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久遠の神話

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第八十六話 運という実力その九

「何があってもそうするべきではない」
「そういうことですね」
「健全な経営が一番いいのだ」
 会社経営にはというのだ。
「何につけてもな」
「そういうことですね」
「その通りだ、ではだ」
「はい、選挙のことはですね」
「より確実になった」
 その勝利がというのだ。
「私は議員になる」
「その割には何ともない様ですが」
「当然のことだからな」
 自分が議員になることはというのだ、国会議員に。
「そしてはじまりに過ぎない」
「国会議員になることもですか」
「そうだ、はじまりに過ぎないことで喜ぶことはしない」
「お祝いもですね」
「選挙が終わって当選が決まるとだ」
 その時にだというのだ。
「事務所には出るがな」
「選挙演説もされてですね」
「選挙演説も選挙活動も欠かさない」
 そうしたことは当然というのだ。
「政治家の仕事だからな、むしろだ」
「そうした活動を忘れてはですか」
「政治家ではない、選挙活動はその時の選挙だけではないからな」
 ではどうなるかというと。
「次の選挙にも生きるからだ」
「だからですか」
「そうだ、選挙はその時だけのことではない」
 その次にも影響するものだというのだ。
「顔を観られる、その行動もな」
「言われてみれば」
「政治家は知名度だ」
 第一にだ、それが重要になるというのだ。
「無名の政治家は幾ら有能でもそれだけで致命傷になる」
「選挙にも通りませんね」
「政治家は選挙に通らないとな」
 それでだというのだ。
「はじまることも何もないからだ」
「企業でも名前ですし」
「知られているということはそれだけで武器になる」
「それだけで」
「悪名は確かに無名に勝る」
 よく言われている様にだ。
「名前は知られてこそだ」
「政治家もなのですね」
「無名の政治家も企業も幾ら有能であったり業績がよくともだ」
「何もなりませんね」
「それはな」
 権藤は確かな声で話す。
「だから私は選挙活動は続ける」
「最早当選は確実であっても」
「そうする」
 こう言ってなのだった、そうしてだった。
 彼は当選が確定した今も選挙活動は続けるのだった、無論企業家としての活動を続けそうしてそのうえでなのだ。
 権藤は選挙に通った、達磨に目は入れた。
 喜びのコメントを出した、しかし家に帰ると。
 彼は普通にだ、夕食を家族と共に食べてこう言った。
「では今夜はだ」
「シャンパンでしょうか」
「別にいい」
 祝いの酒、それはだと妻に返す。
「気にしないでくれ」
「では普通にですか」
「今日はこれといって何もない一日だった」
 それに過ぎないというのだ。
「だからシャンパンではなくだ」
「何を飲まれますか、それでは」
「ブランデーだ」
 今日飲む酒はそれだというのだ。
「それを飲もう」
「わかりました、それでは」
 こうして彼は当選した日も普通に過ごした、喜びは何処にもなく淡々とさえしていた。
 その次の日も興奮なぞなく会社に行き仕事をする、社員達はその彼を見て驚きの顔でこういうのだった。 
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