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魔王の友を持つ魔王

作者:千夜
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§??? 元旦。黎斗宅にて。

 
前書き
ギリギリ間に合った!!
すいません、これは所詮「時系列ガン無視の季節ネタ」というやつです
時系列ガン無視ですがお許しを

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「うぉっしゃー!!」

 ジョーカーを出して高木が叫ぶ。叫ぶ。叫ぶ。右隣にいたアテナが喧しそうに耳を塞ぐが、当人はそれに気づいていない。

「おし、これで2位!! あとはおねーさんが貧民以下なら」

「悪いな。そら、スペードの3」

「草薙ぃいいいいいいいいいいいい!!!」

「……黎斗よ。コイツ黙らせたいのだが。実力行使し」

 大音量な彼の声に、アテナが救いを求めてこちらを見る。

「やめて。それやったら家主権限で大貧民な」

 何が悲しくて新年早々に石像を作らねばならぬのだ。

「……むぅ」

「そらよ、上がりだ。----2位か?」

 7渡しでカードを僧上に押し付けて。暴風の英雄神が上がりを告げる。
 
「あ、汚ねぇぞジジイ!!」

 反町の罵倒など、どこ吹く風。

「ご、ご老公に……」

 甘粕は、神を罵倒する少年と。

「僕のターン。ドロー、ジョーカー!!」

 自分ルールを作ろうとする剣の王。

「ちょっとアンタ、大富豪にそんなルールないわよ!!」

 それを止めようとする軍神の妹(静花)を見て、頭痛を必死で堪えている。

「はっ、何を言うかと思えば。ルールが無いなら作れば――――アガッ!?」

 開き直ろうとしたドニに、キッチンから飛来した皿が直撃。お皿はクルクルとまわり、冥王(スミス)の手の中に収まった。

「あまりやらかすと家主に追い出されてしまいかねないぞ?」

 笑みを含む仮面の声に、ドニも苦笑せざるを得ない。

「ふむぅ。ならばここは勘弁してやろぅあっはっは!!」

「あら、これは革命でしたっけ?」

 アイーシャが革命なんてものをやらかして。

「「「何ー!?」」」

 絶叫が上がる中、一人爽やかな笑みのエリカ。

「ありがとうございます」

 そのまま出すのは、3,5,4。

「逆手に取られました!?」

「無理だと思ってましたけど、夫人の御蔭で勝てましたわ」

 女王の貫録たっぷりに、3位エリカが上がりになって。

「……お前達、まだ終わらんのか」

「「「お前は黙ってろ」」」

 12連続一位の王者(アレク)は皆から、総スカンを喰らっていた。

「にしても、たくさんいるなぁ……」

 厨房から顔を出し、黎斗が呆れたように呟いた。厨房に入っているのは羅濠教主、陸鷹化、玻璃の媛、恵那にエル。料理を片っ端から部屋へ持っていくのはジュワユーズとロンギヌスの兄妹とアイスマンにアンドレア。そして広間には―――――

「すみませんな、羅刹の君。これで私も上がりですかな」

 年始の恒例で会っていた須佐之男命、茨木童子、黒衣の僧上らの幽世組。

「よっしゃ、またビリはてめぇだ草薙護堂!!」

「非モテの恨み、思い知れ!!」

「集中砲火はないだろう!?」

 近所挨拶に来た護堂、エリカ、祐理にリリアナ、静花。大量の美女を感じて襲来してきた三馬鹿。

「にぎやかですねぇ」

 本人曰く「なんとなく」来たアイーシャ夫人と。それに引きずられてきたアレクとスミス。アレクに道連れにされたプリンセス・アリス

「この程度の試練も乗り越えられないとは情けないぞ草薙護堂」

 新年から護堂を鍛えようと意気込むアテナ。

「そんなんじゃダメダメだよ~」

 騒ぎの予感を感知し、襲来してきやがったドニ。

「……私の場違い感凄まじいんですが」

 新年に魔王へのご挨拶(という名の貧乏くじ)を引かされた甘粕は、その場に集ったメンバーの(極一部を除く)豪華っぷりに驚きを隠せない、というか胃が痛くなっていくのを感じる。あの少年たちが出合い頭にドニを殴り、羅濠教主に抱きついた時などは、本当に心臓が止まったかと思った。

(黎斗さんの友人じゃなければ、一族郎党皆殺しどころか日本沈没ですよホント)

 お願いだからあんな無謀な真似は謹んで欲しい。

「よし、次のゲームだ」

 仕切り直し、と言わんばかりの護堂の声に、茨木童子が反応する。

「では、私が切りましょう」

 大量のカードが、混ぜ合わされる。人数が多いので、二セット使ってのトランプだ。おかげでジョーカー四枚の革命、なんて狂ったものを見てしまった。

「俺は富豪だから貧民と交換か、貧民だれだー?」

「えっと、私ですかねー?」

「カードいらないんでおねーさんください!!」

「お前黙れよ」

 ブレない高木に辟易としつつ。

「わた、わたしは駄目ですよぅ」

「……アンタも乗らなくて良いから」

 カード交換が、始まる。

「ほらよ、大富豪」

「これをやろう、大貧民」

 護堂(ビリ)アレク(トップ)で交換する。護堂の顔が、不敵に歪む。

「……ふっ」

「?」

 皆が一様に護堂の顔を見る。今の護堂は、逆転の一手を見つけた時の表情ではないか。

「待ってたぜ、この瞬間を――――!!」

「あ、黎斗。この肉おかわりー」

「聞けよドニ!!」

「ほいほい」

 護堂の口上を遮って、無謀にもドニが肉の追加を希望する。黎斗が仕留め、教主が仕込み、鷹化達が調理を手伝ったあらゆる珍味が卓上に並ぶ。別に黎斗が仕留める必要は何処にもない。ないのだが、なぜそんなことをしているのかというと、ある理由で試合に参加できず、料理も出来ないためニートよりマシと希望したからだったりする。

「これ旨いなぁ。なー黎斗、これ何の肉?」

「……それ、聞かない方が良いと思います」

 祐理は名波の質問に小声で呟くが、流石に当人には聞きとられずに。

「んとねー、今年は午年だからケルピー探してきました。ってわけでケルピーの馬刺し」

 権能で神機を呼びだしてひとっ飛び、出没地点で植物たちに目撃情報を聞く。あとはワイヤートラップで乱獲だ。食べられるであろう分しか狩って来なかったので、生態までは破壊していないと信じたい。トラップも全部回収してきたから後ほどトラブルが発生することもないだろう。

「け、けるっ……!?」

 だが、それはあくまで黎斗目線である。神獣の肉なんてものを食べていたのかと、一瞬でフリーズする呪術関係者組。

「ける……? なんじゃそら?」

 とりあえず良くわからんが旨い、などと零す民間人組とは対照的で興味深い。

「あぁ、外国の馬の種類」

 ユニコーンの煮込みや朱雀の丸焼きだと誤魔化しが効かなかったかもしれない。ケルピーが日本でマイナーな部類で良かったと、黎斗は一人安堵する。

「そうか。しかし旨いなコレ。この肉売ってくれないか?」

「いーよー?」

「いや何言ってんですか!!!???」

 眩暈を覚える(感性)一般人組。馬刺しを平然と食べているのは人間を「やめていない」人間の中では三馬鹿だけだ。箸を伸ばしていたエリカですら、名前を聞いた瞬間表情が強張ったのを護堂は見逃してはいない。

「あぁ、待たせたねごどー。んで、何だって?」

 馬刺しを食べて満足したのか、護堂の話に戻してくるドニ。コイツは本当にフリーダムなやつだ。

「お前今更かよ……」

 項垂れるのも一瞬、護堂は見事なドヤ顔を披露する。

「天変地異、発動!!」

「「「……?」」」

 場が、沈黙した。

「……黎斗よ、天変地異とはなんだ?」

 アテナの声に、黎斗は窮する。自分は辞書でもなんでもない。

「知らんがな。パソコンあるでしょ? 勝手に調べて」

「よっしゃ黎斗秘蔵のエロ動画を――ぐぉおおお!!?」

 マイドキュメントを開こうとした反町に、器が直撃。こんなとこで公開されたら人生終了だ。

「……鷹化、は調理の主力候補だからしんどいな。茨木さん、頼みます」

「……はい。黎斗様も苦労されますね」

 乾いた笑いと共に、鬼王がインターネットを立ち上げる。

「ふむふむ……」

「で、どーだって?」

 急かすような護堂に押され、茨木童子が読み上げる。

「カード交換前、大貧民の手札の最強カードが10以下の時に発動。大富豪と大貧民の手札を入れ替える」

「何ぃ!?」

「ハッ、とっておきを、見せてやる!!」

 勝ち誇る護堂。項垂れるアレク。護堂が公開した手札は、最強カードが、9で、最低カードが、6。普通にしてても強くない上に、革命しても強くない。

「これだけカードがあるはずなのに、よくこんなカードばっかり集められましたね……」

 リリアナが半ば呆れたように覗き込む。

「まだだ。こんな貴様以外知らないようなマイナールール、通ると思っているのか!!」

 アレクが頑強に抵抗を試みるが。

「おやおや~ この大富豪、どんなローカルルールでも存在が確認されれば採用される、ってルールでしたよね~??」

「見苦しいですよ、アレクサンドル~?」

 悪代官顔の護堂とアリスに責められる。

「あ、料理もう全部できるからそれラストね」

「何ィいいいいいいい!!?」

 追撃とばかりに黎斗の無情な声が、アレクの精神を削り取る。

「えぇい、良かろう。俺は勝つ!! こんなことで俺は負けん!!」

 悲壮な決意を胸に秘め。かくしてアレクは勝負に挑む。

「では、最終局面。チキチキ★新年大富豪大会決着の時です。試合――開始」

 冷静に開幕を告げる役目は黎斗の役で。本当なんでこうなった。

「「「いくぞォォオおおおおおおおお!!!」」」







「んで、アテナの勝ちか」

「まぁな」

 順調に上位をキープしてきたアテナの勝利、そして都落ち発動によりアレクが大貧民、という形で大富豪の幕は下りた。最強カードを持っていた筈の護堂は、三馬鹿の捨て身の特攻により三人と一緒に仲良く貧民階級だ。まぁ。大貧民ではなくなったのだから昇格したといえるのだろうか。

「にしてもさ。僕の役割が審判って酷くね?」

 厨房から燃え尽きた漢どものなれの果てを眺めつつ。黎斗は漠然と呟いた。いや確かにあれには混じりたくなかったけど。

「カンピオーネや古老の方々がイカサマしようとしたら、マスター以外に見抜けませんから」

 エルが笑みを含んだ声で答え。

「れーとさんが権能の無駄遣いしなきゃ王様達の独壇場になっちゃうじゃん」

 恵那もそれに同調する。

「まぁ、たしかにそーだけどさ」

 普通にやればカンピオーネや神の所へ強力な手札が来て逸般人や一般人とは勝負にならないだろう。だから、ここで黎斗は秘策を使った。まず、須佐之男命がアレクの”大迷宮((ザ・ラビリンス))”で黎斗の部屋内を領域化、そこへ黎斗が八雷神でクラッキング。アイーシャ夫人の幸運の加護を拝借し――

「全員の運を均等にならしてはみたけれど。……終わってみればはたして本当に均等になっていたのかどうか」

 アレクの独壇場なのは、正直なんとなく予想していたことだったけど。ここまで独壇場だとは予想しなかった。終始強かったのはアレク、アテナ、須佐之男命の三強といったところか。これでは本当に幸運が皆均一だったのかわからない。

「ま、いっか」

 こっちにはかかって来なかった火の粉だし、正直どうでもよいか。そんなことを厨房で談笑しているうちに、復活した人外達が騒ぎ出す。はたして酒は、足りるだろうか。

「とりあえず作るか」

「マスター、ソーマやネクタル、とってきましょうか?」

「お義兄さま、私も神酒とやらを」

「お願い」

 エルは黎斗の影へもぐり、倉庫へ酒を探しに行って。教主は転移し酒をとって戻ってくる。

「……れーとさん。奮発しすぎ」

 やりすぎだろうと恵那が諌めるも。

「まぁ新年だし、良いかな、と」

 黎斗がなぁなぁですませてしまう。

「さて、今年も一年頑張りますかね」

「そだね」

 恵那も頷き、賑やかな部屋を見る。罰ゲームでお姫様だっこをしているアレクとされてる護堂を見つつ。

「あけましておめでとうございます。今年も、よろー」

 ボソッ、と呟いた。多分人外の輩にはこれで伝わっているだろう。


 そんな、元旦の話。 
 

 
後書き
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本筋と関係ないネタですみません!

あけましておめでとうございます!! 
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