久遠の神話
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第六十四話 戦いを止める為にその十一
「そうした国ですね」
「確かにね、日本はね」
「だからこそ厄介で」
「相手にしがいがあるね」
「そういえば領事は先日日本の議員に立候補しようという人物と会いましたね」
「ああ、あの人だね」
領事はスペンサーの言葉を聞いてすぐにこう返した、今は肉の饅頭を食べつつそのうえで彼に答えたのである。
「彼はね」
「どうした人物だったでしょうか」
スペンサーは実は知っている、権堂のことは。
だが剣士のことは領事にも内密にしなくてはならない、それであえて隠してこう言ったのである。
「一体」
「そうだね、自信家でね」
それにだというのだ。
「それに相応しいものを持っているね」
「資質をですか」
「運とチャンスがあれば」
資質に加えその二つもあればというのだ。
「この国のトップになれるね」
「首相にですか」
「そう、なれるよ」
そこまでの人物だというのだ。
「ビジョンも政策も行動力もある」
「資質は充分ですね」
「しかも政争にも強そうだね」
政策だけが政治ではない、こちらも政治なのだ。もっともその政争だけを政治と考える者もいるにはいるが。
「選挙にもね」
「では後はですね」
「運とチャンスだよ」
その二つだというのだ、後は。
「幾ら凄くともこの二つがないとね」
「トップにはなれませんからね」
「そう、この二つは人を大きく左右するよ」
「政治家は運が大きいですね」
「チャンスも運になるかな」
それがないとそもそもチャンスも来ないというのだ、これは政治家だけでなくこの世にあるもの全てについて言えることだ。
「運はとにかくね」
「チャンスは来たら即座に掴む」
「そうしないとね」
どうしてもだというのだ。
「トップにはなれないよ」
「それが政治ですね」
「戦争もそうだと思うけれど」
「運とチャンスですね」
「この二つを逃したら勝てないね」
「戦いは数字ですが」
スペンサーは理系、軍人はすべからくそうだがその視点から話す。軍という組織は何もかもが数字で考えられるのだ。
「ですがそれ以上に人が関わるので」
「人間ならね」
「どうしても運とチャンスの要素は関わりますね」
「それなら戦争もだね」
「はい、戦争は数であり」
アメリカ軍は特にこう考える、この国は昔から物量で押す軍だからだ。
「そして運とチャンスです」
「パットンは運がよかったかな」
「強引に運を掴み取るタイプだったから」
「チャンスもだね」
「彼はそうした人物でした」
第二次正解大戦の猛将だ、非常に攻撃的な人物であり様々な逸話もある。尚彼はキリスト教徒であったが輪廻転生も信じており己をハンニバルの生まれ変わりだと考えていた。
「やはり運とチャンスは人ならば」
「軍でも必要だね」
「私もそう思います」
軍人としてそう考えているというのだ。
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