| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

緋弾のアリアGS  Genius Scientist

作者:白崎黒絵
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

イ・ウー編
武偵殺し
  8弾 アリアと2人で

 結局、あの後アリアを振り切った俺は、普通に授業に出席した。先生からは、「あれ?薬師丸(やくしまる)君、今日は欠席じゃなかったの?」と言われたが、そこは適当に誤魔化しておいた。

 その後にも、俺を追うのを諦めて教室に帰って来たらしいアリアと鉢合わせたり、無駄な伝言を頼まれて怒った理子に謝罪したり、朝のことを聞きつけて詳しい話を聞きに来た武藤(の意識)を沈めたりと色々あったが、午前中は特に危険な事件も無く平和な学校生活だった。

 で、今は5時間目の授業の時間。

 武偵校(ぶていこう)では1時間目から4時間目までの午前中の授業では、普通の高校と同じように一般科目の授業を行い、5時間目以降の午後の授業で、それぞれの専門科目に分かれての実習を行うことになっている。

 俺の所属する装備科(アムド)では生徒や民間からの依頼を受けたり、自分の研究所(ラボ)で実験を行ったりするのだが、今日の俺の活動はそのどちらでもない。

 実はさっき俺と(あや)研究所(ラボ)に行ったら、文に、

「ミズキ君、ちょうどいいとこに来たのだ!もし暇なら青海(あおみ)のお店に買い物に行ってきて欲しいのだ!」

 と頼まれてしまったのだ。

 別に今日は何かやる予定も無かったし、大切な親友である文の頼みということもあって、俺はその買い物を引き受けることにしたのだった。

「ミーズキ」

 そして装備科(アムド)棟を出ようとした時、聞き覚えのあるアニメ声に呼ばれた。

「なんでお前がここにいるんだよ。アリア」

 まともに答えが返ってくるとは微塵(みじん)も思ってないが、一応聞いてみる。

「あんたがここにいるからよ」

 ほらやっぱり。案の定、アリアは答えになってない答えを返してきた。

「答えになってないだろ。強襲科(アサルト)の授業、サボっていいのかよ。蘭豹(らんぴょう)のヤツ、怒ったら滅茶苦茶(めちゃくちゃ)怖いぞ」

 まあ、怒ってなくても怖いんだけどさ。

 蘭豹(らんぴょう)というのは武偵校の体育教師にして、強襲科(アサルト)の教師で、香港マフィアの一人娘とかいう、バカげた肩書きを持つ武偵だ。

 俺も1年の1学期だけとはいえ、強襲科(アサルト)にいたから分かる。2丁拳銃と二刀流を使いこなし、徒手格闘の技術も高いアリアでも、蘭豹(らんぴょう)が相手では秒殺どころか瞬殺だろう。

 新学期早々、クラスメイトが1人減るなんて事態はさすがに困る。教室内の雰囲気(ふんいき)が悪くなるし。

 そんな俺の心配はどこ吹く風。先ほどの俺の質問にアリアはあっさりと答える。

「あたしはもう卒業できるだけの単位を(そろ)えてるもんね」

 アッカンベー。

 (あか)(ひとみ)をむいて舌を出すアリア。軽くムカつくな、それ。

「で、あんた今日はどんな依頼(クエスト)受けたのよ」

 武偵校(ぶていこう)の生徒は、一定の訓練期間の後、いきなり民間から有償の依頼を受けることができるようになる。街で事件の現場に偶然居合わせたら、それを解決しても良い。

 で、それらの実績と各種試験の成績に(もと)づいて、生徒にはA~Eの『ランク』が付けられる。その上にはさらにSという特別なランクがあって、俺がまだ強襲科(アサルト)にいた頃組んでた親友はそのSに格付けされていた。

 ちなみに俺は入試の時から今まで変わらず、ずっとAランクのままだ。ま、どうでもいいんだけどな、ランクなんて。

「ほら、さっさと今日受けた依頼(クエスト)を教えなさいよ」

「お前に教える義務はない」

 言えない。依頼じゃなくて、ただの買い物だなんて絶対に言えない。言ったら絶対に何か言われる。

「風穴あけられたいの?」

 イラッとした表情のアリアが拳銃に手をかける。おい、銃で脅すのは卑怯だろ。そんなことされたら言うしかないじゃねえか。

「今日は……依頼じゃない。買い物を頼まれたんだ」

「買い物?」

青海(あおみ)の店に買い物に行くんだよ」

 俺は文に頼まれた買い物についてアリアに話す。

 話終わった後、意外にもアリアは特に何も言ってこなかった。てっきり、「か、買い物って、し、小学生レベルの依頼(クエスト)ね。ま、まあ、あんたにはお似合いでしょうけど」とかなんとか言ってくると思ったのに。

 もしくは、この話を聞いてアリアが俺から興味を失ってくれるかと1ピコグラムくらいは期待してたんだが、ダメなようだな。

 ふーん、なんて言いながら、逃げるように歩き出した俺の横についてきた。

「何でついてきてんのお前」

「別にいいじゃない。あたしがどこに行こうが、誰について行こうが、そんなのあたしの勝手でしょ」

「良くない。お前がどこに行こうが、俺以外の誰について行こうが、俺の知ったことじゃないし、そんなのお前の勝手だが、俺についてくんのはやめろ」

「いいから、あんたの買い物に付き合わせなさいよ」

「断る。ついてくんな」

「そんなにあたしがついてくるのが嫌なの?あんた、そんなにあたしがキライなの?」

「スキかキライかで言えばキライだ。ついてくんな」

「もっぺん、ついてくんな、って言ったら風穴」

 風穴あけられるのもイヤだったし、もう何も言う気力が()かなくなった俺は、仕方なくアリアを引き連れたままモノレールで青海まで移動した。

 かつて倉庫街だった青海地区は再開発され、今は億ションとハイソなブティックが建ち並ぶオシャレな街になっている。

 というか、いったいこんな街で何を買って来いっていうんだ?文は、行けばわかる、と言って、店の場所しか教えてくんなかったし。

 さて、どうしたもんかなと思い、何気なくアリアの方を見ると、アリアは形のいいおでこの下から俺を上目遣(うわめづか)いに見た。

「ミズキ。おなかへった」

 いきなり何を言い出してんだこのチビは。

「さっき昼休みだったろ。メシ食わなかったのかよ」

「食べたけどへったのっ」

 どんだけ燃費が悪いんだよお前。

「なんかおごって」

「いきなり本来の目的から脱線し始めたし……」

 まあ、俺も軽く小腹がすいたし、マックでも買ってくるか。



 女王様(アリア)がご要望なさったギガマックセットを、俺が買って戻ってくると……

 アリアは、高級ブティックの、ボンッ、キュッ、ボンッ、なマネキンをぼけーっと見ていた。

 マネキンが着ているキラキラしたサニードレスと、自分の体を交互に見ている。

 あの視線。なるほど。ああいうのに(あこが)れてるんだな。

 寄りも上がりもしない、小学生みたいな体型のくせに。

 ちょっと、アリアがあのドレスを着ているところを想像してみよう……うん。恐ろしいくらい似合わねえわ。

 これ以上見てると、なんだかいたたまれなくなってきそうだったので、いい加減アリアに声をかけることにした。

「おい、アリア」

「――――あ」

 振り返ったアリアは、俺の口元が若干ニヤついているのに気付いたらしい。

 ぶわあああ、と赤くなって両手をぶんぶん振りはじめた。

「――――ち、ちがうの! あ、あたしはスレンダーなの! これはスレンダーっていうの!」

「まだ何も言ってないだろうが」

 そう言い捨てて、俺は道の反対側にあった公園に入っていく。適当なベンチを見つけてマックの紙袋を置くと、アリアは何か言いたげな顔をしてどしんと隣に座ってきた。

 ひらり。武偵校(ぶていこう)の赤いスカートがひらめき、中のホルスターが一瞬見えた。車輌科(ロジ)武藤(バカ)がパンチラならぬガンチラと名付けていた現象である。アイツは本当にバカだと思う。

 拳銃(けんじゅう)をスカートの内側に隠し、緊急時にはそれを素早く出さねばならないため、武偵校の女子は概してスカートが短い。アリアのスカートもその例に漏れず、やたらと短かった。

 だが、これっぽっちも(うれ)しくないのはコイツのなりが小学生みたいだからだろう。これが白雪や理子なら、まだマシだったはずだ。

「むぐむぐ。アリア。この公園にいるときは、もっと離れてた方がいいと思うぞ」

「もきゅもきゅ。なんでよ」

 むぐむぐもきゅもきゅと肉肉しいハンバーガーを食べながら会話する。

「辺りを見りゃ分かんだろ」

 俺は飲みさしのギガコーラをベンチに置き、視線で周囲を示す。

 この公園では――――いつも、あちこちに若いカップルがいちゃついている。爆ぜればいいのに。

 海も近いし、新しくてキレイだし、いわゆるデートスポットとして有名な場所なのだ。俺のチャリをジャックした爆弾魔もどうせならこういう場所を爆破すればいいのに。

 わざわざここで食べることにした理由は、もちろん青海(あおみ)で唯一の公園ということでベンチがたくさんありそうということもあるが、この状況を見たアリアが周囲のカップルを銃殺――――じゃなくて、俺から離れていってくれるだろうという計算もあったのだ。

 それはある程度正解だったらしく、アリアは……

「あ……」

 向かいのベンチに座っている大学生らしきカップルが寄せ木細工みたいにひっついてるのを見て、ポテトをタバコっぽくくわえたまま一瞬硬直した。

 そして俺の方を見て、もっぺん向こうのカップルを見て、また俺を見て、ぶわあああ。真っ赤になった。アリアには赤面癖があるんだな。

「……う。う!」

 ベンチの前を腕を組みながら歩いていったカップルなんて死ねばいいのに――――という俺の心の声は置いといて。アリアは、慌てて1人で腕を組んだ。間違っても俺と腕を組みたくないらしい。

「ほらな。もう帰った方がいいぞアリア。こんな所で2人でいるのを学校の奴らに見られたら、またミズキとアリアはつきあってるとか言われちまうだろ。俺は基本的に目立ちたくないんだ。お前だって、好きな男とかいるなら、誤解されちまっても知らねえぞ」

 まあ、俺とアリアが一緒にいるのを普通の人間が見たら、兄弟としか認識されないだろうけどな。

「す、好きな男なんて!」

 アリアはルビーみたいな(あか)(ひとみ)をまんまるに見開いて、アニメ声を裏返らせた。
「い、い、いない! あ、あたしは、れ、恋愛なんて――――そんな時間のムダ、どうでもいい! ホントに、ホンットに、どうでもいい!」

 ……そんなに過剰に反応するなよ。ガキじゃないんだから。いや、見た目はガキみたいだけどさ。

 アリアはどうやら恋愛がらみの話には相当弱いタイプらしいな。

 弱点を1つ発見だぜ。

「でも、友達とかにヘンな誤解されたくないだろ」

「友達なんて……いないし、いらないっ。言いたいヤツには言わせておけばいいのよ。他人の言う事なんてどうでもいい」

 じゅるううううー。

 アリアは照れ隠しのためか、ギガコーラのストローをくわえて思いっきり飲んだ。

「他人の言うことなんてどうでもいい、ってのには賛成だけどな。1つ、言いたいことがある」

「あによ。けぷ」

「それは俺のコーラだ」

 ぶぼあ!

 アリアはいま食道を通過しようとしていたコーラを噴き出した。

 きったねーな。花も恥じらう女子高生の行動とは思えん。

 じと、と見ていた俺を、アリアは真っ赤になって――――

「このヘンタイ!」

 いきなりぶん殴ってベンチから吹っ飛ばしやがった。

 おい。どう考えても理不尽だろこの流れは。間違えたのはアリアの方だっていうのに。



 夕方。ようやく店の前に着いた俺たちは、2人揃って店の雰囲気に圧倒されていた。

 文に指定された店はなんか凄くオシャレなブティックで、とても男子高校生や小学生みたいな体型(本人曰くスレンダー)の女子高生が入っていい雰囲気じゃなかった。

「あ、あたし今日用事あったんだ!じゃあ、ミズキ、また明日!」

 あからさまな嘘をついて逃げようとするアリアの首根っこを掴み、俺は店の入り口へ向かって歩いてく。

「逃がすかバカ。死なばもろとも。こうなったらおまえも道連れだ」

「離しなさい!はーなーせー!」

 なおも逃げようとあがき続けるアリアを黙らせ店内に入ると、

「いらっしゃいませ!」

 店員さんが一斉に頭を下げてきた。

 やばい。もう今すぐにでも帰りたい。だが、まだ帰るわけにはいかない。文に頼まれたものを買ってからじゃないと。

「本日はどのようなご用件でしょうか?」

 店員さんの1人が近づいてきて、用件を尋ねてくる。

「えっと、平賀文の代理で商品を受け取りに来たのですが……」

「ああ!平賀様の代理の方ですか!少々お待ちくださいませ!すぐにお品物をご用意致しますので」

「あ、はい」

 しばらくの間アリアのほっぺたやおでこを突いて遊んでいると(やってる間に3発くらい殴られたが)、店員さんが小さな紙袋を持って戻ってきた。

「はい。こちらがご予約されていたお品物になります。代金はカードでよろしいですか?」

「はい」

 文から預かっていたカードを店員さんに渡し、会計を済ませると俺とアリアは速攻で店を出た。

「ありがとうございました!またのご利用をお待ちしております!」

 俺はもう2度と来ないからな。 
 

 
後書き
あけましておめでとうございます!白崎黒絵です!
新年一発目の投稿でございます!1月1日0時0分ちょっきりです!やったね!
今回は完全オリジナルの話ではないのですが、その代わりに分量がいつもくらいに戻ってるので許してください。
内容的には……アリアがいつも通り暴走してますね。そしてミズキが損な役回りになる、と。まあ、そこは主人公の運命ということで、ミズキにはこれからも頑張っていただきましょう!
それじゃあ、新年一発目のアレ、やっておきましょうか。今回は今まで出てきた主要キャラのオンパレードでお送りします!

ミズキ「あけまして!」
アリア「おめでとう!」
白雪「今年も1年」
理子「よろしくね!」
文「なのだ!」

それでは皆様、また次回。なるべく早く投稿できるように頑張ります!
疑問、質問、感想などなど、コメント待ってます! 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

感想を書く

この話の感想を書きましょう!




 
 
全て感想を見る:感想一覧