戦国異伝
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
第百四十七話 死闘のはじまりその七
「いや、見事にいきました」
「本願寺の者達は夜に同士討ちをしました」
「その結果多くの者が倒れました」
「今日はあの者達も動けぬかと」
「よくやってくれたな」
その話を聞いてだ、こう言った信興だった。
「ただ敵に損害を与えただけではないな」
「はい、後始末で一日潰れます」
「この日は動けません」
「そして明日にはです」
「本軍が来ます」
「済まぬな」
安堵した顔になりだ、信興は二人に言った。
「お陰で城の者達も生き長らえられる」
「いえ、彦九郎様もです」
「そしてこの城も」
「わしのことはよいのじゃがな」
城主として相応しい心を見せて言う信興だった、そのうえでの言葉だった。
「城の者達が助かったのがな」
「それがよかったと」
「そう仰いますか」
「うむ、あの者達に命がある」
信興ははっきりした顔で語った。
「その命が助かったからな」
「だからですな」
「それで」
「そうじゃ、よかった」
このことを心から喜ぶ言葉だった。
「全く以てな」
「では彦九郎様」
滝川がここで信興にこう言った、その言葉とは。
「今日は守りを固めて」
「それでじゃな」
「はい、万が一ということもあります」
敵が来るかも知れないというのだ、それで備えをしろというのだ。
「ですから守りを」
「はい、それでは」
「今から」
こう話してそしてだった、彼等は。
この日は城の守りを固めた、信興は滝川の言葉を聞いて彼の言う通りにしたのだ。本願寺の者達もその守りを見て話す、夜の始末をしながら。
「隙を見せぬな」
「我等が何も出来ない時にもあえて備えるか」
「織田家は噂通りじゃな」
「寸分の隙もないわ」
こう話して歯噛みするばかりだった、そして。
この日は戦がなかった、そして次の日の朝だった。
尾張の方から大歓声が上がった、城の者達はその声を聞いてその方を見るとそこには。
織田家の大軍がいた、しかもその中央には。
「おお、あの馬印は!」
「殿の馬印じゃ!」
「殿じゃ、殿が来られたぞ!」
「大軍を率いておられたぞ!」
「我等を助けに来て下さった!」
「有り難い、それではな!」
「我等は助かったぞ!」
こう話してそしてだった、彼等もまた喜びの声をあげた。
信長が城内に入るとその声は最高潮になった、それはまるで勝利の声の様であった。
「殿!殿じゃ!」
「よくぞ来られました!」
「ではこれからですな!」
「いよいよ!」
「ははは、御主達も攻めに加わるのじゃ」
そうしろとだ、信長は明るい声で彼等に馬上から話す。
「よいな」
「はい、さすれば」
「是非」
「それで彦九郎よ」
出迎えている信興にも応える。
「よくぞ生きていてくれた」
「有り難きお言葉」
信興は長兄のその言葉に頭を垂れて応えた。
その信興にだ、信長はさらに言う。
「それでじゃが」
「はい、それがしもですな」
「引き続きの戦で悪いがな」
「いえ、是非共」
長島攻めに加えて欲しいというのだ。
ページ上へ戻る