ひぐらし系
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「始めまして。東京都から引っ越してきまして、転校したジジだ。12歳のぴっかぴか中学一年生だぜ。よろしく。」
黒板に小さく〝ジジ〟と書く少女。
わりと整った顔にニヤニヤと笑みをうかべて、丁寧に一礼をした。
周りから拍手が起こる。
「はい、それではあちらの席に座ってください。」
「了解ー。」
先生に指差された先は一番窓辺の席で、隣には一人の男子生徒が座っていた。
「お。君が隣か。よろしく、先輩。」
「おぉ。よろしくな。俺、圭一って言うんだ。お前はジジだったよな。」
「んー。」
ずいぶん好意的な奴だな、と、ジジは思った。
「俺もこの前ここに越してきたばかりなんだ。言わば、同じ境遇同士だな。」
「へぇ。君も東京都から?」
「おぅ。都会より全然空気良いだろ?ジジも絶対ここ気に入ると思うぜ。」
「不便だけどね。」
「そこは慣れだ。」
くくく、ははは、と小さく笑う。
「まぁ確かに綺麗な所だよね。ここ。自然豊かだし。あのゴミ山がちょいと気になるけど。」
「ゴミ山?」
そんなのあったっけ?と、圭一が首をかしげた。
すると、前に座ってた女子生徒が、唐突に振り向き答えた。
「あそこは宝の山だよ、だよ。」
おっとりした雰囲気の少女は、えへへと照れたように笑う。
「えーと、どちら様?」
「あ、ごめんね。まだ自己紹介してなかった。圭一君と同い年のレナだよ、だよ。よろしくね。」
「ちょっと変な奴だが、良い奴だぞ。」
「へ、変じゃないよぉ。」
確かに変な奴だなぁと思いながら、ジジは急いで勉強用具を出し、字を書き始めた。
なんでって…?
「授業中は静かにしなさーーーーーーい!!」
「「あうちっ!!」」
レナと圭一の額にチョークがクリーンヒット!
ジジは事前に、先生がこちらを睨んでいるのを、運良く気づけたのだ。
「ぎりぎりセーフ。」
ふぅっ、っとひとりでに、ため息をついた。
「寝よ寝よ。」
そして、机に突っ伏して、寝た。
『ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。』
誰かが謝ってる気がする。
随分とまぁ、泣きはらした声だ。
何があったのかは知らないけど、こんだけ謝ってるのなら、きっと重大な過ちを犯してしまったのだろう。
『ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。』
子供のうちは謝るだけで許されるだろう。
けれど、大きくなるにつれて、謝るだけでは許されない時が出てくるのさ。
もし親を殺されて、犯人にごめんなさいって言われて許せる?
許せないだろうね。
『ごめ…さい。ごめん…い。ごめんなさ…い。』
ごめんなさい、だって?
それはただ、そうやて聞こえるように声帯を震わしただけだろう?
まぁ確かに、ソレを言った本人はプライドが傷つくかもしれないね。
けれど言われた奴は、何の得も無い。
優越感を得たとして、それはすぐに自己嫌悪に変わる。
だから、謝るなんて行為は、ただの自己満足。
それで許されるのは、子供だけだ。
大人に取っては、ただただ場を円滑に進める以外に使えない、使ってはいけない。
もし、本当に誠意があるのなら、行動として謝罪すべきだ。
それでも許されない罪ならば、それは――――――――
「ちゃん…ジジちゃん…ジジちゃん!!」
「ん…ぐぅ…?」
眠い。
寝させて欲しい。
そんな気だるい欲望に脳内を支配されながらも、何とか顔を上げるジジ。
「クックック、君、転校初日から居眠りたぁ、度胸あるね。」
「だろう?」
ふわーあ、とあくびをしながら言う。
「それでどうしたの?というか誰?何で髪の毛が緑色なん?」
「まま、そんな焦りなさんな。おじさんに答えられることなら一つずつ答えていくから。」
「ん、じゃあ質問しぼるよ。えーと、髪の毛が緑色の理由だけ教えてくれさい。」
「そこッ!?というかそうゆう…えーと…。」
「クリストファー・ジジだよ。」
「そんな豪華な名前だったっけアンタ。」
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