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魔法少女リリカルなのはStrikerS ~困った時の機械ネコ~

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第1章 『ネコの手も』
  第2話 『彼女たちの疑問』




(なにをしているんだろう?)


 彼女はたまたま彼の行動が目に付いた。
 課長八神はやてからの挨拶が終わり――はやては最後で、他の隊長陣、主任共々の挨拶は終わっている――解散となってから、隊員、スタッフがそれぞれの持ち場に戻ろうとするとき、一人の背の小さい男がきょろきょろ、ロビーを見て回っていた。
 彼は彼女フェイト・T・ハラオウンより、いや、はやてより背がひくいように見えた。服装は他の隊員と変わらず、制服を着こなしているが、明らかに周りの人とは雰囲気が違う。


(……ねむいの、かな?)


 今日は機動六課という船の進水式ともいえる日であり、ここにいるどの人も気力に満ち溢れているのにもかかわらず、彼女の視線の先にいる彼は眠そうな目をして、なおかつ髪も整えてはいないことは頭のぼさぼささを見れば一目瞭然だった。
 彼の行動にみんなの視線が集まったのは次の行動である。
 ガゴンとおもむろにゴミ箱に頭を突っ込んだのだ。


「うーん。ない。 狸にでも化かされたかなぁ?」


 ひとしきりゴソゴソとゴミ箱の中で動いた後、ぷはぁと顔を引き抜いた。


「あの、どうかしましたか?」
「え? あぁ、いえ、なにも」


 どうも歯切れが悪い。


「落し物でも?」
「いえ、落し物というわけでは……」


 そう答えた割にはぶつぶつと、いや、落し物? と、独り言を言う。


「フェイトちゃん、どないしたん?」


 こちらのやり取りを不思議に思ったのか、はやてが2人のところまでやってきた。フェイトとはやてが彼に近づいたからだろうか、周りの人は特に心配することなく、自分の持ち場へ戻っていく。


「あ、はやて。この人がなにか落し物をしたみたいなんだ」
「落し物? おサイフとかですか? それとも何か他の貴重品類?」
「え、いえ。貴重品というものではありません。サイフというのは当らずしも遠からずですが」


 はやてはこの後、首都へ向かわなければならないため、単刀直入に聞くことにする。


「いったい何を落とされたんですか?」
「え、っと。机とイス、です」
(机とイス?)


 フェイトは疑問符を頭に浮かべたが、はやてはすぐに気がついた。


[リイン、リイン]


 はやてが念話でリインを呼んでいる間にフェイトが続ける。


「あの、それは……」
「あ、あー。大きさ的にはコレくらいなのです。実はロビーに……」


 彼はジェスチャーで大きさを表わすと、ロビーに早く着きすぎてしまったこと。暇つぶしで辺りにあった余りもので机とイス――背もたれには使い古したサイフを使用――を作ったこと。作成後、片付けをするために一度離れて戻った後にそれらが消えてしまったことを話した。


「ミニチュアのデスクとイス、ですか?」


 そのようなものですね。寝ぼけ目は変わらず、右手を後頭部にやってぽりぽりと頭を掻いた。


「あのぅ……」


 2人が聞こえた方に目をやると、はやてとリインが申し訳なさそうに両手を前で結んでいる。


「リイン、はやて?」
「それ、私たちですぅ」
「か、かんにんやぁ」


 今度はこちらが今日までリイン用のデスクとイスが見つからなかったこと。オフィスへ向かう最中に見つけて、リインにせっつかれたこと。

「それだとリインが悪いみたいですぅ!」

 『リサイクル品 御自由にどうぞ』と書かれたために持っていってしまったことを話した。


「そういうことですか」
「ごめんなさい」
「ご、ごめんなさいです」


 ぺこりと頭を下げる。


「……あの」
「ふ、ふぁい」


 顔を上げるとリインは泣かずにはいるが何を言われるんだろうかとおどおどしている。


「え、えと。どうでしたか?」
「ふぁい?」
「いえ、あの。机の安定感ですとか、座り心地ですとか」
「そ、それは、とてもよかったです。デスクはツルツルぴかぴかで、イスの座り心地も良いです」


 声を若干震わせながら応えると、彼はぷふぅとすこし息を吐くて胸を撫で下ろした。


「よかったぁ」
「です?」


 はやて、フェイトも小首を傾げる。


「では」


 そう言うと彼は回れ右して歩いていく。


「あ、あの!」
「はい?」


 何か用事だろうかと振り向く。


「そ、それだけですか?」
「それ、だけ、ですが? も、もしかして、どこかに不備でも!?」


 眉根を寄せた後にはっと顔を(しか)めて、ずいとリインに顔を近づける。


「安定はしていますが、傾いているですとか?」
「い、いえ」
「引き出しが重いですとか?」
「いえ、全然です」
「では、イスですか。キャスターがスムーズではないとか?」
「大丈夫です」
「空気圧がおかしくて、高さの可変が利かないですとか?」
「大丈夫ですぅ」
「ではでは、背もたれの可変ですか?」
「いえ、問題ないですぅ」


 う、うぅむと彼は考えられる不備を搾り出そうとする。


「あの、そうではなくてですね? お、怒らないですか?」
「はい?」
「勝手に持って帰ってしまって」
「ん。あ、あー、そういうことですか。別に怒りませんよ。あれは本当に暇つぶしで作ったもので、今日からしばらく暮らすことになる宿舎でインテリアにでもと思ったくらいです」


 まだ、部屋には何も無いもので。と頭を掻く。


「もし、困っているのならば全然利用してくださって構いませんよ?」
「本当ですか?」


 それを聞いて、ぱぁっとリインは表情を明るくする。


「はい。私はあれが突然無くなったので、不思議に思って探した次第でして」


 ひとしきり2人の会話にはやても胸を撫で下ろしたのを見て、フェイトははやてに訊ねる。


[ねぇ、はやて?]
[なんや?]
[彼が作ったデスクって、部隊長オフィスにあった――]
[そそ、あれや。本当に良くできているんよ]


 フェイトは先程オフィスに入ったとき、リインが居たデスクを思い出す。それは見た目上、はやてが座っていたものと劣らずの出来であることに今気付いた。当たり前過ぎるほどそこにおいてあったので違和感に気付かなかったのだ。


[余程器用なんやろなぁ]
[そうだね。でも、見ない顔だけど、はやては知ってる人?]
[書類で見たくらいやなぁ、ナカジマ三佐が手を回してくれた人なんよ。えと、名前は――」
「ありがとうございますです! えと……」
「はい。本日より機動六課へ出向となりましたコタロウ・カギネ三等陸士です」


 彼コタロウ・カギネは特徴的である寝ぼけ眼をそのままに、ぴしりと敬礼をした。






魔法少女リリカルなのはStrikerS ~困った時の機械ネコ~
第2話 『彼女たちの疑問』






 彼ヴァイス・グランセニックはコタロウに対する自分の立ち位置をどうするか戸惑っていた。


「コタロウ三等陸士、さん?」
「はい?」
「なんとお呼びすればいいんすかね」
「お好きな呼び方で構いませんが?」


 現在は屋上にいて、ヘリの離陸準備をしようとしているところである。コタロウはぐるりと、手を当てながらヘリをゆっくりと一周する。その間に、ヴァイスは腕を組んでいくつかの葛藤をした後、やはり自分の基準は階級ではなく、年数や年齢によるものということに落ち着けた。


「それでは、コタロウさんで」
「はい。よろしくお願いします。グランセニック陸曹」
「あ、自分のことはヴァイスで構いません」
「そう? でも、申し訳ありません。もう、ファミリーネームで呼ぶのが一種の癖になっているので、私はそのままグランセニック陸曹と呼ばせていただきます」


 そのうち、ファーストネームで呼ぶことがあるかもしれませんが。と、ヘリからは目を離さずに答えた。
 ヴァイスははやてよりコタロウを任されていた。
 本当ならばメカニックであるシャリオ・フィニーノやアルト・クラエッタに任せるところであるが、それは建前で、本音はヘリでの護送中に少しでも会話をしたいというのがはやての思いである。


「ふぅむ。このヘリ……」


 今は制服は着替え、ヴァイス、コタロウ共々つなぎを着ている。ヘリパイロット用のミリタリースーツとメカニック用のメカニックスーツとでは見た目からの違い以上に彼ら2人は違っていた。
 おおよそ違っているのはコタロウのほうで、ヴァイスはおろしたての新品見紛(みまが)うことは無いのに比べると、つなぎのいたるところにツギハギやコゲ、工業油のシミがこれ見よがしに施してある。目深(めぶか)にかぶっている帽子も特徴的だ。
 ヴァイスはすぐに新しいのに着替えては? と、勧めるがコタロウは慣れているから、と、ぼんやりと断った。


「気付きました? 新品なんですよこの――」


 彼がひとつの話のつなぎ(・・・)としてヘリを紹介しようとするが、


「あ、だからか」


 と、さも不精に板を立て直すかのように片足でヘリを(かた)げ上げる。


「っ――!?」
<マスター! 何事ですか?>


 一瞬、ヴァイスは全身がびくりと固まり、愛機のストームレイダーが主人に確認を取る。


「ここ、か」


 わずかに押し上げ、さらにもう少し奥へと進み、右手をそのまま右腰にやると道具を取り出すと、すごい速さで調整をとる。


「コ、コタロウさん?」
「す、ぐ、終わりま……ふぅ。終わりました」


 はい。と、大きくヘリを押し上げ、コタロウが先程の位置まで戻ると足を高く上げ、ヘリをそっと足を添え、ゆっくりと下ろした。


「新品は締め具合が一定で、固すぎる箇所があるんですよ。これで振動は抑えられます」
「は、はぁ。っでなくて、なんなんですかい、今のは?」
「今のは? といいますと?」
「ヘリを軽々しく持ち上げたことですよ!」
「ん。あ、あー。うちの課は結構力持ちが多いんですよ」


 5人しかいませんが。と付け加える。


「力持ちって」
(それは、怪力って部類にはいるんじゃねぇですかい?)


 ヴァイスは口にはしなかった。


<マスター?>
「だ、大丈夫だ。なんでもない。起動してくれ」
<そう、ですか。了解です>


 ヴァイスも驚くようなことは他でもいろいろと見たことがあるので、深く考えないようにした。

「そういやぁ、コタロウさんってどこの課からきたんですか?」


 彼は早くも口調をいつも通りにし始めている。


「電磁算気器子部工機課です」
「聞いた事ない課すね」
「まぁ、知名度は低いですね」
「何をす――」
「あ、ヴァイス君。もう準備できたんか?」


 次の質問の前に、屋上へのドアが開き、声のする方からはやて、フェイトが歩いてくるのが見え、2人ともそちらへ目をやる。


「準備万端。いつでも出れますぜ」
「うわぁ。このヘリ結構新型なんじゃない?」
 フェイトが感嘆して声を上げる。
「JF-704式。一昨年から武装隊で採用され始めた新鋭機です。機動力や積載能力も一級品すよ。こんな機体に乗れるってなぁ。パイロットとしちゃあ幸せでしてねぇ」


 ヘリについての解説はパイロットながら、とても楽しそうに話す。


「ヴァイス陸曹!」
「はい?」


 その最中にリインが割って入る。


「ヴァイス陸曹はみんなの命を乗せる乗り物のパイロットなんですから、ちゃあんとしてないとダメですよ」


 すっと指を相手に向けて注意するリインに、ヴァイスは当然! と、言うように手を振り上げ


「へいへい。分かってまさぁね、リイン曹長」
「コタロウさんはヴァイス君とは話せましたか? というより、新品のメカニックスーツありますよ?」


 はやては自分と同じくらいの身長のコタロウに話しかける。


「はい。気さくな良い方です」
「コタロウさん。そう言う割りには言葉遣い、堅苦しいっすよね」
「一種の局にいる癖のようなものです」


 彼は変わらずの寝ぼけ目で応える。
 5人はヘリに乗り込むと、はやては首都クラナガン、フェイトは中央管理局までと行き先を指示し、飛び立っていった。






△▽△▽△▽△▽△▽






「そういえば、コタロウさん。さっきの話の続き何すけど」
「はい」
「その、電磁……」
「電磁算気器子部工機課?」
「そうです。その課って何するところなんすか?」
「すごい名前ですぅ」
「私も気になっとったんや。その課」
「聞いたこと無い課だね」


 一様に感想を漏らす。


「んー。課の紹介上での目的は『時空管理局陸上における電磁、電算、電気、電器、電子部品を担う部であり、工機課はさらに工業生産部品、主に管理世界に存在する質量兵器の調査、検証を行う課』ですね」
「え、えーと。つまり?」
「簡単に言うと、時空管理局上の機器類の修理を行う課ですね」
「はー、なんかすごい課すねぇ」
「いやいや。今はそれぞれの課、隊には専門のメカニックがいるでしょう? 今は仕事は少なくなっているよ。さっきも言ったけど知名度が低いから」
「せやけど、多くの機器類を修理するのって相応の資格がいるやろ? 書類みましたけど、書かれてなかったんやけど……」


 あー、そうだ。と、思い出したように、コタロウははやての方を向き、


「これを」


 小さなチップを取り出す。


「書こうとしたのですが、時間が無かったもので」
(ものぐささんなんやろうか?)
「申し訳ありませんが、今追記してもよろしいでしょうか?」
「ん。それなら、リイン」
「はいですぅ」


 リインはコタロウからチップを受け取り、専用端末へつなぐ。相手は自分のデスクとイスを作ってくれた人なのだ、それくらい構わないという陽気さで、画面を立ち上げた。
 画面は資格の数だけ立ち上がるが、


「す、すごいですぅ」
「なんなんや、これ」
「本当にすごい」


 どんな感じなんですかと、自動操縦にしてヴァイスも振り向く。


「うげ」
 振り向いたヴァイスからはリインが見えなくなっていた。
 そこにはアルファベットのAからZ――本文では『あ』から『ん』――までのありとあらゆる資格が表示されている。


「測量士、高圧室内作業、通信士、溶接士、プレス、砕石――」
「運転免許は大型まで――」
「修理とは関係ない、ヘリパイロットや艦船操舵もですぅ」


 デバイスマイスターまで、と目に当るところから読み上げていく。


「ヘリパイロットの資格まで持ってるんですか?」


「まぁ、最低のCですが」


 そこで、はやても気付く。


「そう、やね。どれも最低ランクの取得までやね。どれも……三等陸士扱いかそれ相当の資格ばかりや!」
「はい。先程のデバイスマイスターも調整までのものです。うちの課はとにかく広く浅くなので」
「それにしても――」
「この数は」
「すごいですぅ。あ、ぬいぐるみ検定5級というのもあるです」
「まぁ、17年もあの課で勤務していればそうなりますね」
「17年!?」


 ヴァイスがオウム返しに聞き返し、フェイトもその言葉に反応する。


「え、17年。17年ですが、なにか?」
「あの、失礼ですが、いまおいくつですか?」


 フェイトがおずおずとたずねる。


「26歳ですが?」
「…………」


 一時の間の後。


『えーーーー!?』


 フェイトは素直に驚いたが、ヴァイスは年数、年齢両方とも自分より上なことに驚いた。
 自分より若いが勤務年数が多い人は少なくないことは知っていたが、彼の場合は年齢も自分より年上で、勤務年数も自分より倍近く勤めていることに何より驚いた。はやてと同じくらいの身長もさることながら、子どもっぽさを冗長する寝ぼけ目から自分よりも年齢が上であるとは思わなかったのだ。
 次に彼が淡々と話す自分が孤児で今の課長に引き取られたことの(くだり)は驚きの中で聞こえないでいた。






△▽△▽△▽△▽△▽






「ヴィータ。ここにいたか」


 1人の女性が少女、もとい女性に話しかける。


「シグナム」


 2人の身長差は明らかである。
 背が低く、眼下にいる新人達を真摯に実力を推し量っている女性ヴィータは、三つ編みを2つに分けた赤い髪の持ち主で、今は腕を組み、教導について思いをめぐらせている。


「新人達は早速やっているようだな」


 背が高く、新人達にちらりと目をやり、雰囲気だけをつかむ女性シグナムは、後頭部で1つに結わえた薄菫色(うすすみれいろ)の髪の持ち主で、今は右手を腰に手をやり、ただ傍観するだけに務めていた。


「あぁ」
「お前は参加しないのか?」


 ヴィータはシグナムを一瞥して、また新人達に視線を戻す。


「4人ともまだよちよち歩きのヒヨッコだ。アタシが教導を手伝うのはもうちょっと先だな」
「……そうか」
「それに、自分の訓練もしたいしさ」


 すっと視線を新人達から、教えている教導官にずらす。


「同じ分隊だからな。アタシは空でなのはを守ってやらなきゃいけねぇ」


 一つの決意を聞いたシグナムは、その理由も理解しているようで、


「そうか、たのむぞ」


 と、短く区切った。


「うん。っと、そういえば、シャマルは?」
「自分の城だ」


 同志の動向を聞くヴィータにシグナムは彼女について想像し、微笑んでいるんだろうか目を細めていた。






△▽△▽△▽△▽△▽






 彼女たち、アルト・クラエッタとルキノ・リリエが疑問に思ったのは届いた医療機器の調整をしようと、機器のケースを開いた時である。


「ふふぅん。いい設備。これなら検査も処置もかなりしっかりできるわねぇ」


 シャマルがかなり上機嫌にルームを見渡し、既にきれいなデスクの上で何度も手を走らせていた。


「ルキノ。そっちはどう?」
「こっちはなんともない。そっちは、アルト?」


 こちらも。と不思議がる。
 アルトは貰い元の医療スタッフから、この手元にある医療機器の不具合箇所を事前に(うかが)っており、一度中を開いて確認していた。そのときには不具合箇所は確かにあり、彼女はそれ以外にも老朽のためか数点、ケーブルやパーツの交換が必要な箇所を見つけ、めぼしをつけていたのである。それはルキノも同じでアルトから不具合箇所の連携を受けており、ロビーの集合前に目視で確認していのだ。
 しかし、その箇所はきれいに修繕、調整が取られている。それはアルト、ルキノが見落としていた部分もである。
 電源を入れると特に問題は無く起動し、不具合とされていた箇所も異常は見られない。


「ルキノちゃん、アルトちゃん、どうかしたの? やっぱり、本局医療施設の払い下げ品じゃあ――」
「い、いえいえ! 実用にはまだまだ十分です」
「みんなの治療や検査。よろしくお願いしますね、シャマル先生?」


 2人はかぶりをふって、シャマルを安心させる。実のところ何も問題は無いのだ。もう、いつ治療、検査がきても対応できる。


「はぁい!」


 と、機嫌を取り戻したシャマルはふふっと笑顔になって、ルームを一つの舞台のようにくるりとまわり白衣を(ひるがえ)す。


「他の機器も一応見てみる?」
「そう、だね。たしか、問題は無いけど、怪しい箇所が見つかった機器はいくつかあるから」


 彼女の聞こえないトーンで2人は言葉を交えた後、他の懸念されている医療機器を開けてみるが、それらの機器はすべて問題が解消されていた。


「どういうこと?」
「さぁ。さっぱりよ。妖精さんが直してくれたのかしら?」
「妖精って、リイン曹長?」


 なに言ってるのよ。と、苦笑しながらアルトが突っ込むが、誰が修繕をしたことについては突っ込めずにいた。






 
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