戦国†恋姫~黒衣の人間宿神~
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
六章
二条館
実際に考えて、この時代の火縄銃の約三倍は距離となる。俺達なら可能だが、この時代の人達でもあの距離から撃てるなん何てまるで戦国時代のゴルゴ13やな。
「かなり強力な玉薬を使ったのでしょうね」
「それでも火縄銃で長距離射撃で、しかも一発で仕留める何てまるで黒鮫隊狙撃班ですね」
「一発ではないみたいだぞ、・・・・あった。これだ」
「ホントだ、弾が二つある・・・・」
「という事は、同時に撃ったんだろうな。それか二発同時に撃ったかのどちらかだ、俺達なら音を消す道具でやるけど、この時代は無いからな」
「ふむ・・・・腕前から察するに、根来か雑賀の者でしょう」
根来・・・・紀伊国根来寺を本拠地とする鉄砲傭兵集団。雑賀衆と並び、鉄砲の名手を取り揃えている。
「だろうな。・・・・だが詮索はあとにしろ。今は一真が殺気を飛ばしているが、腐っても京、今更、骨董品の検非違使何ぞに絡まれるのは癖に障る。ここから逃げるぞ」
検非違使・・・・京の都の治安を守る警察のようなもの。室町幕府が上手く機能していないので、骨董品と掫揄している。
「だろうな、俺が道案内しよう。行くぞ!」
と言って、トレミーからのマップとトレミーにいるフェルトの誘導で何とか逃げ切れた。ちなみに通信機を耳につけていたので、フェルトの適格な指示とスマホのマップで見事にな。
「ふぅ~ここまで来れば安心でしょう!お頭の案内があったからこそですね」
「はぁ、はぁ、はぁ・・・・つ、疲れたぁ~・・・・」
「み、右に同じ、です・・・・はぁ、はぁ・・・・」
「おいおい、これ位でへばるなよな。もうちょっと足腰鍛えないと、いざという時に大変だぞ」
と言ったら、ひよは面目ないとか言っていたが、詩乃は頭脳労働ですからと言って別に体力が無くても良いはずですとか言ってたけど。それではダメだと思い、もう少し鍛えようなと言った。
「そういえばここが、足利将軍の住んでいる二条館かぁー。逃げてる時にこれ見て正解だったな」
後ろを振り返った皆がここですか?とか言っていたが本当のようだ。俺のイメージとは違うようだが、本当にここが将軍が住んでる所なのか?若干ボロい、というよりしょうもないような。門構えは立派だけど、苔むしてるし、門は朽ちてるし、まるでお化け屋敷みたいな感じだった。
「将軍って、一応日の本一偉い人だったような?」
「御門を除けばな。だが力が無ければこんなものであろうよ」
「これが将軍が住む館なのですか・・・・」
まあそうだと思うけど、イメージしたモノとは随分違うモノだと思った。確か足利っていえば金閣寺を作ったとか言われてるんだっけ?あとは足利幕府とも呼ばれてたとか。幕府なら力もありお金もあるとは思っていたが、現実は違うようだ。
「しかし、あまりにも気配がないから住んでるとは思えないが・・・・」
「そうですね。仮にも侍の棟梁の方が、防御力が皆無となっているこの城館に住んでるとは思いませんが・・・・」
「いえいえ。間違いなく住んでおりますよ」
ん?いつの間にか俺の後ろに立っていた女性がいた。ふむ、こいつはあれか?将軍の側近だと思う。
「ふむふむ・・・・小名風を装った方が一名、その護衛らしき方が四名、異人さんが一名、ですか。・・・・珍しい組み合わせですなぁ。それで?将軍に拝謁に来られたのですかな?」
「そうだ」
「手土産は?」
「ある」
「これはこれは!ようこそいらっしゃいました!さぁさぁご遠慮なくお入り下さいませ。ああ、それと手土産などのお荷物は、不肖この私がお預かり致しますのでご安心めされ。ささっ、お荷物を!」
ニコニコと笑顔を浮かべたこの少女が、表情とは裏腹に、両手をクレクレと前に出す。
「ちょ、ちょっとちょっと!困りますよ」
「そうです!突然現れて、何をいきなり失礼な!」
「我らが主に無礼でしょう。お下がりください」
「おお!これは大変失礼をば致しました。名乗りもせずに手土産をくれというのは、さすがに失礼でございましたな。しかしご安心召され!我が名は細川与一郎藤孝。通称は幽。足利将軍義輝様のお側衆を務めております」
と名乗りを上げた少女は一礼をした。そうか、こいつが史実で言うなら細川藤孝か。
「と名乗った所で、さぁさぁ、早速お持ちになった手土産をそれがしに・・・・」
ニコニコと笑顔を浮かべたこの少女が、表情とは裏腹に、また両手をクレクレと前に出す。
「・・・・一真、渡してやれ」
呆れた顔の久遠の指示で、俺はまず予め渡されたメモを取り出した。
「これは目録だ、これを見た後に実物を渡す。それでいいかな?」
「はいはい。現物をしかと頂けるのでございましたら、全く問題ございません」
「では、尾張国長田庄住人、長田三郎より足利将軍家へのご進物目録。銅銭三千貫、鎧一領、刀剣三振り、絹百疋です」
「銅銭三千貫!これはこれは誠に剛殻であらせられる!いやぁさすが尾張と美濃に跨がる家のご当主であらせられますなぁ!」
「では、目録はこれを渡して実物を渡そうが、どこに置いたらいい?」
「謹んで頂戴仕かる。実物はあとで構いませんので、お客様方を、二条館の客殿に案内仕りましょう」
と言って、幽と名乗った少女に先導されて、俺達はあちこち破損している城門を抜けて二条館の一室に通された。そして、土産の実物を空間から出してからお手伝いさんが持っていった。
ページ上へ戻る