちょっとお礼を言っておこうと思ってね。うちの戦妹を指導してくれたんでしょ?』
ああ、あの決闘のことか。
『ありがとね。あたしは色々あって忙しくて、あんまりこの子に戦闘の指導してあげられないのよ。助かったわ』
「別におまえにお礼を言われるようなことじゃないさ。むしろちょっとやりすぎたかな、と反省してるところだ」
嘘だけどな。
『大丈夫よ。あたしの戦妹はそんなにヤワじゃないし。もうピンピンしてるわよ』
「そっか。ならよかった」
『うん。それでさ、ミズキ。明日の専門科目のことなんだけど『アリアせんぱーい!』って、あかり!あんたなんで急に抱きついてくるのよ!』
なんかゴタついてるみたいだな。アリアからの要件も終わったみたいだし、もう切っていいかな。
「じゃあアリア。もう切るからな」
『ちょ、ちょっと待っ『アリア先輩!ももまんが!』ああもう!一回落ち着きなさい!って、ひゃわ!あかり!あんたどこ触って――――』
これ以上聞くと俺の精神的にも、アリアの名誉的にもやばい気がしたので、電話を切った。
それにしても。
「間宮あかり、か。なかなかいい戦妹じゃねえか」
俺はほんの少しだけ、アリアが羨ましくなった。
後書き
初めましてかな?お久しぶりかな?白崎黒絵です!
やっと期末テストが終わりました!これからは週1.2くらいのペースで投稿できると思います!根拠はありません!
それでは内容に……何この小説!ガチバトルなんですけど!どうしてこうなった……
というわけで、今回はミズキvsあかりの話です!AAの話をベースにしたほぼオリジナルの話です!
ちなみに、今回出てきた『交錯する剣戟』は私オリジナルの設定?です。原作にはこんなもんありません!
はい、これ以上内容の話をすると収拾がつかなくなりそうなので、いい加減いつものに行きましょう!
「本家!例のアレ!(本家は本編。出張がコメント。といった風に区分しています。今回から)」
今回は初登場のこの娘!間宮あかりちゃんです!
それではどうぞ!
「み、見てくれてありがとうございます!これからもアリア先輩とあたしを応援してください!」
なんかいつものよりあざといものになってしまった……何故だろう?
それではみなさん、今回はこの辺で。次回もこの作品をよろしくお願いします!
疑問、質問、感想、誤字脱字の指摘などありましたらコメントください!「例のアレ!」の名前も募集しております!
コメントをくれた「非会員」様、「豪気」様、本当にありがとうございました!
ページ上へ戻る