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Element Magic Trinity

作者:緋色の空
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斑鳩


カッ、カッ、カッ・・・。
沈黙の空間に、足音だけが響く。
その足音の主はショウ。顔を怒りで染め、ただ走っている。

「ジェラール・・・くそォ・・・くそォっ!」

走りながら叫ぶ為、かなり息が切れている。

「よくも俺達を騙して・・・姉さんをキズつけて・・・」
「ショウ!」

怒りを動力に走るショウに、エルザが声を掛ける。
現在エルザはショウの魔法によってカードの中に閉じ込められており、ショウの服のポケットの中にいた。

「いいから落ち着くんだ!私をここから出せ!」
「大丈夫だよ。姉さんは俺が守る、絶対に」
「ショウ!」

8年もの間自分を騙していたジェラールを倒す為、ショウは走る。
・・・すると、その後ろから声が響いてきた。

「・・・ォォォオオオオッ!面白れぇモンが俺を呼んでんぞコノヤロオオオオオッ!」

叫びと共に一気に床の塵や埃が舞い上がり、声の主が通り過ぎると同時に煙が起こる。
赤い閃光が凄まじく嬉しそうに笑顔を浮かべ、目を輝かせ、黒いジャケットをはためかせ、己の欲望の為に走り、叫ぶ。

「!?」
「アルカ!?」

声の主―――アルカンジュ・イレイザーは、ハッピーのMAXスピードをも超えるスピードでショウを一気に抜いていく。
あまりの出来事にショウが呆然として足を止めると、アルカもそれに気付いて足を止める。

「ん?オメー・・・シュウだっけ?」
「いや、ショウだけど・・・」
「あー、そうだったそうだった」

クリムソンレッドの髪をくしゃっと掴みながら、アルカはショウの近くまで歩いて戻る。

「で?お前何でここにいんの?お前も面白れぇモンに呼ばれたのか?」
「は?」
「気にするな。こういう奴なんだ」

アルカの問いにショウは首を傾げ、エルザが呟く。

「俺はジェラールを倒すんだ!俺達を騙したアイツを・・・!」
「ふーん」

ショウの言葉にアルカは頷き、呆れたように眉を寄せ、溜息をついた。

「・・・面白くねぇなァ。全く面白くねぇよ」

先ほどまでの嬉しそうな笑顔はどこへやら。
今度は真逆の呆れたような退屈そうな表情を浮かべ、不機嫌そうに呟いた。

「・・・お前は面白きゃそれでいいのかもしれないけど、俺達はそうじゃないんだ!8年も騙されて・・・俺はジェラールを許せない!」

ショウが叫ぶ。
が、アルカは表情を崩さず、腕を組んだ。

「だから、その『ありきたりな理由』がつまんねェんだよ。何だよその定番中の定番な理由は。悪ィけど、そんな王道中の王道ストーリーはいらねぇんだわ。興味ねェし。『騙されたから復讐する』?何の為に?復讐して何か変わんのか?」

ショウは何も言えない。
確かに、アルカの言う事にも一応筋が通っているからだ。
自分がジェラールを倒して騙されていた8年が戻って来る訳でも、騙された記憶が消える訳でもない。

「ま、それでもジェラールを倒すってんなら好きにしろよ。どの道俺ァ関係ねぇし興味もねぇ。チッ、面白れぇモンが呼んでると思ったのによォ。ハズレか、ハズレ」

くしゃ、が、ぐしゃぐしゃに変わる。
先ほどより強く髪を掴んでかき回し、鬱陶しそうに盛大なため息をつく。
黒ジャケットをひるがえし、来た道を引き返そうとショウに背を向けた。
―――――と、その時。

「!」
「お?」

ベンべケべケべケべケべケベンベケ・・・。
桜の花弁と共に、厚底の下駄を履いた女性が現れる。
肩を露出した踝丈の着物に身を包み、その着物の裏や裾には髑髏のマークが描かれていた。
淡い桃色の髪を上で着物に似合うように結び、結んでいない髪は下ろしている。

「うちは斑鳩と申しますぅ。よしなに」

桜の花弁が舞う。
『斑鳩』と名乗る女性は手に刀を1本持ち、微笑んでいた。

「どけよ。何だ、このふざけた奴は」
「あらぁ・・・無粋な方やわ~」

ショウの敵対心満載の目に、斑鳩は表情1つ変えずに着物の裾で口元を隠す。

「テメェなんかに用はねぇ!」

ショウが用があるのはジェラールだけだ。
目の前にいる斑鳩などに用はない。
そう叫び、一気に無数のカードを放り投げる。

「・・・」

斑鳩は真っ直ぐに向かってくるカードを見つめ、ゆっくりと刀を抜き―――――舞うように刀を振った。
優雅に、優美に、美しく舞う。

「!?」
「何だ、こいつァ・・・」

その姿にショウは目を見開き、アルカは静かに呟く。
斑鳩が刀を振り終えた瞬間、宙を舞っていたカードは――――――

「バカな・・・!」
「ほぉ・・・」

全て横一線に斬られていた。

「うちに斬れないものはありません」

笑みを浮かべたまま、斑鳩は呟く。
刹那、動きを止めていたショウに、Xのような切り傷が現れ―――――

「!?」

ズバァ、と。
一気に斬れた。

「がはぁ!え・・・あが・・・」
「ショウ!」

口から血を吐き、よろ・・・とよろけるショウを見て、アルカは慌てたように叫ぶ。

「い・・・いつの間に・・・」

目に見えないほどに素早い剣閃。
ショウはそのまま倒れ、斑鳩はその後ろにいたアルカに目を向ける。

「あんはんもこの方のお仲間どすか?」
「んまぁ、一応な。にしてもお前・・・面白れぇな。俺のレーダーに間違いなしだわ」

うんうん、と納得するように頷くアルカ。

「えーっと?お前は斑鳩・・・だっけ。名乗ってもらったら名乗るのが常識ってモンだよな」

アルカは1人呟き、笑う。
面白いものを見つけた時と同じ、ただ己の欲望に忠実で歪んだ笑みを。

「俺ぁアルカンジュ・イレイザー。アルカでいいぞ」
「アルカはん、どすか」

斑鳩は変わらず笑みを浮かべ、アルカも歪んだ笑みを浮かべる。
そして、2人は静かに戦闘態勢を取った。

大火剣舞(レオダンスソード)!」

先手を切ったのはアルカだった。
赤い魔法陣を一気に展開させ、そこから回転させるように次々と剣を放つ。

「うちに斬れないものはないと言ったはずどすえ?」

斑鳩は先ほどのよう刀を振るい、炎で構成された剣を斬り、放たれたと思ったら斬り、を繰り返す。

「ならコイツでどうだ?大地剣舞(スコーピオンダンスソード)!」

続いて茶色の魔法陣を展開し、先ほど同様剣を放つ。
先ほどは炎で構成された剣だったが、今は砂や土、岩で構成された剣を一斉に造り、スピードをつけて一気にぶん投げる。

「無駄どすよ」

が、今まで通りに刀を振り、全てを綺麗に粉砕する。

「チッ」

アルカは舌打ちを1つし、再び魔法陣を展開しようとして―――――目を見開き、黒いジャケットを脱いだ。
その瞬間、ジャケットが先ほどのショウのようにXに斬れ、バラバラになって床に落ちた。
それを見たアルカは「あー」と言いたげな顔をし、口を開く。

「あーあ・・・コレ新品なんだぞ?最近エリゴールにボロボロにされたりソルにボロボロにされたりよォ・・・とりあえずロクな事がねぇんだわ。驚くくらいにな。・・・ったくよォ、また買い直さねぇとじゃねぇか。ヤッベェ、ルーシィみてぇに金欠になっちまうかも。帰ったら仕事行かねぇとな。これミラから貰ったんだけどな・・・マジついてねぇ。ミラ怒るかな・・・いあ、ミラは優しいから怒らねぇかな。マジ天使、マジ女神だし。そういうトコも好きだけどな!あ、そういや今日の占い見てねぇわ。多分最下位だな。だからこんなについてねぇんだ。俺普段の行いいい方だろうし。それしか考えらんねぇ。絶対そうだ、うん」

途中から全く関係ない事になっているが、アルカの中では「ジャケットがボロボロになったのは占いの順位が多分最下位だったから」という事で決まったらしい。
1人納得したように頷くと、ボロボロになったジャケットを残骸をまとめてズボンのポケットに突っ込む。

「んじゃ、仕切り直し・・・とは、行かねぇっぽいな」

再び戦闘態勢を取ったアルカは、ショウの方を見て肩を竦める。
倒れるショウの服の胸ポケットから、ひらりとカードが1枚宙を舞う。

「ショウ!アルカ!」
「姉さん・・・」

そのカードの中には、必死の表情をしたエルザがいた。
アルカはそれに気付いたから、戦闘態勢を解き、数歩後ろへ下がる。

「あらぁ、そんな所におりましたん?エルザはん」

相変わらずの余裕のある笑みを浮かべ、斑鳩は呟く。

「今すぐ私をここから出せ!お前達の勝てる相手じゃない!」

必死にカードを叩き、頬を潰しながら叫ぶエルザ。

「安心して・・・そのカードはプロテクトしてある。絶対に外からキズつける事は出来ないんだ」
「へえ・・・」

ショウの言葉を聞いた斑鳩は、どこか楽しそうに一旦鞘におさめた刀を抜こうと手をかける。

「ショウ!私を出せ!奴の剣、ただ者じゃない!」
「大丈夫・・・信じて」

ショウがそう言った瞬間――――――空を斬る『シュバァ』という音と共に、斑鳩の刀が抜かれた。
ビシ、と。
その剣閃はカードの中に閉じ込められたエルザを襲う。

「ホラ・・・」

が、このカードはプロテクトしてある為、エルザに攻撃は当たらない。
それを知っているショウはゆっくりと地に落ちかけているカードを見つめ――――目を見開いた。

「!」

キィン、と。
カードの中のエルザは剣を握りしめ、斑鳩の剣閃を何とか防いだ。

「カードの中を・・・空間を超えて斬ったァ!?」
「マジかよっ!超面白れぇーーーーーーーーっ!」

ショウが驚愕し、アルカが『超』がいくつ付いても足りないくらいに大興奮し、嬉しそうにはしゃぐ。
その間にも、斑鳩は笑みを浮かべたまま刀を振り続ける。

「くっ!」

その度に金属と金属がぶつかる音を立てる。

「姉さん!」
「エルザ!」

ショウとアルカが叫び、金属同士が激突する音が響いた瞬間―――――

「え!?」

一閃。
強く空を斬る音と共に、エルザが姿を現した。
それを見た斑鳩は笑みを浮かべる。

「貴様のおかげで空間に歪みが出来た。そこを切り開かせてもらった」

緋色の髪を揺らし、ただ一言告げる。

(空間を超える剣も凄いけど・・・あの一瞬でそれを利用した姉さんはやっぱさすがだ・・・見事すぎて言葉が見つからない・・・)

目に涙を浮かべ、ショウが小刻みに震える。
と、そんなショウに手が差し伸べられた。

「大丈夫か?ほら」
「あ・・・ありがとう・・・」

アルカはショウを壁側まで引っ張り、壁を背凭れに座らせる。
そして自分はその横に座り、エルザと斑鳩を見つめた。

「貴様に用はない。消えろ」

エルザの言葉に、斑鳩は「クス」と小さい笑い声を漏らす。

「!」

ピキ、と。
エルザの鎧の左肩辺りにヒビが入る。
それを皮切りに、胸辺り、腰辺り、右肩・・・と、鎧の様々な部分に次々にヒビが入っていく。

「くぁ!」

エルザが小さく叫び声をあげた瞬間―――着ていた鎧がバキバキと音を立て、壊れた。
持っていた剣も一緒に。

「あいさつ代わりどす。あれ?もしかして見えてませんでした?」

そう言って意地悪そうに笑う斑鳩。
それを見たショウは驚愕し、アルカは歪んだ笑みを浮かべ、エルザも目を見開いた。 
 

 
後書き
こんにちは、緋色の空です。
・・・書く事が思いつかないから、とりあえずいらない話を。
私、緋色の空は、FTでラミアのリオンが好きですねー。あとエルザとグレイとナツとシモンとルーシィとウェンディと・・・(長くなるので略)。
でも、1番好きなのはリオンかなー。
・・・これくらいにしましょう。以上、いらない話でした。

感想・批評、お待ちしてます。 
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