Element Magic Trinity
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星霊王
「諦めないで!」
「ロキ!」
しゅううう・・・と消えかけるロキに必死に声を掛ける。
「|妖精の尻尾の皆によろしく頼むよ」
が、ルーシィとルーの言葉に諦めたようにロキが返す。
「アンタは星霊界にさえ帰れたら生命力を回復できるのよ!絶対帰らせてあげるから!」
「そんな事は出来ないよ・・・」
「出来る!僕達妖精の尻尾の魔導士は不可能を可能にするんだっ!」
「だっておかしいじゃない!そんなのカレンを殺した事にはならないよ!事故じゃないっ!」
そう叫ぶと、ルーシィはロキをぎゅっと抱きしめた。
「開け!獅子宮の扉!ロキを星霊界に帰して!開いて!お願いっ!」
「ルーシィ・・・もういいんだ・・・止めてくれ・・・」
「よくない!」
ロキはルーシィを引き離すが、そんな事で引き下がるルーシィではない。
「目の前で消えてく仲間を放っておける訳ないでしょ!」
その言葉にロキが目を見開いた。
バチバチ・・・と音を立てて金色の光が上がり始める。
「くううっ!」
「ルーシィ!そんなに1度に魔力を使っちゃダメだ!」
「言ったでしょ!絶対助けるって!星霊界の扉なんて、あたしが無理矢理開けてみせる!」
必死にルーシィは叫ぶ。
が、このままでは扉が開くよりルーシィの魔力が尽きる方が先である。
それを確認したルーは両手に淡い緑の光を灯す。
「手を貸すよ・・・ルーシィ!」
「ルー!」
「何を・・・」
光を灯したままその両手をルーシィの肩に置き、詠唱する。
「魔の力よ、悠久なる空を舞い、かの者に流れよ・・・!」
すると、その肩に置かれた両手から緑色の光がルーシィの周りを舞い、中に入っていく。
少し顔を歪めながらも、ルーの手はルーシィの肩から離れない。
「「開け!獅子宮の扉!」」
「やめてくれ、2人とも・・・!」
「「開けーーーーーーーーーーー!」」
「開かないんだよ!契約している人間に逆らった星霊は星霊界には戻れない!」
すると、金色の光が更に強くなる。
それを見たロキは叫んだ。
「やめてくれ!星霊と同化し始めてるじゃないか!このままじゃ君達まで一緒に消えてしまう!」
痛みが、魔力が一気に抜けていく感覚が、ルーシィとルーの体を走る。
当然痛い。この手を離してしまいたくなるほどに。
だが、今ここで手を離したら、目の前でロキが消える。
その時の心の痛みに比べたら、罪の意識で心を痛めていたロキに比べたら、こんなもの―――!
「これ以上僕に罪を与えないでくれーーーーーーーーーっ!」
ロキの悲痛すぎる叫びに、ルーシィは叫んだ。
「何が罪よ!そんなのが星霊界のルールなら、あたしが・・・あたし達が変えてやるんだから!」
ルーシィの言葉にロキが涙を流しながら目を見開いた、その時。
―――――――――世界が、変わった。
風が舞い、滝が空へと伸びる。
滝の水は中央に渦を描き、その渦の中から何かが姿を現す。
「え?何!?」
「ま、まさか・・・そんな・・・」
ルーシィが驚き、ルーは口をあんぐり開けて呆然とし、ロキは震える声を発した。
「星霊王!」
そこにいたのは、幾千もの星空を背に威厳ある佇まいで宙に浮かぶのは・・・星霊界の王、全ての星霊達の王『星霊王』だった。
「な、何でこんな所に!?」
「王って・・・!1番偉い星霊って事!?」
「でかーーーーーーー!」
ロキとルーシィが呆然とし、ルーがその大きさに驚くなか、星霊王はゆっくりと口を開く。
「古き友、人間との盟約に置いて、我ら・・・鍵を持つ者ヲ殺める事を禁ズル」
その言葉に、ロキは言葉無く星霊王を見上げる。
「直接ではないにしろ、間接にこれを行ったレオ。貴様は星霊界に帰る事を禁ズル」
星霊王の言葉に、ルーシィは立ち上がり叫ぶ。
「ちょっと!そりゃあんまりでしょ!」
「そうだそうだーっ!」
「よ・・・よさないか、ルーシィ!ルーも!」
ロキはそんな2人を止めるが、そんな事で止まるはずもなく。
「古き友よ、その『法』だけは変えられぬ」
威厳ある佇まいも表情も崩さず、星霊王は言う。
(まさか・・・ルーシィが『法を変える』と口走った事に乗じて姿を現したのか!?こんな小さな案件に・・・王が自ら・・・)
ぶるぶると震えながらロキがそんな事を考えている間にも、ルーシィとルーは並ぶように立ち、星霊王を睨むように見上げていた。
「3年も苦しんだんだぞ!」
「仲間の為に!アリエスの為に、仕方なかった事じゃないの!」
「余も古き友の願いには胸を痛めるが・・・」
星霊王がそこまで言いかけるが、その先をルーシィは言わせなかった。
彼女が聞きたい言葉はただ1つ。「ロキは無罪だ」・・・それだけだ。
「古い友達なんかじゃない!今!目の前にいる友達の事言ってんのよ!ちゃんと聞きなさい!ヒゲオヤジ!」
「過去を振り返って何になるんだ!今お前が見るべきは、古い事じゃなくて今の事だろ!この両目節穴ヒゲオヤジ!」
怒りに任せているとはいえ、王相手にヒゲオヤジだの両目節穴ヒゲオヤジだの・・・かなり勇気のある発言だ。
2人を突き動かすのはただ1つ。ロキが消える事を許せない思い。
「これは不幸な事故でしょ!ロキに何の罪があるっていうのよ!無罪以外は認めないんだからねっ!」
「これは正当防衛だ!その罪の償いを、ロキは3年もかけてしたんだ!これ以上ロキが罪を背負う必要なんてない!」
ルーシィの体から魔力が溢れていく。
「もういいルーシィ!ルー!僕は誰かに許してもらいたいんじゃない!罪を償いたいんだ!このまま消えていきたいんだ!」
「そんなの・・・罪を償った事にはならないよ!」
ロキの叫びに負けないほどの大声で、ルーが叫んだ。
「ロキは仲間の為に行動したまでだ!それを罪だと言うのなら・・・仲間を想う事が罪だと言うのなら、僕達妖精の尻尾の魔導士は皆、ロキと同じ罪人だよ!」
そこまで言い、今度はロキの方を向く。
「ロキ!君は消えていきたいと・・・消滅を願っていると言った!でもそれは!自分の罪から目を逸らしてるのと同じだよ!消える事で全ての罪から解放されようとしているだけだ!本当に償いたいと言うのなら、がむしゃらに、精一杯、限界の限界まで、120%の力を出し切って生きていくべきだ!」
「ルーの言う通りよっ!アンタが消えたってカレンが帰って来る訳じゃない!新しい悲しみが増えるだけよ!」
ルーシィの体から一気に魔力が溢れ、光る。
「む」
その光景を見た星霊王は声を漏らした。
何故なら・・・
「罪なんかじゃない!仲間を想う気持ちは、罪なんかじゃない!」
彼女の周りには、彼女と契約する星霊達が全員揃っていたのだから――――――!
ルーシィはそのままロキの方を振り返り、叫ぶ。
「アンタが死んだら今度はあたしが!ルーが!アリエスが!ここにいる皆が!また悲しみを背負うだけ・・・!そんなの、罪を償う事にはならないわ!」
そのルーシィの叫びに反応するように、アクエリアスが、タウロスが、バルゴが、キャンサーが、サジタリウスが、リラが、プルーが、ホロロギウムが、クルックスが・・・契約する星霊全員が優しい眼差しでロキを見つめた。
(星霊が・・・これほど同時に・・・)
が、星霊達はすぐに消え、魔力の使い過ぎでルーシィは倒れ込む。
「ルーシィ!」
ロキが叫び、ルーシィに駆け寄る。
もう魔力もあまり残っていない状態にも拘らず、ルーシィは必死に体を持ち上げ、叫ぶ。
「あたしの友だちも皆同じ気持ち」
「ここにいる僕もだよ」
そんなルーシィを支えながら、ルーも口を開く。
「アンタも星霊なら、ロキやアリエスの気持ちが解るでしょ!」
ルーシィの叫びに、星霊王は眉を寄せた。
ルーに支えられるルーシィにロキが駆け寄る。
「なんて無茶な事を!一瞬とはいえ、死ぬ危険もあるんだぞ!」
「うぅ・・・」
「死ぬ危険を犯してまでも、ルーシィは君を助けたいんだよ!ロキ!」
ルーに強い口調で言われ、ロキは言葉を失う。
すると、眉を寄せ、何かを考えていた星霊王はゆっくり口を開いた。
「古き友にそこまで言われては、間違っているのは『法』かもしれぬな」
その言葉にロキは目を見開き、ルーシィは笑みを浮かべ、ルーは微笑んだ。
「同胞、アリエスの為に罪を犯したレオ。そのレオを救おうとする古き友。その美しき絆に免じ、この件を『例外』とし、レオ・・・貴様に星霊界への帰還を許可スル」
ルーシィとルーの、仲間を想う気持ちが・・・遂に、1つの法を変えた。
「いいトコあるじゃない、ヒゲオヤジ♪」
「さっすがだね、おじさん!」
嬉しそうにウインクするルーシィと、こちらも嬉しそうにピースするルーに、星霊王は二カッと笑ってみせる。
「免罪だ。星の導きに感謝せよ」
そう言いながらバッとマントで自分の姿を隠し、姿を消す星霊王。
ロキは涙を流しながら、震える声で言葉を紡ぐ。
「待ってください・・・僕は・・・」
まだ罪を償おうとするロキ。
すると、姿はないが、星霊王の声が響いた。
「それでもまだ、罪を償いたいと願うならば、その友の力となって生きる事を命ずる。それだけの価値がある友であろう。命をかけて守るがよい」
その瞬間、ロキの目から涙が溢れ、流れた。
空に伸びていた滝が落ちていき、舞っていた風が動きを止める。
「・・・だってさ」
「王様直々の命令だよ?どうする?ロキ」
響いてきた星霊王の言葉に、ルーシィは嬉しそうな笑顔を浮かべてロキを振り返る。
ルーも振り返り、いつものあどけない笑顔を浮かべた。
ロキも口元に笑みを湛え、左手で顔を覆う。
「見て!扉が・・・!」
ルーが指さした先に、ロキの背後に、巨大な扉が現れる。
温かい光を放ち、ロキを優しく迎える扉。
(これで僕の罪が消えた訳じゃないけど・・・君達には前へ歩き出す勇気をもらった)
涙を流すロキが光になり、扉に吸い込まれていく。
「ありがとう。そしてよろしく。今度は僕が君の力になるよ」
「こちらこそ」
キィン、と。
ロキが完全なる光になって扉に消えていく。
「・・・よかったね、ルーシィ」
「うん」
そう頷くルーシィの右掌には、光を浴びて力強く輝く獅子宮の鍵が残されていた。
後書き
こんにちは、緋色の空です。
次回からは楽園の塔編!この話でジェラール大嫌いになるのに、ニルヴァーナ編で逮捕される時は逮捕されないでほしいと考える私・・・。
でも、昔の友達と戦うってどんな気持ちなんでしょうね・・・いくら相手が闇に堕ちていても、友達と戦うのって辛そうだなぁ・・・。
感想・批評、お待ちしてます。
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