ドラクエⅤ・ドーラちゃんの外伝
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キラーパンサーに転生
6ドーラちゃんも同じだった
子供のドーラちゃんが、大人のドーラちゃんを連れて、おうちに帰って。
なんだかおかしな……ていうか、残念な……?
……うん、そうだ、残念だ。
いい人なのは間違いないけど、あんなキレイな人は、できればあんな風ではあってほしくないっていう。
そんな残念な人であったはずの大人のドーラちゃんが、なんだか普通にステキな人みたいな顔をして、サンチョさんにお話をして、歓迎されていて。
……そっか、大人のドーラちゃんも子供のドーラちゃんも、こんな感じなんだ。
どっちにしても優しいいい人なのは間違いないけど、残念なところを人には見せないようにしてるんだ。
理想的な可愛いドーラちゃんとかステキなドーラさんを、人前では演じてるんだ。
……でもそんな残念なところも、それを上手く隠してごまかせちゃうところも可愛くてステキだと思ってしまうあたしは、もうダメかもしれません。
だって、ドーラちゃん可愛いんだもん!
優しいんだもん!
大好きなんだもん!!
……でも、そういう演技と、子供のドーラちゃんが色々わかってそうなのは、別のことだよね。
うん、気合いを入れて、しっかりお話を聞いておこう!
聞き逃したからって、あたしから質問はできないからね!
気合いを入れてお話をちゃんと聞いて、わかったこと。
ドーラちゃんも、あたしとおんなじだった。
前世の記憶がある人だった。
そっか、だからか。
前世のあたしは高校生だったけど、ドーラちゃんは大人だったから。
ドーラちゃんのほうが、本当にずっとお姉さんだったんだ。
あたしは、この世界でひとりぼっちだったのが、ドーラちゃんと会えただけでひとりぼっちじゃなくなってたけど。
そういう意味でも、ひとりぼっちなんかじゃなかったんだ。
ドーラちゃんは、ドーラちゃんのパパを助けたくて、大人のドーラちゃんとお話をしようとしてたこと。
だけど、大人のドーラちゃんが子供だったときに、同じように大人のドーラちゃんにお話を聞いてたけど。
やっぱり助けられなくて、どうしても死んでしまうらしいこと。
……そうだ、なんで忘れてたんだろう。
ドーラちゃんのパパは、もうすぐ死んじゃうんだった。
あたしが、ドーラちゃんと少しお別れするだけじゃなくて。
ドーラちゃんのパパとは、本当に、永遠に、お別れするっていう、そういうお話だった。
……ベビーパンサーのあたしが、あたしだけが知ってても、思い出してても。
それはきっと絶対に、助けられなかっただろうけど。
ドーラちゃんも知ってるのに、それでも助けられずに、やっぱり死んでしまうだなんて。
目の前で死んでしまうってわかってて、なにもできないだなんて、ドーラちゃんはどんなに辛いだろう。
あたしも知ってるのに、なにもしてあげられないなんて。
あたしは、ドーラちゃんを、助けてあげたいのに。
ドーラちゃんのパパが死んでしまうのも、ドーラちゃんがドレイにされるのも。
なにもできずに、見ているしかできないだなんて。
……すごく悲しい気持ちになったけど、落ち込んでる場合じゃない。
辛いのは、ドーラちゃんなんだから。
本当になにもできないかなんて、まだわからないんだから。
大人のドーラちゃんも子供のドーラちゃんも、まだ諦めてないんだから。
ドーラちゃんのパパが死んでしまうことは決まってても、それ以外は変わることがあるっていうんなら。
あたしにだって、できることがきっとある。
あたしはあたしのできることで、きっとドーラちゃんを助けてあげる。
本当はあたしも同じだって、ドーラちゃんにお話ししたいけど。
それはできなくても、あたしだけがわかってても、あたしはきっとドーラちゃんを助けるから。
だから、ドーラちゃん。
一人で頑張ろうとしないで。
あたしが一緒にいるから、あたしは一緒にいるから。
あたしもドーラちゃんも、この世界にひとりぼっちなんかじゃないんだから。
真面目なお話を聞き終わって決意を固め直して、そのあとの楽しいお話を聞いてわかったこと。
……イケメン美女って、そういうのかー。
そっかー、ドーラちゃん、モテたいんだー。
……そんなおかしなことしなくても、可愛いんだから普通にモテると思うけど。
なんか楽しそうだから、まあいっか。
キレイで可愛くてカッコいいドーラちゃんを見られるなら、あたしも嬉しいしね!
……ヘンリーくんとは、結婚したくないんだー。
コリンズくんが、イヤなのかー。
確かに、あたしもああいうイタズラ好きな男の子はあんまり好きじゃないっていうか、あたしをいじめたバカな男の子たちを思い出すからかなり嫌いだけど!
でもこんなに可愛くて優しいドーラちゃんに会う前からフラれてるなんて、ヘンリーくんかわいそう。
ゲーム通りなら、ヘンリーくん本人は十年後にはいい人になってるのに。
十年もドーラちゃんと一緒にいたら、絶対に好きになっちゃうよね……。
ドーラちゃんはマリアさんじゃないんだから、ヘンリーくんと結婚しても、コリンズくんが生まれるとも限らないと思うけど。
でもドーラちゃんは勇者のお母さんになるんだろうから、やっぱりヘンリーくんじゃダメなのかな?
それにヘンリーくんにだって、マリアさんがいるんだし。
勇者を生むために結婚相手を決めるとか、ゲーム通りの相手を選ばないといけないとかいうのも、なんだかおかしい気がするけど。
でもドーラちゃんが誰と結婚してもあたしはずっと一緒にいるつもりだし、ドーラちゃんが選んだ人なら、あたしはなんでもいいや!
そんなお話も終わって、大人のドーラちゃんが帰るときになって。
大人のドーラちゃんが子供のドーラちゃんを抱き締めて、またお話ししてます。
……中身は大人でも、体は子供か。
心は体に引っ張られるっていうのは、あたしにもよくわかる。
人間だった記憶があっても、人間だったときとは明らかに違うのがわかるもん。
そっか、前世で大人だった今のドーラちゃんも、やっぱり子供なんだ。
うん、甘えるばっかりじゃなくて、やっぱりあたしが助けてあげなくちゃ!
いかにも忘れてたみたいにゴールドオーブを交換して、悲しそうだった子供のドーラちゃんを呆れさせて帰っていった大人のドーラちゃんは、ビアンカちゃんとお別れしたときの子供のドーラちゃんみたいで。
やっぱりドーラちゃんは、ドーラちゃんなんだなあ。
ドーラちゃんのことをよくわかってなかったときも、よくわかった今も、大人になっても。
変わることがあっても変わらない、あたしが大好きになったドーラちゃんのままなんだ。
未来でまた会おうねって、あたしに言ってくれた。
あたしが知ってることを、知ってるのかわからないけど。
賢いあたしなら、お別れしたあとに、そう言われたことを思い出すってわかってるだろうから。
あたしをちゃんと迎えにきてくれて、また会えるんだって、教えていってくれた、優しいドーラちゃん。
うん、また会おうね、ドーラちゃん。
同じだけど同じじゃないから、あたしがまた会うのは、また少し違うドーラちゃんかもしれないけど。
それでもドーラちゃんは、きっとドーラちゃんだから。
少しの間はなればなれになって寂しくても、また会えるなら、あたしはきっと頑張れる。
だから絶対に、また会おうね!
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