赤城と烈風
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防衛の要
12試艦上戦闘機『紫電』、試製中戦『飛燕』
前書き
改定前
史実では昭和12(1937)年、中島飛行機へ12試艦上戦闘機の試作が指示されています。
艦上爆撃機と艦上攻撃機を援護する為、航続距離の長い制空用の戦闘機ですが。
1936年の衝撃に続き樺太、北海道、千島列島で航空戦が展開され戦訓を研究。
航空母艦の上空を護る為、上昇力に優れる邀撃機の開発を決定。
12試艦上戦闘機は既に、96式艦戦『強風』の実績を持つ三菱へ発注済みですが。
性格の異なる艦上局地戦闘機も含め、2機種が同時に発注される事になりました。
三菱の堀越二郎技師は固辞しますが、空母を護る邀撃機は必要です。
開発主任の兼任は不可能と腹を括り、同業他社に勤務する最大の競争相手を推薦。
海軍機を製造した事績の無い同業他社に、航空本部の担当者は難色を示しますが。
兼任を引き受ければ確実に神経を擦り減らし、96式艦戦『強風』の後継機も失敗すると脅迫。
13試艦上爆撃機で愛知、川崎は共同開発を進行の予定であり海軍機の仕様も伝達済み。
艦上機に特有の制約も自分が責任を持って指導する、問題は無いと主張し渋る相手を説伏。
空母の守護神となる邀撃機、12試艦上局地戦闘機の発注先は川崎飛行機。
最強の戦闘機を目標に掲げ、土井武夫技師を中心とする設計チームが編成されました。
重戦闘機にも軽戦闘機にも対抗可能な機体、中戦闘機≪ミドル・ファイター≫を提唱。
川崎が製造を担当する艦戦『強風』の改造型、97式軽戦闘機『隼』も参考に生産性も考慮。
三菱で開発中の12試艦上援護戦闘機の情報も独断で公開、12試艦上局地戦闘機の開発に協力。
大学同期であり個人的にも親しい間柄の盟友、堀越二郎技師は様々な助言や忠告を寄せました。
単列14気筒の発動機は直径1218ミリ、三菱から自社に生産を委託されたA8金星。
本家に劣らぬ性能を誇る川崎製の空冷星型、栄を心臓を選択し設計に没頭。
防御力の高い敵機を確実に撃退する為、陸軍は未採用の13.2ミリ機銃4挺を主翼に装備。
弾頭重量52gの弾丸を初速950m/sで発射、弾道の直進性も良好と期待されています。
愛知と共同開発の13試双発単座陸上戦闘機、『天雷』の経験も盛り込み開発を進行。
設計開始から2年後の1939年12月、陸上機型の試作機は初飛行で最高速度591km/hを発揮。
陸軍では海軍の制式化を待ち試製『飛燕』と仮称、川崎へ発注し量産体制の構築を開始。
零式艦戦『烈風』に続く切札、試製『紫電』艦上機型の完成が待ち望まれています。
最強の戦闘機を目標とする土井武夫技師は、発動機の変更も視野に入れ性能向上を模索。
現場の搭乗員達に充分な意思疎通が図り、発着艦性能は大目に見て飛行性能を最優先。
構造に余裕があり馬力の向上が見込める三菱A10火星、川崎製の光が最適と判断。
栄と同じ空冷星型単列14気筒ですが直径1340ミリ、一回り大型の発動機を選択します。
発動機を換装した改造機が準備され、飛行試験を実施しますが思わぬ問題が発生。
機首と胴体の継ぎ目、段差に渦流が生じ操縦性能が大きく損なわれると判明。
最強の戦闘機を創造する熱意と執念は様々な可能性を探り、或る方策を見出します。
タンク博士の設計した単発戦闘機、フォッケウルフfw190が参考になりました。
機首発動機装着部と胴体断面には、ロケット噴射式排気管が埋め込まれています。
胴体を遙かに上回る直径の発動機を機首に搭載、渦流を吹き飛ばす工夫が施されていたのです。
12試艦上局地戦闘機の陸上機型、発動機を換装した試製『紫電』へ同様の工夫を適用。
ロケット噴射式排気管の効果が発揮され、操縦性能の改善が確認されました。
陸軍は直ちに先行量産型の試製『飛燕』、全機に改造を適用し製造工程を追加。
A10光の出力向上も計画されていますが、川崎の設計陣はA18木星への換装も考慮。
空冷星型18気筒の三菱A18木星は現在、初号機の性能審査中ですが。
海軍では艦上機の制約を取り外し、陸上局地戦闘機『紫電改』と呼称し開発を促進。
A18木星はカム配列を見直す改良案が浮上、前方集中式から前後分離式へ変更を計画。
点検整備作業が容易になり、信頼性と稼働率は格段に向上すると期待されています。
改良案は仮称E型の名称が定着、審査中の初号機と同形式の量産型は木星A型と呼称。
A18木星A型の回転数は2450回転/分でしたが、改良案は2600回転/分を予定。
プラット&ホイットニー及びライト社製の発動機、2600~2700回転/分と同等です。
離昇出力も1900馬力から2300馬力へ向上すると見積もられ、試作と実験が進行中です
手間隙掛けて製作した試作品の額面情報が優秀でも、それだけでは意味がありません。
量産され戦場に送られる多数の実用品が、安定して性能を発揮される事が求められます。
『次善は間に合わない、最善は遂に完成しない。第3善を、戦場へ送れ』
名文句を遺した電波探信儀の開発担当者に倣い、有言実行が必要です。
直径は変わりませんが、重量は1260kgへ増大しています。
重量の増大は止むを得ない物と、関係者全員が認識しています。
三菱のみならず液冷発動機の国産化に挑んだ同業他社、川崎と愛知の発動機製造部門も協力。
日本国内の各社が航空機用発動機の製造技術、総力を結集している事は言うまでもありません。
A18木星の改良型となる仮称E型は点検整備作業が容易になり、稼働率の向上も期待されています。
来年の試作品完成を目標に、懸命な努力が続けられています。
土井武夫技師を中心とする機体の設計陣、愛知と川崎の共同開発チームも同様です。
困難を厭わず12試艦上局地戦闘機『紫電』の発達型、『紫電改』にA18木星の設計案を検討。
A18木星は現在審査中であり量産の開始後に初期呼称、不具合の多発する事態も懸念されます。
A10火星も馬力強化型の開発が続行され、A18木星の搭載型は『紫電改二』と仮称。
陸軍は既にA10光への換装型を『飛燕』2型、A18誉の装備型を『飛燕』3型と呼称し川崎へ発注。
更にA21土星の他社製造品、護を装備する『飛燕』4型の配備を目論んでいますが。
海軍としては元々A8金星を搭載する前提で設計され、発動機の換装にも限度があると判断。
大直径の空冷星型18気筒A18木星、更に大型の空冷星型22気筒A21土星は他の機体に搭載を計画。
1939年≪冬の戦争≫の衝撃に拠り、爆撃機を迎撃する高速邀撃機の必要性が強く認識されました。
三菱は12試艦上戦闘機『烈風』、後述する13試艦上戦闘機の2機種を担当しています。
川崎は12試艦上局地戦闘機『紫電』、愛知も13試双発単座陸上戦闘機『天雷』の開発中です。
自社負担で良いから戦闘機の開発に携わりたい、と練習機の製造経験しか無い2社が希望。
中島海軍大臣は大歓迎し激励、両社に局地戦闘機の開発を依頼すると快諾。
1940年に局地戦闘機の試作が立川飛行機、及び渡辺(後の九州)飛行機へ発注されました。
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