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久遠の神話

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第八十四話 運が持つものその八

「しかしだ、それを果たすまではだ」
「運が必要ね」
「それ故にだ、今日の十二時にだ」
「新神戸駅に来てくれるわね」
「そのうえで手に入れさせてもらう」
「わかったわ」
 智子は静かに微笑み権藤に答えた、見れば権藤も手を止めていないがその顔は彼女に向けたままである。
「それではね」
「貴女もいるな」
「他の女神達もね」
 聡美、そして豊香もだというのだ。彼女の姉妹であり同志達も。
 だがここでだ、智子は顔を曇らせてこうも言った。
「そして」
「セレネー女神もか」
「ええ、あの方もね」
「つまり怪物を差し向けて来るか」
「そうよ、そうなっても」
「安心しろ、私は勝つ」
 そのだ、セレネーが向けて来た怪物にだというのだ。
「必ずな」
「その言葉を聞いて安心したわ」
「そうか」
「それならね」
「見るのだな」
「ええ、そうさせてもらうわ」
 智子は微笑みに戻って権藤に答えた。
「是非ね」
「そうか、ではな」
「貴方も戦いから降りるのね」
「願いを適えるものが手に入れば戦う必要はないからな」
 それでだというのだ。
「それならだ」
「貴方もまた好戦的ではないのね」
「戦争は、か」
「ええ、そうではないのね」
「いつも言うが戦争は政治の一手段だ」
 それに過ぎないというのだ、戦争と平和ではなく政治の中の戦争というのが権藤の考えの根幹にあるものなのだ。
 だからだ、彼はこうも言うのだった。
「時としては行う」
「選択肢の中にあるのね」
「考えておく、しかしだ」
「それでもなのね」
「それはあくまで最後の最後だ」
 その時に執るものだというのだ。
「他にどうしようもない場合にだけだ」
「戦争を選ぶのね」
「戦争は貿易も経済も産業も破壊する」
 国家を成り立たせるそうしたものをだというのだ。
「日本の見事な都市達も一瞬でだ」
「そうね、まさに一瞬でね」
「崩壊する」
 まさにだ、そうなってしまうというのだ。
「核、おそらく使う者はいないだろうがな」
「それでも使えば」
「一瞬で何もかもが灰燼に帰す」
 文字通りそうなるというのだ。
「そこにいる者達もな」
「あれは父様の雷には及ばないけれど」
「それでもだな」
「ええ、恐ろしい力があるわ」
 女神である智子から見てもだ、核が持っている力は恐ろしいまでのものがあるのだ。
「上手に使えればいいけれど」
「破壊、戦争に使えばな」
「繁栄している街も一瞬よ」
 まさにだというのだ。
「何もかもがね」
「そうだな」
「ええ、戦争になればね」
「核は極論にしてもだ」
「産業も商業も何もかもがね」
「消えてなくなる」
 そうなってしまう、それ故にだというのだ。 
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