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Element Magic Trinity

作者:緋色の空
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FIND THE WAY


魔法評議会会場、ERA(エラ)

「楽園の塔をこの世から消し去る為に・・・Rシステムをジェラールに使わせない為に!今、我々が取れる行動は衛星魔法陣(サテライトスクエア)からのエーテリオン攻撃以外ないんだぞ!」
「しかし・・・」
「うむ・・・」

ジークレインの説得の叫びに、オーグとミケロは言葉を詰まらせる。

「Rシステムは歴史に記録されてはならない禁忌の魔法。この意味お解りですよね、皆さん」
「エーテリオンによる攻撃は全てを『無』にかえす。たとえ民間人がいたとしてもだ。あの塔にいる者は全滅するのだぞ」
「それが魔法界の秩序を守る為なら、払わねばならない代償なんだ」

ウルティアの言葉にオーグが呟き、ジークレインが珍しく真剣に答える。

「ジークの言う通りじゃ。ワシ等は常に犠牲の上に立ち歩んできた。それが今日(こんにち)の魔法界。歴史がそれを証明している」
「レイジ老師!我々は無断でカ=エルム国領土に攻撃を仕掛けた凶人として、歴史に名を残す事になるのですぞ!」
「そういう意味ではうちらも犠牲の1つって事やな」
「ベルノ老師!」

ベルノと呼ばれた関西弁の女性が立ち上がる。

「死んだ人間は生き返らん。命の尊さを子供に教える時、ワシ等はそう言わねばアカン。やむを得んわ、エーテリオン攻撃に賛成する」
「何!?」
「・・・」

ベルノの言葉に会場は更にざわつき、ヤジマは溜息をつく。
その横に音も立てずに現れたクロノは変わらない少し歪んだ笑みを浮かべ、その討論を眺めていた。

「あと1人だ」







「あと1人・・・か」

楽園の塔で、ジェラールが呟く。

「は?何か言いましたかな?ジェラール様」
「いや・・・こっちの事だ」

首を傾げるヴィダルダスにそう答え、ジェラールは笑みを崩さず呟く。

「ゲームオーバーまであと1人。くくく・・・」





エルザの口から語られた過去に、ルーシィ達は何も言えなかった。
最初にグレイが口を開く。

「ちょっと待てよエルザ・・・話の中に出てきたゼレフって・・・」

グレイの問いにエルザは涙を拭い、ゆっくり口を開く。

「ああ・・・魔法界の歴史上、最凶最悪と言われた伝説の黒魔導士」
「た、確か呪歌(ララバイ)から出てきた怪物もゼレフ書の悪魔って言ってたよね」

ルーシィは以前、この最強チーム結成のキッカケとなった事件である、鉄の森(アイゼンヴァルト)が目論んだ呪歌(ララバイ)を使ったギルドマスター定例会を狙うテロ事件を思い出しながら呟いた。
その後ろで「ララバイ・・・って何だっけ?」とルーが必死に思い出そうとしているのは余談である。

「それだけじゃない・・・おそらくあのデリオラも、ゼレフ書の悪魔の1体だ」
「!」

自分の住んでいた街を壊滅に追い込んだデリオラがゼレフ関連の悪魔だとは・・・と、グレイは驚愕で目を見開く。
ガルナ島の一件に関わっていないアルカは首を傾げた。

「ゼレフとは、あれほどの恐ろしい魔物を簡単に造り出す事が出来るほどの魔力を持っていた」
「ジェラールは、そのゼレフを復活させようとしてるって事ですか」

ジュビアが目を見開き、エルザが頷く。

「動機は解らんがな・・・ショウ・・・かつての仲間の話では、ゼレフ復活の暁には『楽園』にて支配者になれるとかどうとか・・・」
「そういえば、そのかつての仲間たちの事って、どうしても腑に落ちないんだけど・・・」

ルーシィが口を開く。

「あいつ等はエルザを裏切り者って言ってたけど、裏切ったのはジェラールじゃないの?」
「私が楽園の塔を追い出された後、ジェラールに何かを吹き込まれたんだろうな」

ルーシィの問いにそう答えながら、エルザは俯く。

「しかし、私は8年も彼等を放置した。裏切った事には変わりはない」
「でも、それはジェラールに仲間の命を脅されてたから近づけなかったんじゃない!それなのにアイツら・・・!」
「そうだよ!エルザは裏切ってなんかないじゃないか!」
「もういいんだルーシィ、ルー。私がジェラールを倒せばすべてが終わる」

ルーシィとルーの反論を遮り、エルザがそう言う。
しかし、その中で1人、グレイはどうにも納得のいかない表情をしていた。

(本当にそうなのか?)

そう考えるグレイの頭に、先ほどエルザの言った一言が過る。

―この戦い・・・勝とうが負けようが、私は表の世界から姿を消す事になる―

(あの言葉が妙に引っかかる)

妙な引っ掛かりを覚えながらも、その引っ掛かりが何かは分からない。

「姉さん」

すると、突然声が響いた。
全員がそちらに目を向けると、エルザを連れ去ったかつての仲間の1人・・・ショウが歩み寄ってきている。

「その話・・・ど、どういう事だよ?」
「ショウ・・・」

先ほどエルザの語った過去の話を聞いていたのだろう。
その表情は驚愕と困惑色に染まっていた。

「そんな与太話で仲間の同情を引くつもりなのか!ふざけるな!真実は全然違う!」

そう怒鳴り散らしながら、ショウは語る。
自分が8年もの間信じてきた、自分の中の真実を。

「8年前、姉さんは俺達の船に爆弾を仕掛けて1人で逃げたんじゃないか!ジェラールが姉さんの裏切りに気づかなかったら、全員爆発で死んでいたんだぞ!ジェラールは言った!これが『魔法』を正しい形で習得できなかった者の末路だと!姉さんは魔法の力に酔ってしまって、俺達の様な過去を全て捨て去ろうとしてるんだと!」

筋が通ったジェラールの『過去』。
当時幼く、真実を確かめる力の無かったショウ達には、ジェラールの語った歪んた真実は、真実以外の何物でもないのだろう。
その真実を必死に表情で語るショウ、だが・・・

「ジェラールが、()()()?」

グレイのそのたった一言に、言葉を失った。

「あなたの知ってるエルザは、そんな事する人だったのかな?」

続けてルーシィがそう言うと、戸惑い、動揺しながらもショウは口を開いた。
エルザは俯き、何も言わない。

「お・・・お前達に何が解る!俺達の事、何も知らないくせに!」

ショウが動揺しながらも叫ぶ。
すると、ずっと黙っていた男がゆっくりと口を開いた。








「ああ、知らねぇな」








全員の視線がその男―――アルカに向かう。
塔の柱の1本に凭れ掛かるように立つアルカは、真っ直ぐにショウを見つめ、続ける。

「確かに俺はお前を知らねぇな。お前だけじゃねぇ。エルザの事も、グレイの事も、ルーの事も、ルーシィの事も、ジュビアの事も、今ここにゃいねぇがナツとティア、ハッピーの事も何も知らねぇよ。だけど、相手の全てを知ってたら、そりゃあもう・・・『他人』じゃねぇだろ。知らない部分があるから『他人』なんだ」

柱から離れ、黒ズボンのポケットに両手を突っ込み、つかつかと歩み寄る。

「お前がジェラールを信じようとエルザを信じようと、正直俺はどうでもいい。面白くねぇ事にゃ興味ねぇ性質(タチ)なんでな。だがな、1つだけ言わしてもらう」

ショウの前で足を止め、穢れのない子供のような漆黒のつり目でショウを見つめる。

「もうお前は子供じゃねぇ。自力で真実を見つけられるし、どっちを信じるか自由に選べるんだ・・・俺みてぇにな」

最後の言葉には、どこか悲しみに似た感情が混ざっているような感じがして、思わずその場にいた全員が言葉を失う。
まるで、アルカには『突き止めなければならない真実』が存在するかようで・・・。

「う・・・うるさいっ!俺にはジェラールの言葉だけが救いだったんだっ!だから!8年もかけてこの塔を完成させた!ジェラールの為に!」

悲痛な叫び声を上げながら語るショウ。
それを聞くルーシィ、グレイ、ジュビア、ルー、アルカは真剣な顔でショウを見つめ、エルザは悲しそうに視線を下に落とした。

「その全てが・・・ウソだって?」

握りしめた拳は、怒りや戸惑いなどの感情を全て抑え込んでいるかのようにプルプルと震えている。

「正しいのは姉さんで、間違ってるのはジェラールだというのか!?」

ショウが必死に問いかける。
が、エルザは辛そうに目を閉じ、何も言わない。

「そうだ」

すると、エルザではない別の人物が、ショウの必死の問いに答えた。
はっきりと、少しの迷いもなく。

「シモン!?」

その人物とは、グレイとジュビア、ティアを襲った巨漢・・・シモンだった。

「てめ・・・」
「待ってくださいグレイ様!」

カジノでやられた事を忘れた訳が無いグレイがシモンに敵意を向けるが、それをジュビアに止められる。

「あの方はあの時、グレイ様とティアさんが氷と水の人形(みがわり)と知ってて攻撃したんですよ」
「何!?」
「暗闇の術者が辺りを見えてない訳が無いんです。ジュビアはここに来たのは、その真意を確かめる為でもあったんです」
「さすがは噂に名高いファントムのエレメント4」

ジュビアの言葉に、賞賛の言葉を発するシモン。

「誰も殺す気はなかった。ショウ達の目を欺く為に気絶させるつもりだったが、氷なら、もっと派手に死体を演出できると思ったんだ。それにどちらにしろ、身体が水で出来ているティアを倒す事は俺には出来ない」
「お、俺達の目を欺くだと!?」

シモンの言葉に、驚愕の声を上げるショウ。

「お前もウォーリーもミリアーナも、皆ジェラールに騙されているんだ。機が熟すまで・・・俺も騙されてるフリをしていた」
「シモン、お前・・・」

エルザが呟くと、シモンは照れくさそうに笑い、頬をポリポリと掻きながら口を開いた。

「俺は初めからエルザを信じてる。8年間、ずっとな」

そう言うシモンの笑みは、昔と変わっていない。
暖かくて、優しくて、どこか照れたような笑顔・・・。
それを見たエルザはうっすらと目に涙を浮かべ、口元を緩ませた。

「会えて嬉しいよ、エルザ。心から」
「シモン・・・」

再会を喜ぶように、互いを抱きしめあうエルザとシモン。
その様子をルーシィ達も微笑ましく見つめていた。

「何で・・・皆、そこまで姉さんを信じられる・・・何で・・・」

そんな中、ショウは呟く。
ショウをエルザとシモンが見つめた。

「何で俺は姉さんを・・・信じられなかったんだ」

そう言うと、ショウは―――――

「くそぉおおおおっ!!!!うわああぁあぁ!!!!」

――――その場に膝をつき、泣き崩れた。
楽園の塔に、ショウの泣き叫ぶ声が響き渡る。

「何が真実なんだ!?俺は何を信じればいいんだ!」

悲痛な叫びが楽園の塔を走った。
8年間、ずっと信じてきたモノが全て嘘だった・・・それを知り、裏切られたショウは悲しみに暮れる。
そんなショウの前に、エルザはスッとしゃがみ込んだ。

「今すぐに全てを受け入れるのは難しいだろう。だが、これだけは言わせてくれ。私は8年間、お前達の事を忘れた事は1度もない」

泣き喚くショウをそっと優しく抱き締め、エルザは言葉を紡ぐ。

「何も出来なかった・・・私は、とても弱くて・・・すまなかった・・・」

ショウを抱きしめながら、エルザは謝罪する。

「だが今なら出来る。そうだろ?」

笑みを浮かべながらそう言うシモンに、エルザは真剣な顔で頷く。

「ずっとこの時を待っていたんだ。強大な魔導士がここに集う、この時を」
「強大な魔導士?あたしもかしら?」
「僕戦力にはならないよ」

ルーシィがシモンに聞き返し、ルーは何とも的外れな空気クラッシャーぶりを発揮する。
いつでもどこでもKY、それがルーだ。

「ジェラールと戦うんだ」

シモンの言葉を聞くグレイ、ジュビア、エルザは真剣な顔でシモンを見つめ、ルーシィは驚いたように少し目を見開き、ルーは少し戸惑う様な表情を浮かべ、アルカは面白いものを見つけた時のような少し歪んだ笑みを浮かべた。

「俺達の力を合わせて」

その言葉を、顔も上げずに聞くショウの表情は、憎しみに似た感情一色に染まっていた。

「まずは火竜(サラマンダー)海の閃光(ルス・メーア)がウォーリー達と激突するのを防がねば」

シモンは真剣な表情で言葉を続ける。

「ジェラールと戦うには、あの2人の力が絶対に必要なのだ。火竜(サラマンダー)のナツと、海の閃光(ルス・メーア)のティア」








「ハッピー!どこだー!」
「勝手に巻き込まないでくれるかしらバカナツ・・・」

無類の愛猫家であるミリアーナに連れ去られた―――正確にはウォーリーだが―――ハッピーを探すナツと、それに巻き込まれたティアは、塔の廊下にいた。

「ん?何だ、この部屋は」

ナツはとある部屋の前で足を止め、部屋を覗き込む。

「何よコレ、趣味悪い・・・ネコだらけじゃない。こんな沢山の目の中で生活なんて出来ないわ」

それに釣られて部屋を覗き込んだティアは鬱陶しげに部屋を見る。
ソファにベットにランプにクッション・・・部屋にある全てのものがネコの部屋。
ミリアーナの部屋だ。

「もしかしたらハッピーもここに・・・ここまで来たら仕方ないし、手分けして探すわよ。アンタはそっちね・・・って、ナツ?」

部屋の奥を指さしながらティアがそう言い、ナツに目を向ける。
が、当の本人はというと・・・

「あははっ!何かいいなコレー!」

部屋にあった猫の被り物を被っていた。

「アンタはここに何しに来たのよこのバカナツーーーーっ!」
「おごっ!」

そんなナツに向かって、ティアは容赦なく蹴りを決める。

「いってぇ・・・何しやがんだティア!」
「これ以上蹴りを喰らいたくないのなら、さっさとその猫の被り物外しなさい!」
「へいへい」

ティアにそう言われ、ナツは渋々被り物を取ろうとする、が。



ぐぐ・・・



「・・・」



ぎゅうう、ぎゅっ、ぎゅううう・・・



顔は見えないが、必死な様子で被り物を引っ張るナツだが、被り物はピクリとも動かない。
それを見たティアは珍しく恐る恐る、ナツに尋ねる。

「1つ聞かせて・・・アンタ、まさかとは思うけど・・・」
「うん・・・ぬけねー」
「はぁぁあああああああっ!?」

ティアの叫び声が部屋中に響く。

「おお・・・まいったなぁ」
「何やってるのよバカナツ!初めて会った時からバカだとは思ってきたけど、まさかここまで底抜けのバカだとは思ってもみなかったわよこのバカ!」
「おい、そんなにバカバカ言うんじゃねーよ。俺が傷つくだろーが」
「アンタはそんな繊細な人間じゃないでしょ!」

1回で4回もバカと叫んだティアにナツが呟き、さらにティアはナツに指を突き付け叫ぶ。

「まぁまぁ落ち着けって。ほら、お前もこれ付けとけ」

ナツは被り物の横に置いてあったベルトを素早くティアに巻き付ける。
因みにベルトには黒猫の尻尾付きだ。

「何するのよバカナツ!」
「おおっ!お前顔立ちネコっぽいから似合うじゃねーか。じゃあついでにこれも」

そう言うとナツはどこから持って来たのか、掌にピンクの肉球が描かれたモコモコの手袋のティアの手にはめる。
それに続けて、彼女の被る帽子を取り、同じく黒猫の猫耳カチューシャをつけた。
もう完全に黒猫である。

「私は着せ替え人形じゃないのよ!帽子返しなさいっ!それは大事なものなんだから!」
「いいじゃねーか、似合ってんだし」
「アンタにそんな事言われても嬉しくないわよ!全く・・・」

ナツの行動に心底なんて言葉では足りないくらい呆れたティアは、カチューシャを取ろうと手をかける、が。



ぐっ、ぐっ・・・



「・・・は?」



ぎゅい、ぎゅい・・・



嫌な予感がして、必死にカチューシャを取ろうとするティア。
しかし、ナツの被り物同様、ピクリとも動かない。

「な、何よこれぇぇぇぇぇぇっ!?」
「うははっ!お揃いだな、ティア」
「笑ってる場合じゃないわよ!なら、この尻尾は・・・!」

今度は尻尾のついたベルトを外そうとするが、外れない。
手袋も引っ張ってみるが・・・もう結果は言わずとも解るだろう。

「・・・ウソでしょ?」

ティアが呆れたように額に手を当てる。

「ほれ、帽子」
「勝手に装備させておいて随分呑気ねアンタは・・・!」

ナツから差し出された帽子を素早く掴み、小さく折りたたんでワンピースのポケットに入れる。

「まぁ、面白れぇからいいか。なぁ?ティア」
「アルカみたいな事言ってる場合じゃないでしょバカナツ!」

被り物をして呑気に言うナツにティアが文句を言い放ち続ける。
部屋の扉に背を向けた状態で。

――そんな猫と化した(?)2人の背後に、かくかくとした人影が現れた事に2人は気づかない。 
 

 
後書き
こんにちは、緋色の空です。
次回、猫と化した(?)ナツとティアが共闘する!
ちなみにティアの猫耳姿の想像は、読者様にお任せします。

感想・批評、お待ちしてます。 
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