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誰もいなくなった

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第四章

「善処するよ」
「本当ですか?」
「本当にそうしてくれますか?」
「すぐにそうしてくれません?」
「困ってますから」
「うん、考えておくよ」
 こう言うだけだった、そして。
 商店街が荒らされ回ってどうしようもなくなった時にだ、市長は商店街の閉鎖を宣言した。これでまた自警団の面々は喝采を叫んだが。
 ここに至ってだ、街の多くの者が気付いたのだった。
「もう駄目だな」
「ああ、批判した弁護士さんも死刑になったしな」
「この街はもう駄目だ」
「どうにもならない」
「これは終わった」
「そうだな」
 しかもだ、商店街に経営の仕方が似ていると自警団が言い掛かりをつけた企業もだった。
 街からの退去を命じられた、それは企業が売っていた商品が商店街で売られているものと似ているという理由でだった。
 企業の経営者が以前自警団を批判したという理由で言い掛かりをつけてきたのだ、本来ならばこれで退去を命じられる筈がなかった。
 だがそのことでだ、市長は言った。
「それなら仕方ないな」
「あの市長、これはもう」
「幾ら何でも」
「有り得ないのでは」
「無理があり過ぎます」
 役人達も市長のこの決定には顔を顰めさせて市長に言った。
「こんな言い掛かりが通用しては」どんな企業もこの街では経営が出来ません」
「このことを知った他の企業はどんどん街から出て行きます」
「この決定は撤回して下さい」
「街が潰れます」
「終わってしまいます」
「ですからこれは」
「何としても」
「いや、あの企業には問題があるんだよ」
 しかし市長は今回もこう言うのだった、如何にも面倒臭そうに。
「ほら、マーケットにやり方が似ているじゃないか」
「その経営方針が似ているだけでアウトなのですか?」
「自警団がそう見ただけで」
「あの市長、ご自身で考えておられますか!?」
 一人が本気で危惧を感じて問い返した。
「今」
「無論だよ、しかし自警団がね」
「また彼等ですか!」
「そう、検証しているだろうかね」
「それが私怨によるものでもですか!」
 遂にだ、彼は言った。
「私怨に基づく、自分達への批判への報復からの検証がそのまま追放の根拠になるのですか!」
「私怨という根拠は?」
「これです!」
 ここでスマートフォンが出された、そのボタンを押すと。
 すぐにだ、彼等の会議の話し合いが出た。そこにはその企業が自分達に批判をしてきたことへの怒りと報復を叫ぶ主張があった。
「彼等は既にあの企業への集団での抗議活動も行っていますが」
「その様だね」
「それでこれです!彼等が私怨により動いているのは明らかです!」
 ここでだ、他の者達も市長に言った。
「私怨に基づく動く者達が街の治安を守っていては街は破滅します!」
「既に多くの被害者が出ています!」
「連中は愚連隊です!」
「市長、即刻対応を!!」
「彼等の解散と処罰、警察の強化を!」
「即刻お願いします!」
 街の心ある市民も役人も市長に叫んだ、だが。 
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