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万華鏡

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第五十二話 文化祭のはじまりその十

「早く着替えてね」
「わかったわ、それじゃあ」
「ただね」
「ただ?」
「耳は忘れないでね」
 それは絶対に、というのだ。
「猫だからね」
「猫耳は、なのね」
「猫耳を忘れたら猫でなくなるでしょ」
「そうね、けれど猫耳を付けたら」
 どうなるかとだ、琴乃はメイド喫茶等でのことから答えた。
「可愛くない?」
「大丈夫、猫耳メイドと化け猫は同じ猫でもね」
「違うのね」
「壮絶に怖いから」
 それでだというのだ。
「安心していいわ」
「そう、それじゃあね」
「驚かしてきてね」
 店に来たお客さん達をというのだ。
「気絶させていいから」
「今の私そんなに怖いかしら」
「今でも充分怖いでしょ」
 琴乃はメイクの娘の言葉に首を傾げさせたがその琴乃に言うのだった。
「それで暗い場所でいきなり出て来たらね」
「壮絶っていうのね」
「こっちも怖さを前面に押し出してるから」
 そうしたメイクをしているというのだ。
「子供が見たら泣き出す位にね」
「じゃあ子供が来たらね」
「泣かしてくるのよ、わかったわね」
「衣装も着るわね」
「そうしてね」
 こう話してだった、琴乃は衣装も身に着けた、すると。
 猫耳だがそれでもだった、その怖さはというと。
 琴乃自身が鏡で見てもだ、顔も血まみれの和服も赤黒く汚れた包丁も異様な猫耳もだった。その全てが。
「うわ、殺人鬼みたいね」
「化け猫でしょ」
「それじゃない」
 こう返すクラスメイト達だった。
「佐賀の化け猫よ」
「あんた今それだから」
「ううん、けれどね」
 それでもだと言う琴乃だった、特にその包丁を見て言う。
「この格好だとね」
「今丁度人を殺してきましたって感じだからよね」
「返り血まで浴びて」
「本当にこんなのが夜道とかに出て来たら」
 お化け屋敷でもだ、そうしてくればというのだ。
「トラウマよ」
「だから、うちのクラスは徹底的になのよ」
「徹底的に驚かしていくから」
「本当こ子供を驚かせていくから」
 クラスメイト達もこう言う、メイクの娘と同じく。
「いいわね」
「それで私もなのね」
「そう、いいわね」
「怖がらせてきてね」
「持ち場行くわね」
「そうしてきてね」
 こうした話をしてだった、そのうえで。
 琴乃は化け猫の場所に入った、それで来た客の前に出ると。
 それでだ、皆声を挙げたのだった。
「で、出た!」
「化け猫!」
「こ、これも怖いわね」
「迫力あるな」
 多くの者が言う、それを聞いてだった。
 琴乃は横にいる雪女の娘にだ、客がいない時にこう囁いたのだった。お化け屋敷の中には他にも様々な幽霊や妖怪がいる、中には晒し首もある。こちらは男子生徒が二人首を出して物凄い顔で佇んでいる。
 その生首達を前に見ながらだ、琴乃は言うのだ。
「私そんなに怖いのね」
「かなりね」
「ううん、そうなのね」
「本当に佐賀のあれみたいよ」
「鍋島の化け猫ね」
「そう、それに見えるから」
 言い伝えのそれにだというのだ。 
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