俺の異世界転生記
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三日目 夜
「すいません、カゲヌマさん。僕から頼んでおいて、足を引っ張ちゃって.....そのゴブリンの素材は貰ってください。僕は、何も出来なかったので......報酬も」
素材は貰うが、報酬は7:3でいい。最初は協力しただろう。
「あっ、ありがとうございます......」
ユーハは泣きそうな顔で申し訳なさそうに頭を下げた。
ゴブリンを討伐した後、ユーハを放置し、俺は素材を回収してから声を掛けた。話を聞くとやはり初めて魔物(正確には俺がだが)を殺して恐怖してしまったらしい。死を経験して恐怖を感じた、ただそれだけ、人間なら誰だろうが最後は知る道だ。
それからは、雨の中を歩き、森を抜け、ギルドに戻った。ユーハはギルドに着くまで終始無言だった。
ギルドに入ると何人かは俺達(恐らく血だらけのコートを着た俺)を見て、ぎょっと驚いていたが、気にせず依頼達成を報告した。これがここまでの顛末だ。
「それでは、初めに報酬として10000ギルです。そして、こちらがゴブリンの牙18本と皮5枚の代金、3160ギルになります」
ああ。ユーハ、3000ギルだ。
(皮は200ギルで牙が120ギルか.....)
「うん.....ズズズッ.....」
.....もう部屋に戻って、着替えてこい。体が冷えただろう。
「で、でも、それはカゲヌマさんも一緒」
平気だ。気休めではなく、俺は病気に掛からない体質だからだ。分かったら、早く着替えてこい。寧ろお前が風邪になったら、俺が迷惑を被る。
俺の冷たい声色にユーハは俯いた。
「分かったよ.....カゲヌマさん」
そう呟いて、ユーハはギルドから走り去っていった。さっき、ユーハが立っていた場所に小さく、それでいて雨水とは別の物が水溜まりを作っていた。
「隣いいか?兄ちゃん」
ユーハが去り、俺がギルドにある休憩所のテーブルに腰掛けていると熊のような体躯の男がそう聞いてきた。別段断る理由もない。
好きにしてくれ。
「じゃ、遠慮無く座るぜ。おい、シル!いいってよ!」
「分かったから声の音量を下げなさいッ。目立つでしょ!悪い意味で」
そう言いながら、肌の露出の多い服を着た女がこっちに向かって、歩いてきた。
「悪いわね、隣」
.......。
女は熊男とは反対側に座った。丁度俺を挟むように。
(.....俺に用があるという訳か。こんな回りくどい方法を使ってでも話したい用件が)
待つのも、面倒なので自分から話を切り出した。
お前らの用件は何だ?ただ、席に付いて、同伴したい訳でもないだろう。
「....やっぱり、気付いちまったか?」
熊男はばつが悪そうに髪を掻きながら俺を見た。
あからさますぎるからな。
「だから、あんたの作戦なんてしたくなかったのよ。こんな面倒な事せずに最初から普通に話しかければいいだけなのにね!」
女の方は腹立たしいと言わんばかりに頬杖を付き、男に怒鳴った。その一連のやり取りを見て、さっさと話を終わらせたい俺は用件を問い質した。
「ああ、わりぃな。俺はガンス・ロンゾ。職業は重戦士で、一応Bランク冒険者だ。で、そっちの」
「はいはい、あんたは黙ってて。私はシルフィ・ライズ、一応そっちのとパーティーを組んでいるの。ちなみに職業はシーフ、Cランク冒険者よ」
突然の自己紹介に俺は溜め息を吐くのをこらえ、口を開いた。
......俺が聞きたいのは用件であり、誰もお前達の紹介を聞きたい訳ではないんだが。
「ああ、それもそうだな」
「でも、自己紹介したんだから、あなたも最低限返してくれないかしら?礼には礼を返すのが基本よ」
ヤクモ・カゲヌマ、Eランク冒険者だ。これでいいかな?
「くっ、まぁいいわ。話っていうのは.....ほら、ガンス、リーダーなら貴方が言うべきでしょ?」
「俺が?」
「文句でも?」
シルフィのとげのある声に熊男は大きな体を縮めるようにして、頷いた。
(完全に尻に敷かれているな)
などとどうでもいい事を考えながら、男の言葉を待った。
話さないなら宿に戻らせてもらう。いいか?
「ああたくっ!分かったッ。率直に言わせてもらうぞ!」
どうでもいいが、さっさと話せ。
「俺達のパーティーに入らねぇか!?」
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