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テイルズオブザワールド レディアントマイソロジー3 ―そして、僕の伝説―

作者:夕影
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第四十七話

 
前書き
今回で『にじファン』に投稿していた分は最後となります+
 

 




――あのメリアからの告白から数日…物語は大きく進展した。
封印次元を作る材料のドクメント…それを持つであろう多くの進化種が、各地からの手によって集まってきていた。
まだ完全にドクメントが集まった訳ではないが…全ての材料が集まるのもそう遠くはないだろう。


そしてもう一つ…今、世界の各地で次々と戦争が終戦を迎えていっているらしい。
理由としては、まず一つに…ジルディアのキバの出現。アレの出現によって起こり出した生物変化やその他諸々を見て…各地の国々がこのままではいけない、と気付いてくれたのだろう。
そしてもう一つの理由…それはウリズン帝国が、多くの国や村から採取した星晶を元の場所へと返還した事だ。
現王女であるアガーテさんが、各地の国や村に訪れ、謝罪と採取した星晶の返還…そしていまだに戦争を続けている国の各地に行き、今の現状を伝えているという姿に…他の国の人々も胸をうたれ、自分達の行いに気付いてくれたのだろう。


世界は徐々に…本当に徐々にだけど、確実に…人々が国や種族を越えて、手を取り合いだしていた。



――――――――――――



「――次は…カダイフ砂漠の『風来草』?」


「――えぇ。その風来草のドクメントを回収してきて欲しいの」


――ホールにて、僕はアンジュから受け取った依頼書に目を通すとそう問うように言い、アンジュはそれに小さく頷いた。

順調に集まっている進化種のドクメントだが、それでも足りない事があったり、欲しいドクメントがもう残っていなかった事もあったりする。
なのでこうやって今現在、アドリビトムの方でも進化種の捜索を続けている。


「それにしても…カダイフ砂漠かぁ…。また、あのキツい砂漠を歩いて探し回らないといけないんだね…」


「気持ちは分かるけどね…。ぁ、そうそう…。ねぇ、衛司…メリアの事なんだけど…ちょっと辛そうなとか、大変そうな表情してなかった…?」


僕の言葉にアンジュは少し苦笑すると、ふと思い出したように僕にそう問い掛けてきた。


「メリアが…?ん…僕が見てる限りでは全然見たこと無いけど…何かあったの?」


「うーん…別に何かあったって訳じゃないんだけどね。ほら、今回のこの依頼もそうなんだけど…こういうハードな依頼は彼女、結構引き受けてるから少し心配でね。…一応彼女自身にも聞いてみたんだけど…『…私は私のやりたい事をしてるだけ』って流されちゃったから」


メリアの事を思い出しながら小さく首を傾げて聞くと、アンジュは首を横に振った後、苦笑してそう言った。

…そう言えばメリア…確かに最近は結構ハードな依頼ばかりしてるんだっけ。

つい先日は、アッシュとナタリアと一緒にドクメント採取に行って、本人曰く『巨大クラゲもどき』と闘ってきたらしいし。
…その後帰ってきた時に、『…目の前でラブ臭見せられたから私も』って言って思いっきり抱き付いて来たけど。
アッシュとナタリア…一体何したの?






「うーん…でも、まぁ…メリアが今、特に不快とかそういった感情が無いのは事実だよ。僕の見てる限りだけど…本人自身は楽しんでやってるみたいだし。…もしも何かあった時は、僕が彼女を助けるから」


「…そう。なら、今は心配ばかりしてたら逆に迷惑になっちゃうかしらね。ちゃんと、頑張ってる彼女を応援しないと」


少し考えた後そう真っ直ぐとアンジュを見て言うと、アンジュは頷いた後小さく笑ってそう言った。


「…ただし、『助ける』って言ったんだから、なにかあったらちゃんと衛司が支えてあげなさいよ?ちゃんと…カノンノとメリア、平等にね♪」


「ぅ…はい…」


アンジュの様子に安心していると、僕の方を見てまさに『ニヤリ』という擬音が似合いそうな笑みを浮かべてそう言ってきたアンジュに、僕は思わず少し頬を染め、その頬を指で掻く。

…僕がメリアとカノンノの二人と恋人になった事は、一日を待たずしてアドリビトムの皆に知れ渡った。

始めは皆にどんな目で見られるか心配だったけど、皆の反応は意外な事に笑顔で拍手された。
そして、なんか気付けばアドリビトム公認で僕達は恋人となってた。

いや、まぁ…嬉しいんだけど……それ以来この事を弄られると、なんだか無性に恥ずかしくなってしまうのだ。
二人には情け無いけど…なんとも悲しいもんである。




―――――――――――――




――結局、カダイフ砂漠へ向かうメンバーは僕、メリア、ロニ、スタンとなった。
アンジュに言われた事を気にしてメリアにはある程度注意している。
…それにしても…。


「…まさかここまでラザリスの生物変化が起こってるなんて…虎牙連斬っ!」


目の前に近寄ってきた、身体の半分以上が結晶化したサボテン型魔物のカクトゥスを木刀と星晶剣を奮い切り裂く。
結晶化したカクトゥスは木刀で打たれ星晶剣で切り裂かれると、消えていった。

「…ふぅ…ここら辺にはキバはなかった筈だけどなぁ…」



カクトゥスが完全に消えたのを確認し、木刀と星晶剣を納めると僕は息を漏らして呟く。
生物変化の結晶化が起こってるって事は、ジルディアのキバが出現してる筈なんだけど…バンエルティア号で飛んできた時にキバは確認出来なかった。

それじゃあこの生物変化は一体…?


「――衛司、そっちは終わったかーっ!」

「ん…あぁ、終わったよー」

考えていると不意に後ろから声が聞こえ振り返ると、別方向で生物変化を起こした魔物達を倒していたスタン達が駆け寄ってきた。


「良かった良かった…そっちの方もやっぱり生物変化が…?」


「うん…ここら辺は生物変化を起こしてた」


「…おかしいな。確か、この辺にはジルディアのキバは無かった筈だろ?」


スタンの問いに僕は頷いて答えると、スタンの隣に立つロニが思い出しながらそう言葉を出す。
皆もキバを確認してないみたいだし…じゃあ、やっぱり原因は…?







「……っ……」


「?…メリア…?」


不意にメリアがどこか不快そうな表情をして僕の服の袖を引いてきたので、僕は小さく首を傾げる。

「…嫌な感じがする。…凄く…気持ち悪い感じ……」


「気持ち悪い…感じ…?」


「…先の方…多分…何かいる…」


不快そうな表情のままそう、途切れ途切れに言って先の方を指差すメリア。
メリアが此処まで不快そうな反応を見せるなんて…。


「先の方、か…まだ風来草は見つかってないから多分、奥の方にあると思うんだけどな…」


「メリア…大丈夫…?」


「…ん…少し不安……だけど…衛司が居るから、きっと大丈夫…」


メリアが指差した奥を見てなんとも言えなそうな表情をするスタンの言葉を聞き、僕は手を伸ばしてメリアの頭を撫でて聞くと、メリアはいまだに不快そうな表情ながらも小さく頷くと、僕の手を握りそう応えた。

…此処まで信頼されると…何が何でも守ってあげないとな…。


握ってきたメリアの手を、それに答えるように握り返す。メリアも少し安心したのか、不快そうな表情をどこか満足そうな表情に変えた。

メリアが落ち着いたのを見ると、僕達はカダイフ砂漠の奥に向けて歩き出した。



――――――――――――


「――…ッ!」


「――…何だ…これっ!?」


「――目が…霞む。喉にも…刺激が…」


――カダイフ砂漠を奥へと進んだ所で突如、急激な感覚が僕達を襲いだした。
…っ…コレって…一体…!


「…おい、向こうに何かいるぞ!?」


「…あれは……ラザリスっ!?」


ロニが前を向き、突然出した声に前を見ると…明らかにその場だけジルディアに侵された枯れ果てた大地と…そこに此方を見るように立つラザリスが…見たことの無い魔物のようなものを二匹連れていた。


「――ディセンダー…それに、イレギュラー、か。招かれざる客が来てくれたね」


僕達を認識したラザリスは、無表情にそう呟く。


「…ここの空気はどうしちまったんだ…凄く…気持ちが悪い…」


「ここの空気は僕の世界のもの。君達、ルミナシアの民が居る場所じゃない。…あまり此処に居ると、命に関わるよ」


周りの光景を見回して言うロニに、ラザリスはフッと笑うとそう淡々と言葉を出した。



「ラザリス…。此処は…君が侵食したのか…?」


「そうだよ。僕の世界の住人に、快適な環境が必要なんだ」


「君の世界の住人…っ!じゃあ、そこにいるのは…」


「僕が生み出した。君達の世界にとって変わる新しい世界、ジルディアの民だ」


僕の言葉に、ラザリスはどこか嬉しげにそう言うと、ラザリスの傍に居た大きめの魔物が、僕達の前に立った。

「…その彼は、元は君達の世界のヒトだった。でも、今は僕の世界の住人さ」


「なっ…っ!?なんて事を…」


「メリア!彼を…元の姿に戻してあげてっ!」


「……ん!」





ラザリスの出した言葉に驚き、僕はメリアに元に戻してあげるように頼む。
メリアはそれに小さく頷くと、ディセンダーの力を使うため、へと歩み寄るが…


「…え…っ!?」


「な…んで…っ!?」


…ヒトだったソレは、メリアが歩み寄ったのとは正反対に後ずさった。
『元の姿』に戻る事を…拒んだのだ。


「そんな…どうして…」


「何も知らないくせに、とんでもないエゴを吐くんだね。彼が、僕と共に生きたいと願ったんだ。君達の世界では、ヒトがヒトを見捨てている。国が民衆を、親が子を、友が友を、隣人が隣人を…ここにいるヒトだった者は、君達ルミナシアの民が見捨てたんだ!!」


ヒトだったソレが取った行動に僕達が驚いていると、ラザリスが声を上げてそう告げた。
それじゃあその人は…ルミナシアに絶望して…望んで、ジルディアの民に…。


「…君達に返して、どうするのさ…。彼らに豊かさと、恐れのない未来を約束出来るのか!!」


「…それは…っ」


「こんなに大地が疲弊するまで、自らのエゴの為に戦い、生き物を殺し、奪い、捨てて!」


ラザリスの言葉に、メリアが返そうとするが言葉が詰まる。ラザリスはそれを見逃さず、言葉を続け、声を荒げる。


「ラザリス。『生命の場』は、お前が手にしたところで、扱えるものじゃない!精霊がそう言っていたんだ。生命の場を扱う事で、この世界もお前の世界も滅びるかもしれないんだぞ!」


「じゃあ、諦めろって言うのか!僕に、このまま死ねとっ!!…生まれてしまった僕には、死ぬ運命しか残っていないと。そう言いたいんだね?」


スタンの出した言葉に、ラザリスは声を荒げる。そして少しして静かに口を開くと僕達を睨むように見る。


「じゃあ、こっちも死ぬ気で奪うよ。生命の場を。…死ぬかどうかなんて、僕にはどうでもいい。僕はやり尽くす事を選ぶ!…生命の場は、僕のものだ」



僕達を睨み付けたまま、そう淡々と言っていくラザリス。そしてその視線は…メリアの前で止まった。


「…ディセンダー、君もね。僕と、僕の世界を守るディセンダーになってくれよ。…来ないかい、一緒に」


「…ラザリス…っ」




ゆっくりとメリアに向けて手を伸ばしそう言ってくるラザリスに、メリアはラザリスを見たまま僕の手を握る。


「…そうかい…。…なら…」


『『『!?』』』


メリアの反応に、再びラザリスの表情は消え呟くと…突如地面が揺れ始めた。
これは…っ!?


「…っ…!?」


「メリアっ!?」


地震が徐々に落ち着いていくと同時に、メリアが倒れそうになり慌てて支える。

…そして地震が落ち着き、ラザリスの方を見ると…ラザリスとジルディアの民の姿は消えていた。


「…ラザリス…行ったのか…」

「そう…みたいだね…。…メリア…?」


ラザリスが消えたのを確認していると、支えていたメリアが離れ…ジルディアに侵食された大地に近寄った。
…まさか…っ!


「メリアっ!流石にこの範囲での力の使用は…」


「…きっと…大丈夫っ!」



そして…光がその場を包んだ。



――――――――――――



…メリアの力によって、カダイフ砂漠のジルディアの侵食は消え、なんとか風来草のドクメントの採取に成功した。
そして、その風来草のドクメントによって、ようやくツリガネトンボ草のドクメントは完成した。

…だが、メリアはジルディアの侵食を元に戻す際の力の大幅利用で倒れてしまった。





力の使いすぎによる疲労…。流石にこれからは彼女の力を簡単に多様出来ないだろう。

そして…カダイフ砂漠での地震の正体。それは…ジルディアのキバの『二本目』の出現を意味していた。

…残る材料のドクメントは一つ。そして、それを作る数のドクメントは未知数。…出来る限り早く、ドクメントを見つけないと…。


――――――――――――



「――やぁ、気分はどうだい?」


「――最高だよ。上手く身体に定着してくれて…実に最高の気分さ」


――何もない、黒の空間の中でラザリスは目前に立つ男に問うと、男は自分の姿を見ながら満足そうにそう言った。


「そうかい…。なら、君もそろそろ準備をしといた方がいいよ。ヤツらとはそう遠くないうちに、戦うと思うからさ」


「了解したよ。君にもらった『命』と『力』…存分に使って、アイツらを殺してあげるよ。フフ…フヒャヒャヒャヒャヒャヒャっ!!」



ラザリスの言葉に男は小さく頷くとそう言い、不気味に笑い出すと、身体の一部からラザリスと同じように結晶が現れ出す。
男――『サレ』はただただ、不気味に笑い続けていた。




 
 

 
後書き
前書きで書いたように今回で『にじファン』に投稿した分の話は終わりとなります。
次回から数話は自サイトに投稿した分となります+

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