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ドリトル先生の来日

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第一幕 困っている先生その九

「どうなるか決まるまでは」
「よし、じゃあ今から買い物に行くよ」
「私達の御飯も買って来てね」
「それは忘れないよ」
 皆大切な家族です、忘れる筈がありません。
「楽しみに待っていてね」
「ええ、じゃあね」
「行ってらっしゃい」 
 こうお話してでした、そして。
 先生は診察時間が終われば買い物に行くことにしました、それで本を読みながら過ごしていますと。
 病院の扉が開きました、そして入って来たのは。
「先生いますか?」
「あれっ、その声は」
「はい、僕です」
 浅黒い肌に癖のある髪の少年です、アフリカのジョリギンキという国の王子様バンポです。以前イギリスの大学に留学していて先生にお世話になっていたことがあるのです。青と金色の派手な上着とズボンを着ています。
 その王子がです、先生のところに来て言うのです。
「おられますね」
「うん、ここにね」 
 先生は本を閉じて王子に応えます。
「ちゃんといるよ」
「それは何よりです」
「それにしても王子は何時イギリスに戻って来たのかな」
「今さっきです。とはいっても大学はまだ日本です」
「オックスフォードには戻らないんだね」
「あそこでの課程は終わりましたから」 
 それでだというのです。
「今は日本にいます」
「そうなんだね」
「はい、それで先生今はどんな感じですか?」
「患者さんがいなくて」
 一人もです、先生は王子にも苦笑いでこのことをお話します。
「困ってるよ」
「ヨーロッパは今何処も大変だからですね」
「患者さんもいない位だからね」
「大変ですね」
「オリンピックもあったのにね」
 それでもイギリスの苦しい状況は変わらないというのです。
「だから移住しようかなとも考えてるんだ」
「移住ですか」
「そう、イギリス以外の国にね」
「そうですか」
「何処かいい国はあるかな」
「それでしたら」
 ここで、です。王子はこう先生に言いました。
「いい国がありますよ」
「えっ、本当!?」
「いい国があるの!?」
「それ何処!?」
「僕達にとってもいい国なの!?」 
 王子が言ったところで動物達が診察室に入ってきました、その話を聞いて飛んで来たのです。ポリネシアやトートー、ダブダブ、チープサイド達は文字通り。
「そこ何処なの!?」
「王子聞かせてくれる?その国」
「一体」
「何か本当に困ってるみたいだね」
「実はそうなんだよ」
 先生は王子に苦笑いのまま答えます。
「今も言ったけれど患者さんがいなくてね」
「患者さんがいないと病院はやっていけないからね」
「うん、サーカスや動物園をしようにもね」
「ヨーロッパ全体が不況だからね」
「どうにもならないんだよ」
「じゃあ丁度いいね」 
 王子は先生の言葉を受けて明るい顔で述べました。 
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