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インフィニット・ストラトス~IS学園に技術者を放り込んでみた~

作者:壬生咲夜
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本編
  第24話「謎のIS」

 
前書き
【前書き】
お待たせしました。

番外編に続き、今回も「」の前の名前を消してみました。
相変わらずの駄文ですが…

それではどうぞ!!

 

 
アリーナの観客席にて1組(一夏)2組(鈴音)の試合を観ていた新入生たちであったが、突如受けた衝撃に悲鳴をあげ、気がづくと緊急用の隔壁が作動しており観客席を被っていた。
事態を上手く読み込めずどうするべきかと各々の生徒が判断に困っていたところ、たまたま(仕事の配置で)その場に居合わせた少数の上級生の指示に従い避難を始めていたのだった。

だか――、


「…ここもダメ」
「そんな!? もうここしないのよ!!」


2年生である彼女たちは緊急用対策マニュアル通り、下級生を連れて避難ルートを目指していたのだが一向に外へと出れずいた。
そしてここがその最後の場所で1年生の先頭に立って誘導をしていた二人も悲痛の声を上げてしまう。

逃がさないと思わせるような封鎖された隔壁の数々。
外の状況を詳しく知らない二人であったが、システムを乗っ取られ自分たちも外に出られないのかと思ってしまったのだ。


「私たち出られないの…」
「うそ…」
「グスッ…誰か助けて」
「お母さん…」


案内をしてくれた上級生の二人の顔と叫びを聞いてそう不安の声をあげる1年生たち。


「…癒子」
「大丈夫、きっと助けがくるって」
「う、うん…」

その中には一夏たちと別れてアリーナで応援をしていた本音たちもいた。

「っ!?」
「だいじょ~ぶ、しずしず~?」

痛みをこらえるように右足首を抑える静寂。
1年1組の纏め役を務めている彼女は率先として避難誘導を手伝っていたのだが、避難する途中で人波にのまれて足を挫いてしまったのだ。

「う、うんこれくらい平気っ~!?」
「あんまり無理しないで~。おんぶするよ~」
「ふふ、ありがとう本音ちゃん」
「いえいえ~」

いつも通りに振舞いここまで友人やクラスメイトを励ましている本音だが、実を言うと彼女もいっぱいいっぱいであった。

「(どうしよ~みんな不安がってる。咄嗟に緊急用コードが流れてたから~先輩たちが救助に動いてくれてると思うけど~……)」

実際、救助にあたっているのだがそれを知るのはコードの内容を知っている上級生や本音の様なごく一部の例外のみ。
それを知らない殆どの1年生は顔を青くして恐怖におびえたり、助けが来ると友人と抱き合いながら励まし合ったりしている。

もともと整備科志望であった本音は、入学以前から姉の虚や鏡也らにある程度の技術を教わっており、そのさいに対策マニュアルについて聞いたのだ。
本来ならば生徒会役員として、また更識の一員として姉や楯無と行動をともにするつもりであったが、今後忙しくなりこういった行事に中々参加出来なくなるからと姉らに進められ、クラス対抗戦に向けて友人たちと共に一夏のサポートについていたのだ。

「(こんなことなら~少し遅れてでもちゃんと整備セットを持ってくればよかった~)」

友人との待ち合わせに慌てて部屋に工具を置いてきてしまったことを今になって悔やまれる。
もし、自分用の整備セットを持っていれば避難できていたかもしれない。
そんな後悔が本音の脳裏過ぎる。


「(こんなとき、どうしたらいいの~? お姉ちゃん、きょ~ちゃん)」

聞こえるはずもない声を問いかける本音。

今まで友人を励まし、介抱し続けていたが彼女もまだ15歳の少女。
不安に潰れそうな心を必死に耐えるのもそろそろ限界に近かった。




そんなとき、何処からか着信音が聞こえた。

[ピリリッ、ピリリリッ]

「着信音…?」
「ど、どこから?」
「本音の方から聞こえたけど?」
「えっ?」

癒子の指摘に三人の視線が本音へと向く。
突然の着信音に驚いた本音だが、すぐに落ち着きいてその音源へと視線を向ける。
それは本音が普段から身につけている腕時計だった。


「(そういえばこれって~、確か入学祝にきょ~ちゃんとお姉ちゃんから貰った時計だよね~? 私好みのデザインだったからすっかり忘れてたけど~二人の手作りって時点で普通の時計じゃなかったね~)」

何気にひどい言いようだが否定出来ないのもまた事実でもある。


[ピリリッ、ピッ]

「も、もしもし~…」

いくつかあるボタンの中で小さく点滅する所を押して、電話のように問いかける。


『よかった。持っていてくれたか…』

「き、きょ~ちゃん!?」

時計のどこかにつけられたスピーカから聞こえてきた声は間違いなく鏡也の声であった。

「えっ!? 鏡也先輩!?」
「私たちの携帯は使えないのにどうして…」
『フハハハ、我らオラクルに不可能は存在しないのだよ』
「えー…」

確かにこの人たちなら出来そうだなと納得しがちの癒子とナギ。
まだ二人よりも付き合いが短い静寂だけが納得がいかなそうな顔をしている。

「え~っと、それできょ~ちゃんは今どこにいるの~?」
『ん? 今はCエリアの第2通路の隔壁前』
「そ、それって今私たちがいるところじゃ…」

そう、鏡也がいるのは最後の希望にと辿り着いた場所の付近であった。

『ワォッ! それは好都合…』
「きょ~ちゃん?」
『本音、扉付近にいる子をちょいとばかし遠ざけてくれないか』
「え、うん。いいけど…」
「それでどうするんですか?」
『ん? ああ、今からここの扉を破壊する』
「そんなのどうやって…」
『それはま~…ドカンっと』
「ど、どかんっ!!!」

「「「「っ!!!???(ビクッ!!」」」」

ナギの叫び声に周りにいた女子たちが驚く。

『ハッハッハッ、まぁ~それは嘘だ………多分(ボソッ』
「今、多分って言った!? ボソって多分って言った!!!」
『ナニを言ってるんだいワトソン君。そんなこと私が言うわけ『せんぱーい、ニトロg』ゲフンッ、ゴホンッ!!』

凄くわざとらしい咳き込みだ…。

「いま、ニトロって言った!! 絶対ニトログリセリンって言いかけた!!」
『ソ、ソンナコトナイアルヨ~』
「似非中国人風!?」
「というかここまでどうやって来たんですか!? 使ったんですか!? 芸術は爆発なんですか!?」
『ハハハ、あんまり気にすると禿げるぞ』
「女の子だから禿げません!!!」
「そ~だよきょ~ちゃん」
『なんとっ!?』
「ええ!? そこ驚くところなんですか!?」
『ならば仕方がない、このマジカルアンバー印の“脱☆毛剤”を――」
「使いませんし使わせませんから!!」
『安心しろ。ツルッパゲになっても某アジア支部長が体験された育毛剤を使えば…』
『ああ、あれ用務員のじいさんが持って行きましたよ』
『Oh…轡木さん』
『いつの間に…』

普段から何を作っているんだろうこのバカ共は…
因みに持ち出した当の本人だが、自身に使う前に掃除のさいに見つけた野良ネズミに試したところ、忠実通りに毛がモッサモッサと一定の長さまで生えるのをみて使うか使わないか迷っているらしい。


『まぁ~兎に角あれだ。どうやるかは―『禁則事項です★』』

鏡也の声を遮って聞こえた野太い(野郎の)声。
脳裏に浮かぶのは、青タイツで筋肉質の男による“みくるちゃんポーズ”


「「「「『………』」」」」

沈黙が場を支配した。


『ウェーッ…』
『ケイン先輩…』
『キメェ』
『…うん、ごめん。自分で言ってて気持ち悪いと思った』

「(なら、やらなきゃいいのに~…)」

「プッ…」
「クスクス」

癒子やナギ、その周りの女子たちから小さな笑い声が漏れる。

「…ありがと~きょ~ちゃん」

わざと道化を演じ、自分たちの恐怖や緊張を解してくれたことに感謝を述べる。

『さて、なんのことかな…』

始めた会った頃から変わらない。
悪戯や機械弄りが好きで、優しく頼りになる憧れの男性(ヒト)

「(だから私は……)」


『さて、そろそろ隔壁(こいつ)をぶっ壊すから、いったん扉付近にいるやつら全員遠ざけてくれ……出来るな』
「…うん、任せて~」
『頼んだぞ』

その言葉を最後に通信が切れた。

「…本音」
「大丈夫、私はやればできる子だもん」

通信が切れたことでまた少し不安になりそうな自分にそう言い聞かる。

「わ、私たちも手伝うよ」
「ありがと~」
「よ~し、そうと決まったらやるわよ! みんな~―――」

彼女らも自らが出来る事をするために動き出した。


―――
――


[ピッツ]

「よし、向こうは大丈夫そうだ。ケインそっちはどうだ?」
「…バッテリーがもうやばいな。この扉を壊せるかどうかってところしか無い」
「ここまで来るのに結構扉壊しましかたらね……」
「あれ、直すのってやっぱワイら?」
「だろうな」
「うへぇ~…」
「はぁ~、明日からまた修理活動か…」
「直すの大変そう…」

彼らが向けた視線の先。
そこにはここに来るまでに破壊、もしくは無理矢理こじ開けた隔壁の数々があった。

あれらを直すのは一朝一夕ではすまないだろう。


「ま、人命救助だと思えばどうってことないだろ」
「だな!」
「ああ!」
「そうね」
「さて、そろそろ避難も終わった頃だろう。さっさとぶっ壊して可愛い後輩たちを助けるぞ!!」

「「「「了解!!!」」」」

―――
――



「みんな~、危ないから下がって~」

鏡也に頼まれ扉付近にいる生徒を遠ざける本音。
最初はパニック状態で話が通じなかったが、友人や先輩の協力のもとなんとかそれを成功することができた様だ。

「ふぅ、これくらい遠ざければ大丈夫ね」
「ありがとね~なっちゃん、モッチ~。先輩方も~手伝ってくれてありがとうございます」

お礼を言うのは先頭に立って避難誘導をしていた二人。
彼女たちも本音らの言葉を信じ、協力してくれたのだ。

「ううん、お礼を言うのはこっちの方。私たちがしっかりしないといけないのに」
「あ~あ、後輩にかっこ悪いところ見せちゃったな…」

恐らく、先ほどの悲痛の声のことを言っているのだろう。

「そ、そんなことありません!」
「そうです。先輩方が居てくれたから私たちはここまでこれたんです!!」
「…ありがとね」


やがて、隔壁から生徒を遠ざけるのを終わらせ先ほどの時計を操作して鏡也へと合図を送る本音だが、


「本当に何とかできるの?」
「男なんか信用できないわ」

「(ム~、どうしてそう男の子を見下すのかな~。けど~、今はムシムシ~)」

遠くからそんな声があがり、少しだけムッとするのだった。




そして、合図を送ること数分。


[バシュッ!!]

突如扉の隅に桜色の刃が飛び出した。


[ジュ~~~~]


その刃はゆっくりと動き出し、扉の周囲を徐々に熱で切り裂いていく


「やった!」
「これで助かるのね!!」


ようやく助かると安堵の声を上がる。

だが――、


[シュンッ……]

『クソッ、バッテリーが!!』
『マジかよ!? それでラストだぞ』

突如、隔壁の扉を切り割いていた刃が消え、扉の向こうから誰かのそう叫ぶ声が聞こえた。

「そ、そんな…」
「嘘でしょう…」

希望が断たれ、再び生徒に不安と絶望の色が浮かぶ。

「きょ~ちゃん…」


[ガンッ!]

「「「「っ!?(ビクンッ」」」」

[ガンッ、ガンッ!!]
[ガンッ、ガンッ、ガンッ!!!]


「だっしゃぁぁああああ!!!」
「開いたっ!!!」


途中まで裂かれていた隔壁が蹴破られ、その奥から鏡也をはじめとした十数名が現れる。

「お前ら、そのリボンの色からして2年だな?」
「あっはい2年2組の小林と木村です」
「怪我とかは」
「だ、大丈夫です」
「私も…」
「なら、何人かここに置いて行くから二人は一緒に避難誘導を手伝ってくれ、。緊急時のマニュアルは受けているだろう?」
「「は、はいっ!」」
「よし、ホア、フルールの班は避難誘導。指揮はホアに任せる。香奈の班は和輝の班に向かってくれ!」
「「「はいっ!」」」

鏡也の指示に少女たちから勢いの良い返事が返ってくる。

「みんな、まず調達班と合流するよ!!」
「「「了解っ!! 」」」

「1年生の皆は私たちが案内するからそれに着いてきて!!」
「慌てずゆっくり進んでね!!」
「は、はいっ!!」

香奈は班員を引き連れ別の救護隊の所へ、ホアとフルールと呼ばれた二人は班員をいくつかに分けて避難誘導を始めるのだった。


「さて、大丈夫だったかお前ら」

他の生徒たちが誘導に従って避難する様子を見届け、鏡也は本音らの元へ駆けつけ声をかける。

「うん、私たちは大丈夫だけど~。しずしずが~」
「避難してる途中で足を捻っちゃったみたいで…」
「こ、これくらいなら大丈夫っ!?」
「ほら、あんまり無茶しないで」
「私と癒子で肩貸からゆっくり行こ」

「どれどれ? あ~、こりゃ早めに手当てした方がいいな…へい、ゆ――お母さん!!」
「「「(お、お母さん!?)」」」

「なんでわざわざ言いなおしたんですか鏡也先輩!!!」
「この子の手当頼んだぞ」
「無視ですか!?」
「他にも怪我人がいたら、このお母さんっぽい男子のところに集合!!」
「人の話を聞け!!」

「キョーヤ、俺とタイガーで観客席に逃げ遅れた生徒がいないか見てくる」
「頼んだぞ!! 俺は本部に連絡を入れてくる」
「あいよっ!!」
「ほんじゃ行ってくるわ~!!」

「俺もこの子たちの手当が終わったらすぐに行く!! 怪我すんなよ! 無茶すんなよ!!」
「わかっとるわ~!!」

「「「(お母さん)」」」

新入生も着々とお母さんが定着していく“××× ゆ××”であった。

「そんなに俺を虐めて楽しいか作者!!」

うん♪

「え、あ、あの…」
「はぁ…ほら、怪我の具合みるからみせてみな」
「えっと…」
「早く!」
「は、はいっ!!」

靴を脱いで捻挫をした足をお母さんと呼ばれた男子に差し出す。
同年代の、それも異性にする初めての行為にやや顔を赤める静寂。

診察している男性の真剣な表情から厭らしい事を一切考えていないことがわかるが、それでもやはり恥ずかしいものは恥ずかしいのだ。

「……これくらいなら薬縫って包帯を巻いておけば大丈夫だな」

そう言って小瓶から取り出した薬を塗って手際よくと包帯を巻いていく。
ここまでノ―リアクションだと、女性として何となくショックだ。

「(私って魅力ないかな…)」

余裕が出来たからか、非常時なのにそんな考えが脳裏をよぎった。

「よし、これでいいだろう」

[ポム…]

「ここまでよく頑張ったな」
「えっ、あ……///」

先程までの真剣な顔とは違い、暖かい眼差しと声でそう告げられ、優しく頭をなでられた。

[ナデナデ]

「う、ああ///」

「ねぇ、これって…(コソッ」
「だよね…(コソッ」」
「(落ちたな…)」
「私知~らな~い」

「?」

どうやら、一夏以外にもフラグ建築と鈍感スキル持ちがいたらしい。


「さて、報告しながら反対周りに逃げ遅れた子がいないか探してくる」
「了解です」
「気をつけてねきょ~ちゃん」
「ああ、本音もその子たちの案内頼んだぞ」
「任せて~! 私はやればできる子だよ~♪」
「クスッ…頼んだぞ」

足早に立ち去って行く鏡也。

「行ってらっしゃいきょ~ちゃん」

見送りながら呟いた彼女の声は、どこか寂しげな感じがした。


―――
――



生徒たちの避難が終わりつつある一方、アリーナ内の戦況はというと…

「一夏!!」
「おう!!」
『ギッ』

鈴音と一夏の即席コンビネーションと管制塔から与えられた情報をもとに戦い、

「狙いは?」
「完璧ですわ」

『ギギッ!?』

そして今、死角で狙いを定めていたセシリアのロングレンジによって襲撃者が沈黙した。


「(ふぅ…どうにか倒せたか)」

何とか倒せたことに安堵する一夏。
SEの消費力もかなりギリギリといったところであった。

だが――、


「一夏、まだそいつ動いてる!!」
「っ!?」

そう、まだ襲撃者は完全に止まってなどいなかった。
慌てて振り向くがもう遅い。

『ギギッ…』
[ゴウッ]

「(し、しまった!?)」

自身の油断を呪う一夏。
すでにチャージは完了され、あとはそれを放つだけ。
この距離では、あの速度は避けられない。

「(やられるっ)」

そう思ったとき――、




「そこ、どいて」

「(え…?)」」


[斬ッ!]


『ギッ…ガッ……』

[シュゥゥゥン……]

放たれるはずだった緑色の閃光。
しかしそれは突如現れた“紫色の鎧”を纏った少女によって一刀両断にされ、それを最後に襲撃者は力尽きたかのように倒れ込む。

「す、すごい…」
「ダメージを負っていたとはいえ一撃で……」

敵を切り裂いた彼女であったが警戒しながら近づく。

「……油断禁物」
「うっ、ああ、助かったよ」

今度こそ完全に機能を停止したのを確認した少女がこちらへと振り向き、淡々とした言葉でそう告げた。
たしかに、彼女の言葉に機能停止を確認せず油断した自分が悪いと反省する一夏。

「そうよ一夏、倒したと思っても油断しちゃだめじゃない」
「凰さんも人のこと言えないと思いますわ」
「あたしは別にいいのよ」
「なんですのそれは、だいたいですね」
「まぁまぁ二人とも喧嘩は――」

「「一夏は黙ってて(一夏さん黙ってて下さいまし)!!」」

「は、はい…」

二人を止めようとした一夏であったが、逆に彼女らに止められてしまう。

「………」

[ゴウッツ!]

そんな様子を見てどうでもいいとでも思ったのか、スラスターを吹かせ、

「あっ、待ってくれ!!」

[シュンッ!!]


足早に立ち去ってしまった。

「行ってしまいましたわ」
「今の人はいったい……」


―――
――



[バシュッツ!!]


「ふぅ……」

一夏らから離れ、カタパルトへとたどり着く少女。
己の鎧を解除して一息つく。

「お疲れさん」
「…鏡兄」
「お前が引き連れていた生徒全員、無事外に避難出来たって報告が来てるぞ」
「…ありがと」

安心したように柔らかな笑みを浮かべる。
彼女はここに来る前まで生徒の避難をしていたのだが、突然学園側から出撃要請がかり引き戻ることになったのだ。
皆を置いて行くに心苦しく思った所に鏡也らが駆けつけ、彼女らを託したのだった。


「にしても、“鞆絵”の初陣が迎撃戦になるとはな。折角この試合に間に合うよう調整してたってのに…」
「でも、この子が居てくれたから私は皆を守ることが出来た」
「…そっか」

少女がそれでいいならと納得する鏡也。

「さてと、虚たちも待ってることだし帰るとしますか、行くぞ“簪”」
「うん」

紫色の鎧を纏っていた少女――更識簪は小さく頷き、彼のあとに付いて行くのだった。



【オマケ】

「…ところで、そこに横たわっている剣道少女はどうしたんだ?」

こいつって確か織斑先生らと一緒に観測室にいた筈じゃなかったか?
あれ? そういえば一人避難の途中で行方不明になった生徒がいるって報告があったけどまさか……


「敵の不意を衝いて一気に落とす作戦でここで待機してたら急に現れて、危ないから避難したほうがいいって言ったら、“うるさい、邪魔をするな!”“一夏に激を送るんだ!!”“退かなければ斬る”って言ってて話を聞いてくれなくて…」

なにやってんだ剣道少女(この子)は…

「…それで?」
「面倒くさくなったから一発いれて気絶させた」


そう言って、右腕を握って見せる簪

まぁ、アグレッシブ
始めてあった頃よりも随分と逞しく成長したよな…
いつも楯無の陰に隠れてた簪は何処に行ったんだろう?
………まぁ、いいか。


「さて、このままここに寝かしとくのもアレだし、取りあえず保健室あたりに運ぶとしますかね」
「…鏡兄」
「?」
「米俵持ちでいいと思う」

どうやらお姫様抱っこはダメらしい。
あと、残念ながら俺の肩幅じゃあ、それは出来ないぞ

「なら、そこにちょうどいい大きさの段ボールに入れて、台車で運ぼう」
「なぜ、選手控室(ここ)に人が入れるくらいの段ボールがあるのとか、『拾って下さい』の文字とかに突っ込まないぞ俺は」
「……なら、担架出すからそれで運ぼう」

最初からそれ出せよとか思ったが、なんかもう面倒になったのでそのままスルーして二人で剣道少女を保健室に運ぶのでした マル

あれ、作文だ。



【ボツネタ】

◆○○にお任せ♪

「ここもダメ」
「そんな!? ここが最後なのよ!!」
「私たち外に出られないの…」

生徒たちの顔に恐怖の色が広がるなか――、


「こんな時は私にお任せ~」

救世主(?)が現れた。

「ほ、本音ちゃん?」
「いつの間に…」

自分たちの近くにいたはずの友人がいつの間にか先頭の、それも閉ざされた隔壁の前に立っていた。

「何やってるのそこの貴女!!」
「待って!! その子は確か影の支配者(ダーククイーン)の――」

「え、ダーク? 何それ…」

新入生は知らなくて当然だが、その異名が知れ渡るのも時間の問題だろう。


「…わかったわ。貴女に任せます」
「私たちが不甲斐ないばかりに……」
「だいじょ~ぶ!! 私は~さいきょ~のマスターなんだよ~」


「「(果てしなく不安だ…)」」

友人の不安げな心の声も知らず、扉付近にいた生徒を遠ざける本音。


「フフ、おいで~バーサーカー!!」
「グルルルル…」

右腕の刺青が光ると同時に彼女の付近に現れた身の丈2m半ばを超える巨漢。


「あ、あれは!?」
「知ってるの!?」
「…………………ダレ?」

[ズルッ]

「知らんのかい!!(スパーンッ!!」

上級生による漫才は置いておき、


()っちゃえ!!」
「グォォォォオオオオッ!!!! (ドゴン、バゴンッ、バキッ!!」

本音の命令に従い、次々と隔壁を破壊していく巨大な男。


「うわぁ…隔壁がどんどんぶっ飛んでく…」
「というか、あの肌が黒くて全身凄い筋肉の人はどこから来たんだろう…」
「さぁ?」


「うおっ、何だ!?」
「バ、バーサーカー!?」
「あ~ワンちゃんだ~」
「ワンちゃん言うな!!」
「グォォォォオオオッ!!!!」
「ウォォオオ!!?? こっち来n―[プチッ]―」

ケイン(ランサー)が死んだ!?」
「「「この人でなし!!!」」」


「「………」」

[ドゴン、ドゴン、ドゴン]

「な、なんだこいつh―[プチッ]―」
「し、篠之乃さん!?」
「うっ、胃が……(キリキリ」
「せ、先輩大丈夫ですか!?」

「バーサーカーは~、とっても強いんだね~」
「グォォォォオオオッ!!!!」

[ドゴン、ドゴン、ドゴン]

「クラトス先輩、アンコ先輩危ないッス!!」」
「「誰がロイドの父だ(大蛇丸の弟子よ)… (ヒラリ」」

「おいリュウケン、止めて来いよ」
「誰がアイアンリーガーやねん。あと先に言うとくがワイは西の高校生探偵とちゃうからなダリィ先輩」
「ちっ」

「こうなったら、エクス――」
「呼んだかね?」
「呼んで無い!!」
「ヴぁかめッ!!」


「………外、出よっか?」
「……うん」

イロイロとぶち壊しである。



◆避難中の一面

「ね、ねえ癒子あの隔壁何か溶けてるんだけど」
「気のせいよ」
「あっちは何か爆弾とかで吹き飛ばしたような後が…」
「気のせいったら気のせいなの!!」


「ヒャッハァァァ、ぶち壊してやるZ・E!!」
「ダイナミック・エントリーー!!!」
「解・追攻穿突貫!!!」
「全身全霊で叩く! いちっ、にっ、さんっ豪破連刃インパクトォォォォォォオオオ!!!」

[ドカァァァンッ!!!]

「よし、壊れたぞ!!」
「全員、進撃せよ!!」
「進めぇぇぇええええ!!!」
「「「「「ワァァァァァァァァアアア!!!!」」」」」

[ドカンッ!!ドゴンッ!!!!]
[メキメキ]

「………ねぇ」
「もう知らない!!」

何処からか聞こえる破壊音と声に不謹慎ながらちょっと楽しそうに壊してるなと思ってしまった。


◆おんぶと聞いて

「いっ~!?」
「大丈夫~おんぶするよ~?」

「え、」
「おんぶ…?」


おんぶ
⇒本音の背中に乗る
⇒本音と(服越だが)密着
⇒事故を装って癒しオーラとナイスバディを堪能


「「「「「「「アイタタタタタッ、もうダメ歩けない!!!!!」」」」」」」
「……自分で歩こっか~」

欲望に忠実なファンクラブ(友人たち)であった。






 
 

 
後書き
【後書き】
かんちゃん本編初登場!!
いや~やっと出せました。
本当なら年末ネタよりも前に出したかったのですが……、私の力量不足ですねゴメンナサイ。

戦闘シーンが短いうえに、原作にあったフラグがいくつか折れましたね…。

さて、これにてクラス対抗戦は終了です。
次回から暫くは日常編を挟んでからタッグマッチ戦に入ろうと思います。

それでは失礼します。

【割とどうでもいい補足】

影の支配者(ダーククイーン)
とある眼鏡の似合う美人の二つ名。
学園で逆らってはいけない人物の一人。
因みに他にも逆らってはいけない人物に用務員のおじさんが居たりする。

◆バーサーカー
真名がヘラクレスな巨漢で本音に呼ばれて召喚。
第五次ランサー(ワンちゃん)が大好き(笑)

◆ダイナミック・エントリー
木の葉の青き野獣が使う体術。

◆解・追攻穿突貫
解体業を仕事とする漫画の主人公が使うハンマー技。

◆豪破連刃インパクト
ギルド凛々の明星(ブレイブヴェスペリア)の首領の秘奥儀。

◆某アジア支部長が体験された育毛剤
黒の教団に所属する小柄で常に帽子をかぶっている男性。
とある話でハゲ説が浮かび、本部の化学班が彼にプレゼントした。
切っても切っても同じ長さまで伸びる。

◆マジカル☆アンバー
とあるお屋敷に仕えるメイド。
お家乗っ取り計画を立てているとか…

◆ホアとフルール
鏡也らと救助にあたっていた3年生。
ホア(Hoa)はベトナム語、フルール(Fleur)はフランス語で、二人とも花の意を持つ
因みにフローラ(Flora)はスペイン語で“花と豊穣の春の女神”らしい。

◆用務員のおじさん
柔和な人柄と親しみやすいおじさんで、気がつくと学園内を歩き回ったり掃除をしてたりする。
過去に彼にありもしない因縁をつけた教員が翌日理事長から解雇通知を受けたとか、鏡也と楯無が顔を青くして会話してたとか、千冬が畏まった態度で接してたとか色んな噂がある謎多き人。


【現在公開できる情報】
◆鞆絵
全体的に紫のカラーリンが施された更識簪の専用機。
鎧という所から打鉄の同系統かあるいは…

◆更識簪
更識家の次女で学園最強の姉、兄と親しむ変人筆頭、第二の姉と想うストッパー、幼馴染にして大切な親友を持つ

◆×××ゆ××
皆からお母さんと呼ばれる青年の本名。
初登場からもうすぐで10話近くになるが、未だに本名が明かされていない。
作者としてはただ、何となくやってるだけで別に隠すほどのことではないらしい。

「じゃあ、さっさと公開しろよ!!!」



織田信長が生まれ育った国は?

尾張
 
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