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迷子の果てに何を見る

作者:ユキアン
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第二十話

 
前書き
オレは何の為に戦って来たんだ?
オレは何がしたいんだ?
わからねえ、オレはどうしちまったんだ?
byナギ 

 
第20話 ナギ・スプリングフィールド


side レイト

完全なる世界との会談からオレたちはすぐに旧世界に逃げた。
赤き翼の修行を行っていた際に旧世界での拠点というか住む場所が欲しいと言った時に詠春が実家に頼めば用意してくれるだろうという事で紹介状を書いてもらっていたので日本の京都とか言う所にある青山家を訪れたのだが、すぐに余っていた一軒家を用意してくれた。これには素直に感謝した。お礼にと何本か刀を渡したのだがもの凄く喜ばれた。
それから半年程の間は平和にキティと夫婦生活を営んでいた。








ここで少しだけ話がずれるがこの世界に帰ってくるときの神との契約と前報酬について説明しよう。
何でもこの世界はある世界では漫画として存在する世界らしい。もっともオレが介入する事でその漫画とは似ているだけの世界になってしまっているらしい。それでも似た様な世界はいくらでもあるらしいから問題は無いそうだ。探せばオレの世界に酷似した世界もあるそうだが今は置いておこう。
さて契約内容なんだが、最近一部の神の間で世界に何の影響も与えない人間を殺して他の世界に色々なおまけ付きで転生させてその様子を見て楽しむのが流行っているらしく、その結果滅んだ世界や仕事が増えた天使達が疲労でミスを犯し死ぬはずの無い人間が死にその人間を他の世界に転生させてまた仕事が増えと悪循環を起こしているらしい。




そこで神をも倒せるだけの力を持っているオレに転生者の駆逐を依頼したのだ。転生者を意図的にこの世界に送り込まれてくるのでそれを駆逐するのがオレの新たな仕事だ。そして転生者が使う能力を『理解』出来たのなら使用するのも許可してくれた。
代わりに前報酬としてキティの身体を少し弄ってもらった。
子供を作れる様にしてもらったのだ。
真祖の吸血鬼として生き続け、他人のぬくもりを知らず人並みの幸せを手に入れる事も出来ない彼女に幸せを与えたくて、たとえ偽善と呼ばれようともオレはキティの幸せを望んだ。
結果として、かなり出来にくい上、産まれてくる子供は真祖の吸血鬼という限定付きではあるがその望みは叶えられた。
これには素直に喜んでくれたのだが、時間がなかった為に再会した日以外やれていなかったので旧世界で家を手に入れてからは毎晩励んでいるため男としては嬉しいがオレの限界は近い。









閑話休題










そんなある日、赤き翼達が完全なる世界を打ち倒し戦争を終結させたという報せが届いた。
それは別にどうでも良い事だったが、アリカ王女が戦犯として処刑される事が決定したそうだ。
原因はオレが殺し損ねてしまった元老院の屑どもらしい。
フェイト達がオレに残りの兵器を渡してしまったが為にとりあえずは良いやと放っておいたジジイどもが保身の為の生け贄にアリカ王女を選んだという事だ。
そしてアリカ王女はそれを受け入れている。
最終決戦で赤き翼は儀式の発動を防ぐ事は出来ずアリカ王女達の封印術式により魔法世界は救われたらしい。その結果オスティアの浮遊大陸は落下。死者も出ている上に難民問題等もあるため生け贄にはちょうどいいと判断されたのだろう。処刑方法はケルベラス大渓谷か。

「どうするつもりだ、レイト」

「......オレは......直接手を出すつもりはない」

「お前らしい」

さあ、赤き翼、いやナギ・スプリングフィールド。貴様はどうする。




side out















side ナギ



「ナギ、今すぐ助けにいこう。私たちならケルベラス特別監獄からアリカ王女を救う事は可能だ」

詠春の言う通り助けるだけなら可能だ。
前までならともかくレイトに鍛えられたオレたちなら魔法世界全てを敵にまわしても負ける事は無いだろう。だけど、それで姫さんが喜ぶだろうか。
答えは否だろう。
直感で分かる。きっと嫌われるだろう。それは嫌だ。けれど何故それが嫌なのかは分からない。

「......詠春、オレはレイトに色々な事を教えられた。前までのオレなら分からなかった世界の仕組みとかも分かる様になった。だからこそ姫さんがやろうとしている事を否定しきれない自分がいるんだ」

「......ナギ」

「......すまねえ時間をくれ。オレは一人でオレたちや姫さんがやった事を見て回りたい。赤き翼はここで一時解散だ」

「分かったよ。私は実家に戻るよ、だからいつでも頼って来てくれ」

「その時は頼む」

こうして赤き翼は一時解散し、オレは魔法世界の各地を彷徨った。
昔、レイトが言っていた様に回復魔法の方が人々を助ける事が出来た。
いつしかオレは”偉大なる魔法使い”なんて呼ばれる様になっていたがちっとも喜べねえ。
だってオレがやっている事は自分が行った罪を少しでも軽くしようとしているだけなんだから。
そして時が経つに連れてオレは自分の浅はかさに嫌気がさしてきた。
ただ名を上げる為に参加した戦争でオレはどれだけの幸せを奪ってきたのだろう。
そしてオレは姫さんをどうするかの答えをまだ出せていない。


だが、オレに転機が訪れた。
ある日兵隊崩れの山賊のアジトにオレが乗り込むと一人の男が先に山賊どもと戦っていた。
お世辞にも男は強くなく、なぶり殺されるのが眼に見えていた。
けれど眼が死んでいなかった。
オレはすぐに山賊どもを殺し、男の治療を施して事情を聞いた。

「好きな人が攫われたんだ。なら助けるしか無いじゃないか」

「なぜ助けを呼ばなかった」

「誰もが仕方ないと助けにいこうとしなかったからだ」

「そんなに大事なのか」

「......今まではそんな事は無かったけど攫われたと聞いた時、世界が真っ暗になった。そこで初めて彼女が大事だった事に気付いて」

「自分が死んだらその人が悲しむんじゃないかと思わなかったのか」

「どうだろう、僕は彼女に思いを告げた訳じゃないし。このままなら僕が死んだ事すら伝わらなかっただろうから。だからこれは僕のエゴなんだと思う。けど僕はこの選択を後悔するつもりは無い。思いを伝えられないまま終わる事を僕は認めたくない」

ああ、やっと分かった。こいつの話を聞いていて。
オレは姫さんの事が好きなんだ。
だけど嫌われたくないから助けにいく事が出来なかった。
けどこの男の話を聞いてオレも思いを伝えられないまま終わる事を認めたくねえ。
なら姫さんに嫌われずに助ければ良いだけじゃねえか。
そうだよ簡単な事じゃねえか。難しく考える必要なんて無かった。

「ありがとよ」

「へっ?」

「お前のおかげでオレはまた空を駆けれる」

「はあ、どういたしまして」

「ほら、とっとと行くぞ。思いを伝えるんだろう」

「あっ、はい」

こうしてオレは攫われた人たちを助け出した。
男は好きな人に思いを伝えた。
そして無事に結ばれた。

「ありがとうございます。これで無事に村に帰れます」

「気にするな、オレも今回の事で動き出す事が出来る。なかなかかっこ良かったぜ。これでお前は彼女だけの英雄だ。オレが認めてやるよ」

「ええ、僕は彼女を一生守り続けますよ」

「さて、オレはもう行くわ」

「お名前を聞いてもよろしいですか」

「オレか......オレの名は」

最近は滅多に名乗る事はなくなったその名を昔の様に自信を持って名乗り上げる。

「ナギ・スプリングフィールド。千の呪文の男で












アリカ・アナルキア・エンテオフュシアだけの英雄さ」









side out
 
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