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久遠の神話

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第八十七話 スフィンクスの問い掛けその九

「それもかなり」
「神は髪の毛が抜けるということはありません」
「そうみたいですね」
「そうしたことは老化ですが」
 しかしそれはというのだ。
「神は老いませんので」
「だから抜け毛もないんですね」
「はい、そうです」
 それ故にというのだ。
「ゼウス父様もです」
「そうなんですね」
「アンブロジアやネクタルが私達の不老不死の源の一つですが」
 不老不死の酒や果実、そうしたものをだというのだ。
「そういったものを口にしてもです」
「髪の毛が薄くならないのですか」
「若しアンブロジアを一口飲めば」
 聡美は上城にさらに話していく。
「人なら死ぬまで髪の毛が薄くなることがありません」
「えっ、それなら」
「若しそうなるんでしたら」
 二人はアンブロジアのその話を聞いて目を輝かせて言った。
「僕が飲みたい位です」
「私も」
「アンブロジアは一口飲んでも不老不死にはなりませんが」
「いえ、髪の毛です」
「そのことです」
 二人が言うのはまさにそのことだった。
「一口飲めばですよね」
「死ぬまで大丈夫なんですよね」
「髪の毛が抜けないんですよね」
「そうですね」
「そのことはその通りですが」
 仕方なくともだもいうのだ、聡美は二人に難しい顔で話す。
「しかしあのお酒を飲むことは」
「よくありませんか」
「そうなのですね」
「そうです、あれは実はあまりにもその中にある力が強く」
 それでだというのだ。
「一口飲みますと。人間がそうしたら」
「何かあるんですか」
「深刻な問題が」
「残念ですが」
 あるというのだ。
「幼子にストレートのウォッカを飲ませる様なものです」
「そこまでなんですか」
「そのお酒は強いんですか」
「アンブロじアは劇薬でもあります」
 その強さ故にだというのでだ。
「ですから」
「人間が口にするにはですか」
「よくないのですね」
「一口で死ぬまで髪の毛が抜けないのです」
 聡美はその効果から話した。
「そのことからおわかりだと思いますが」
「確かに。言われてみますと」
「相当な強さですね」
「私達は幼い頃より徐々に慣らしてきました」
 そのアンブロジアにだというのだ。
「ネクタルについても」
「だから飲んだり食べたり出来るんですか」
「ギリシアの神々は」
「そうです。それに私達は元々身体がかなり強いので」
「そういえば」
 ここで樹里が気付いた、聡美の自分達の身体が強いという言葉からだ。気付いたというか思い出したと言った方がいいだろうか。
「ゼウス神はクロノス神から生まれてますよね」
「はい」
 聡美もその通りだと答える。
「ティターン神族の」
「そのことに気付かれましたね」
「ティターン神族は巨人でしたよね」
「そうです、その父神であるウラノス神も」
 天空を司る神でありギリシアの最初の最高神でもあった。 
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