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戦国異伝

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第百四十五話 安土築城その八

「本願寺にもな」
「あの寺にもですか」
「うむ、送っておられる」
 義昭はそうしているとだ、信玄は穴山に答えた。
「その本願寺がどう動くかじゃな」
「本願寺は天下を望んではおりませぬ」
 今度は内藤が言って来た。
「あそこは寺であります故」
「それでじゃな」
「天下を望まぬ、そして幕府の権威とも無関係ならな」
 謙信は天下には興味はないが幕府の権威を何よりも尊んでいる、それ次第で動く者だというのだ。尚北条や毛利も天下は望んでいないが彼等の家を守る為ならば織田家と戦うことも考えられることであるのだ。
「織田家とは、というのじゃな」
「まして織田家は本願寺には銭を贈ることもしております」
 機嫌取りだがそうしたこともしているのだ。
「やはり天下に信者の多い本願寺には低姿勢ですが」
「しかしじゃ」
 それでもだとだ、ここでまた言う信玄だった。
「織田家が門徒達に弓を向ければどうじゃ」
「その時はですか」
「わかりませうか」
「うむ、その場合はな」
 どうかというのだ。
「戦になるしな。そもそもじゃ」
「そもそもとは」
「まだ何かありますか」
 穴山だけでなく他の家臣達も問うた、信玄の今の言葉に。
「織田家と本願寺の間には」
「火種がありますか」
「織田家は寺社に檀家を置かせておるな」
「はい、荘園の代わりに」
「それを置かせてですな」
「そうして荘園や僧兵を手放させております」
 これは国人達の組み込みと共に進めているのだ、それで寺社の僧兵達もかなり減らしていっているのだ。
 それでだ、本願寺ともだというのだ。
「今では比叡山、高野山とじゃ」
「本願寺だけですな」
「残tっている寺社は」
「そうじゃ、とりわけ力の強い三つの寺が残っている」
 そうなっているというのだ。
「最早な」
「では、ですか」
「織田家と本願寺は」
「本願寺は多くの門徒を持っておるな」
 加賀に至っては彼等が治める国にまでなっている、そして僧兵の数も他の寺に比べて尋常ではないまでに多い。
 それでだ、彼等もだというのだ。
「元々織田家が一歩間違えればな」
「その時は、ですか」
「織田家と本願寺は戦になる」
「そうなりますか」
「そうなるわ」
 こう話す信玄だった。
「元々な、だから織田信長にしてもじゃ」
「本願寺は後回しにしたのですか」
「とりあえずは」
「そうじゃ、比叡山に高野山もな」
 この二つの寺もだった、この二つの寺も尋常な勢力ではないのだ。
「最後に回したのじゃ」
「外掘を埋めましたか」
 内藤が言う。
「本願寺等をどうにかする前に」
「それが整ったところじゃった」
 織田家の領内でだ、国人の取り込みと共に寺社の荘園をなくし僧兵も消していくこともだというのだ。
「本願寺をどうするかな」
「いよいよですか」
「その時になっていましたか」
「そこで公方様の文が来ればな」
 織田家が本願寺の力を弱めようとした時にだというのだ。 
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