赤城と烈風
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波及効果と戦史研究
対潜哨戒艦の整備
第1次ロンドン海軍軍縮条約は『球磨』型3隻の除籍、練習艦として保有を認めています。
史実でも最大速力25ノット、主砲4門の規定を適用した改装案は実現していませんが。
当世界では極東ソ連軍の進撃に続き、正体不明の潜水艦も国際航路を襲撃。
雷撃を浴び損傷する民間船舶は後を絶たず、対潜水艦部隊の整備が急務とされました。
駆逐艦の英語発音は『デストロイヤー』、英米海軍は《潜水艦を駆逐する高速護衛艦》と認識していますが。
日本の駆逐艦は《潜水艦を駆逐する艦》に非ず、潜水艦に弱い《夜間集団雷撃に特化した高速魚雷艦》でした。
潜水艦攻撃と爆雷の投下は最大速力28ノット前後の駆逐艦、水雷艇の方が有利。
対潜哨戒を実施する為に夜間偵察機を運用する旗艦に高速は不要、33ノットで充分です。
護衛部隊の旗艦は急降下爆撃機対策、120ミリ噴進砲を試験的に搭載しますが。
射撃手の視界を噴煙が遮り敵機を覆い隠す為、対空火器は機銃に限定し計24挺の標準装備に変更。
北千島や南樺太国境に海上機動旅団を緊急派遣の際、輸送船の被雷で到着が遅れ陸軍も動きます。
技術将校が海軍工廠に乗り込み、対潜迫撃砲の直接照準射撃を試みました。
陸軍製の船舶用試製中迫撃砲は最小射程距離が約200m、最大射程距離が約3900m。
96式榴弾は直径150.5ミリ、水中を約10m/秒で垂直に降下し爆発の際に相当な襲撃波を発生させますが。
時限式の信管を使用し深度が約15m、30m、45mで起爆させ有効範囲は約200m~300m。
潜水艦の至近距離で爆発させる為、各方面から試案を募っています。
投網漁の経験者が複数の爆雷を紐で括り、広範囲を覆う粗い網で潜水艦を捕捉する試案を提出。
緩やかな紐で手榴弾を結び、投擲する実験が繰り返され新型対潜装置に発展します。
9連装150ミリ対潜迫撃砲は横3列、縦3段の砲弾9発を投擲し潜水艦を包み込む想定でしたが実用性改善が難航。
縦横2段の計4発を『□』と『X』の紐で結ぶ簡易軽量型、4連装120ミリ対潜迫撃砲に発展します。
対潜迫撃砲の発射する榴弾は聴音機を妨害せず、垂直降下中には爆発しません。
潜水艦に紐が絡まれば、4発とも引き寄せられ艦殻に接触して爆発する想定です。
駆逐艦『樅』型と『若竹』型、『峯風』型も輸送船を護衛しますが魚雷艇の襲撃で数隻が戦列を離脱。
小型高速艦艇を射撃の際、命中率が劣悪の為『灘風』『島風』は標的艦『大浜』『波勝』に改造されました。
旧艦政本部の復原性能改善工事を実施の後、水雷艇12隻は最高速力27~28ノット前後に低下。
幅1050ミリ、深さ450ミリ程の重心低下用竜骨を艦底部に取り付けますが。
機関科将校達は重量物98トン固着に憤り、無為無策の骨頂と糾弾。
武装削減と電気溶接技術の改善を図り、対潜水艦戦用の護衛艦となりました。
水雷屋は猛反対しますが、魚雷兵装は総て撤去され爆雷投射機を装備。
45口径120ミリ砲も通称ポンポン砲、毘式40ミリ機銃に換装されました。
対空火器の価値は極めて低い等と酷評する声もありますが、水平射撃時の有効射程は約1100m。
故障の確率が高い為に毎分60発未満に抑え、浮上潜水艦を損傷させ潜航不能に追い込む想定です。
史実の『占守』型4隻は量産を意識せず、北洋警備艦として民間造船所に設計を委託。
1930年、33年に提出の建造予算も成立していませんが。
前述の経緯で極東情勢は激変、艦政本部の刷新を経て潜水艦対策は最優先課題の筆頭に急上昇。
1937年『鴻』型に電気溶接ブロック工法も適用の量産計画が承認されました。
1938年11月29日『占守』起工後、新艦政本部は民間造船所で姉妹艦の建造も検討。
重油節減の派生型、工期短縮の簡易急造型も模索しています。
ディーセル推進の『第一号』型、タービン搭載の『第二号』型は設計段階ですが。
『占守』型4隻に続き簡易急造型、『択捉』以降8隻の後継艦として建造費が認められました。
・当世界の要目
『峯風』型9隻(39口径40㍉機関銃2基4門、60口径25㍉機銃16挺、爆雷120個、32.5㌩)
『野風』型3隻(4連装120㍉対潜迫撃砲2基、〃、〃、〃)
『樅』型11隻、『若竹』型8隻、『千鳥』型隻4、『鴻』型8隻(〃、40㍉機関銃2門、25㍉機銃16挺、爆雷60個、28~30.5㌩)
『占守』型4隻(〃、〃、〃、甲板埋め込み式爆雷投射機8基、爆雷120個、19.7㌩)
『択捉』型8隻(〃、〃、〃、〃12基、〃、〃)
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