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銀河親爺伝説

作者:azuraiiru
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第五話 誓い




■  帝国暦486年 2月 3日  ティアマト 総旗艦ヴィルヘルミナ  ラインハルト・フォン・ミューゼル



「ミューゼル中将、卿の思うところは如何に?」
宇宙艦隊司令長官ミュッケンベルガー元帥が俺に問いかけると作戦会議の参加者達の視線が俺に刺さった。そのほとんどが敵意と嘲笑に溢れたものだ。皆、俺の存在を快くは思っていない。

茶番だな、と思った。大体俺の意見を聞くくらいなら、それだけ重視しているなら今回の戦いで俺を後方に置いたりはしない筈だ。何を考えているのかは分からんがまともに答えるのは控えた方が良いだろう。
「意見と申されましても、特に有りません。元帥閣下の御遠謀は私ごとき弱輩者の考え及ぶところではございません」

俺が精一杯礼節を守って答えるとミュッケンベルガーは満足そうに頷いた。そして会議の参集者を見渡す。
「では、他に意見も無い様だし戦勝の前祝いとしてシャンペンをあけ、陛下の栄光と帝国の隆盛を卿らとともに祈る事としよう」
勝つための努力が祈る事か……。

ミュッケンベルガーの言葉に拍手と歓声が上がった。シャンペンが用意され皆がグラスを高く掲げる。
「皇帝陛下のために……」
ミュッケンベルガーが重々しく宣言すると皆が和した。
「皇帝陛下のために……」
やはり茶番だ……。

旗艦タンホイザーに戻ろうとキルヒアイスと総旗艦ヴィルヘルミナの廊下を歩いていると前を歩く爺さんの姿が見えた。此処で爺さんと呼びかけるのは拙いな。
「リュッケルト中将」
俺が名を呼ぶと爺さんが足を止めて俺を見た。

「なんだ、お前らか。相変わらず二人だけか」
「俺とキルヒアイスに声をかけて来る奴なんていないよ、爺さんを除けばな。爺さんも一人じゃないか」
俺が言い返すと爺さんがニヤッと笑った。
「話しの合わない連中とつるんでもしょうがねえだろう、違うか?」
キルヒアイスと顔を見合わせ、苦笑した。爺さんは相変わらずだ。

「爺さんも俺達も嫌われているらしいな、一緒に後方で待機組だ」
「一緒にするな、俺はお前らほど嫌われちゃいねえよ。ただ相手にされてねえだけだ」
思わず噴き出してしまった。キルヒアイスも咳こんでいる。爺さんは“笑うな。こいつはえらい違いだぜ”と言ったが爺さん自身が笑っていた。

「どっちが酷いのか判断が付け辛いな」
「そうかな?」
「そうだとも」
「どっちもどっちか。まあお前は後ろに回されて不満かもしれねえが訳も分からずに突っ込めと言われるよりは遥かにましだろう」

キルヒアイスと顔を見合わせた。爺さんは妙に鋭い、勘が働く。
「それはそうだけど……、爺さんは何か気がかりな事でも有るのかな?」
「ふむ、……上は大分お前の事を気にしてるぞ、わざわざ最後にお前に質問したからな。普通なら有り得ん事だ」
「……」
爺さんもあれはおかしいと思ったようだ。

「イゼルローンではちと、目立ち過ぎたな。メルカッツ提督ほどではないがミュッケンベルガー元帥に目障りな奴と思われたのかもしれん」
「しかし、あのままでは損害が大きくなるだけだった」
俺が抗議すると爺さんも頷いた。

「その通りだがな、だからこそ面白くない、そう思った可能性は有るさ。お前みたいな小僧に助けられて元帥が有難がると思うか?」
「……」
それは分からないでもないが、小僧は無いだろう。

「元帥閣下はかなり焦っている様だ。前に話したことを覚えているだろう、どうやら図星の様だぜ」
「……」
前に話した事か……、爺さんの言う通りかもしれない……。思わずキルヒアイスと顔を見合わせた。

前回の第六次イゼルローン要塞攻防戦の武勲により俺と爺さんは中将に昇進した。俺は一万隻の艦隊を率いる事になり満足しているが爺さんにとっては聊か不本意な昇進になったと言って良い。先ず後方への配置転換願いは却下された。そして爺さんの率いる艦隊は五千隻、俺の半分でしかない。正規の軍事教育を受けていない所為で兵力を少なくされたのだ。

だがそれ以上に爺さんにとっては不本意な事が有る。爺さんの艦隊はミュッケンベルガーの直属部隊という事になった。分艦隊司令官では無い、俺のように独立した艦隊司令官でもない、丁度その中間の存在だ。極めて不自然な存在だ、理由としては独立した艦隊司令官として扱うには不安が有るからとなっている。ここでも兵卒上がりだという事を理由にされた。能力を信用できないという事らしい。

馬鹿げている、爺さんの実力は確かなものだ。その事はイゼルローン要塞攻防戦で分かったはずだ。少なくとも訳の分からない混戦状態を作り出したミュッケンベルガーよりもずっと上だろう。それなのに能力を信用できない等、一体何を考えているのか……。

もっとも爺さんの見方はちょっと違う。爺さんは能力云々は建前で内実はミュッケンベルガーの意志が強く働いていると見ている。前回のイゼルローン、前々回のヴァンフリート、いずれもミュッケンベルガーにとっては勝ったとはいえ不本意な結果だった。ミュッケンベルガーの司令長官としての力量に疑問符を持つ人間も多いだろうというのだ。

“ミューゼル、イゼルローンでお前さんがやった反乱軍の後方に出る作戦だが本当ならミュッケンベルガー元帥はお前さんに許可を出すんじゃなくて自分の息のかかった部下に遣らせたかったのかもしれねえよ。自分が混戦状態を打破した、そういう形にしたかったのさ。そうすれば誰も元帥の力量に不満は持たねえ”
“じゃあ爺さん、何故元帥はそれを遣らなかったんだ?”

“遣らなかったんじゃなくて出来なかったとは考えられねえか? あの作戦は危険が大きかった。反乱軍に叩き潰されるかもしれねえしトール・ハンマーの巻き添えを喰うかもしれねえ、死ぬ確率は高かった。お前さんは出来たが他の奴なら出来たかどうか……、俺なら御免だな”
“ミュッケンベルガー元帥は自分の部下に命じる事が出来なかった、そういう事か……”

“その通りだ。或いは遣らせようとして部下に無理だと反対された可能性も有る。だからミュッケンベルガー元帥は俺を直属にしたのさ。無茶な命令で潰しても惜しくねえ俺をな。おまけに潰してもどっからも苦情は出ねえ、おあつらえ向きだよ”
“……”

“まあ考えすぎかもしれねえよ。しかしミュッケンベルガー元帥の立場は盤石とは言えねえ事は事実だ。メルカッツ提督の方が司令長官には相応しいなんて声も出てるし焦っているとも考えられる。無茶をしなけりゃ良いんだが……、首筋の寒い話だぜ”

俺もキルヒアイスも爺さんの考えを否定する事は出来なかった。イゼルローンではメルカッツ大将も参戦していた。俺の後方攪乱が上手く行ったのもメルカッツ大将が反乱軍を上手くあしらってくれた事が一因としてある、本来なら昇進してもいい。しかし、大将のまま据え置かれている。ミュッケンベルガーが故意に彼の働きを過小評価した可能性は否定できない。

そして今回の一件、やはり爺さんの考えが当たっているのかもしれない。ミュッケンベルガーは自分の地位を守るのに汲汲としているように見える……。
「俺に武勲を立てさせたくないと思っているという事か……」
「まあそこまで露骨ではないかもな。ちょっとぐらい武勲を上げたからといって良い気になるな、お前なんかいなくても勝てる、黙って後ろで見ていろ、そんなところかもしれん」

馬鹿げている、そう思った。俺と爺さんの戦力だけで一万五千隻になる。それを遊兵化させるとは……。
「そんな不満そうな顔をするな。見方を変えれば俺達は予備だ、出番は有るかもしれんさ」
「まあそうだけど、上に使う気が無いんじゃ……」

俺が呟くと爺さんが苦笑を漏らした。
「始まる前から悲観してどうする、嘆くのは終わってからでいい。使う気は無かったが使わずに負けるよりはまし、予備を使うってのは大体がそういうもんだろう」
「まあ」
爺さんの言う通りだな。負けるよりはましか……。慰めかな、あるいはミュッケンベルガーが苦戦すると見ているのか、確かに未だ戦闘は始まっていない、くよくよするのは早いか……。



■  帝国暦486年 2月 3日  ティアマト 旗艦タンホイザー  ラインハルト・フォン・ミューゼル



目の前のスクリーンには帝国軍が混乱する様子が映っていた。反乱軍の一部隊が戦場を無秩序に動いて帝国軍を攻撃しているのだ。そして帝国軍はそれに対応できずに徒に混乱している……。馬鹿げている、後退して反乱軍の疲労を待てばよいのだ。

多分、退けないのだ。俺を後ろに置いた所為でミュッケンベルガーは部隊を下げる事が出来ずにいる。ミュッケンベルガーの弱点だな、勝ちに徹すればよいのに何処かで他人の目を気にしている。その事が彼の用兵に冷徹さを欠かせている……。

哀れだな、そう思った。前線で混乱している連中の中には後退したがっている者もいるはずだ。“訳も分からずに突っ込めと言われるよりは遥かにましだろう” 全くだ、爺さん、あんたの言う通りだよ。俺達は後方に置かれて幸いだ。どうやら最終局面は俺と爺さんが反乱軍を攻撃して逆転勝利という事になるだろう。

逆だったな、ミュッケンベルガーは俺と爺さんを前線に出し自分達の部隊を後方に温存した方が良かった。そうなれば多分最終局面では俺と爺さんをミュッケンベルガーが救う形になっただろう。周囲の人間も流石は司令長官と感嘆したかもしれない。

「敵が接近してきます。対処しないのですか、司令官」
参謀長のノルデン少将だった。この男がまるで頼りにならない、軍事的にも人間的にもだ。参謀としては無能、おまけにこちらに敵意を持ち隠そうとしない。何でこんな馬鹿が参謀長なのか……。まじまじとノルデンを見ているとキルヒアイスが話しかけてきた。

「閣下、今少し艦列を前方に出して応戦いたしますか?」
「……いや、まだ早い。さらに後退せよ。キルヒアイス少佐、焦る必要は無い。今一歩で敵の攻勢は限界に達する。攻勢をかけるのはその瞬間だ」
「はい、閣下。出過ぎた事を申しました」

済まないな、キルヒアイス。俺がこの馬鹿を怒鳴り付けないように気を遣ってくれる。それにしてもこの馬鹿、反乱軍の動きに気を取られてキルヒアイスの気遣いをまるで分っていない。スクリーンを怯えた様な表情で見ている。味方が欲しいな、俺を助けてくれる参謀、そして実戦指揮官……。爺さんの艦隊を見た、艦隊は無理せずに後退している。爺さんはミュッケンベルガーの指揮の拙さに呆れているだろう。

爺さんは俺に協力してくれるだろうか? 戦場には飽きた様な事を言っていた。だがあれは報われないからではないだろうか、俺なら爺さんを差別したりしない。士官学校を卒業したからといって実戦で役に立つとは限らない。軍事教育など受けなくても用兵上手は居るのだ。爺さんと目の前の参謀長を見ればそれが良く分かる。

「何をしているのか、一体!」
スクリーンに映る惨状に思わず叫び声が出た。馬鹿げている、何時まで反乱軍のあの馬鹿げた艦隊運動に付き合っているのだ! 帝国軍はまるで野獣に追い回される臆病な家畜のような醜態をさらしている。だが反乱軍のあの無秩序な運動もそろそろ終幕の筈だ。

「キルヒアイス、攻撃は短距離砲戦で行おうと思う」
「その方が宜しいかと思います」
「全艦隊に準備を命じてくれ」
俺とキルヒアイスが話をしているとノルデンが落ち着きを欠いた声で割り込んできた。

「司令官閣下、もはや大勢は決したように思われます。損害を被らぬうちに退却なさるべきでしょう」
馬鹿か! お前は! 今まで何を聞いていた。大体無傷の予備が一万五千隻も有るのだ、その意味が分かっていないのか?
「敵の攻勢は終末点に近付いている。無限の運動など有り得ぬ。終末点に達したその瞬間に敵中枢に火力を集中すれば一撃で潰え去る。何故逃げねばならぬ」

「それは机上の御思案、そのような物に囚われずに後退なさい」
「黙れ! 臆病者が! 味方の敗北を口にするすら許し難くあるのに司令官の指揮権にまで口をはさむか!」
俺がノルデンを怒鳴り付けるとキルヒアイスが“反乱軍の動きが止まりました”と声を上げた。準備は出来ているというようにキルヒアイスが俺に頷く。

「全艦に命令、主砲斉射三連! 撃て!」
俺が命じた時、爺さんの艦隊が主砲斉射を行うのが見えた。また先を越された! この馬鹿参謀長の所為だ、やはり味方が必要だ、俺を助けてくれる有能な味方が……。呆けたように戦場を見ているノルデンを睨み据えながら思った……。



■  帝国暦486年 3月 18日  オーディン  ジークフリード・キルヒアイス



第三次ティアマト会戦の功績によりラインハルト様は大将に昇進した。そして驚いたことにリュッケルト中将も大将に昇進した。オーディンでは皆が驚いている。兵卒上がりの将官が大将に昇進するのは初めての事だ。もっとも武勲はそれに相応しいものだ、第三次ティアマト会戦はリュッケルト大将とラインハルト様の主砲斉射で勝つ事が出来たのだから。

“軍上層部もようやく爺さんの実力に気付いたらしい”、ラインハルト様はリュッケルト大将の昇進を自分が昇進した事以上に喜んだ。リュッケルト大将に直接御祝いの言葉を言いたいと大将の自宅を訪ねたのだが……。
「驚いたか?」
「ああ、ちょっと」
ラインハルト様の答えに同感だ、私も驚いた。応接室に通されたが未だに驚きが醒めない。娘のような奥さんと孫のような娘さんが迎えてくれたのだ。

「女房とは十年前に出会って結婚した。俺が五十で相手は二十六の時だ。俺は初婚だが女房は一度結婚していてな、戦争未亡人だった」
「そうか」
「娘は未だ八歳だ。おかげで俺の家は親子というより爺と娘と孫の三世代家族みたいになっちまってる」
「なるほど」

リュッケルト大将が”困ったもんだよな”と言って片目を瞑った。
「だから後方に移りたいと?」
「まあそんなところだ、あいつらを置いて死にたくないと思ったのさ」
「でも今回の昇進を見れば上層部は爺さんの実力を認めたんじゃないかな」

ラインハルト様の言葉にリュッケルト大将が“フム”と声を出した。
「そうじゃねえな、上の連中は俺の実力を認めたわけじゃねえ。他に狙いが有る、俺はそう思っている」
「他に狙い?」
「お前も大将に昇進した、だから気付いていないようだな」

ラインハルト様が困惑した様な表情で私を見た。私にもよく分からない、一体何が有るのだろう。
「この前の戦いではほんの少しだが俺の攻撃が早かった。だが俺の艦隊は兵力が少ない、勝敗を決めたのはお前の艦隊の一撃だ。あれで勝負は決まった、俺の見るところ武勲第一位はお前だろう」

ラインハルト様がまた困ったような表情を見せた。あの戦いはラインハルト様にとっては不本意な戦いだった。ノルデン少将との遣り取りでほんの少し攻撃が遅れた、そういう思いが有る。
「否定できるか?」
「……まあそうかもしれない」

「上はそれを認めたくないのさ。だから俺を大将に昇進させたんだと思っている」
「閣下、それはどういう意味でしょう?」
私が問い掛けるとリュッケルト大将がラインハルト様と私を見て”分からねえか”と呟いた。

「いいか、同じ大将昇進でも俺とミューゼルじゃ意味が違うんだ。本来なら俺は昇進できない筈だ、兵卒上がりだからな。それが昇進した、つまり上の連中は武勲第一位はお前じゃなく俺だって言ってるのさ。それもかなり差が有ると言っている。俺の力で帝国軍は勝ったと言ってるんだ」

ラインハルト様の表情が強張った。
「ミュッケンベルガー元帥は自分の直属部隊が武勲を上げた事にしたかった、俺の武勲を小さいものにしたかった、そういう事か……」
「そういう事だ。ほんの少し俺の攻撃が早かったからな、お前は俺に続いただけ、大した事は無い、そういう事にしたいんだろう」
「……」

「おそらく、皆が俺の噂をするはずだ。お前の事は殆ど話題にもならんだろうな。”ミューゼル? そう言えば昇進してたな”、そんな感じだ」
「姑息な!」
ラインハルト様が吐き捨てた。身体が小刻みに震えている。そんなラインハルト様をみてリュッケルト大将が首を横に振った。

「怒ってる場合じゃねえぞ、ミューゼル。そんな暇はねえ」
「どういう意味だ?」
「今回の昇進の一件、ミュッケンベルガーだけじゃねえ、エーレンベルク軍務尚書も絡んでいる。或いはシュタインホフ統帥本部総長も絡んでいるかもしれん」

ラインハルト様と顔を見合わせた。確かにそうだ、人事は軍務尚書の管轄、リュッケルト大将を昇進させるにはエーレンベルク元帥の同意が要る。武勲を上げたからでは無くラインハルト様を抑えるために昇進させようとミュッケンベルガー元帥は持ちかけたのかもしれない。

「今回の勝利でお前は目障りな存在だと思われているんだ、もっと露骨に言えば自分達の地位を脅かす危険な存在だと思われている。メルカッツ大将を見れば分かるだろう?」
「……ああ」
「こんなのは序の口だぜ。これからは露骨にお前を潰しに来るだろう。それに負ければお前はお終いだ」
「……」
ラインハルト様が強く唇をかんだ。

「味方を作れ、お前を助ける有能な味方を」
リュッケルト大将の言葉にラインハルト様が大将に視線を向けた。でも大将は首を横に振った。味方にはならない?
「馬鹿、俺じゃねえ、もっと他の奴だ。士官学校、幼年学校出の出来る奴。そいつをお前の味方にするんだ。そうなれば周囲のお前を見る目も変わってくるはずだ」
「俺を見る目……」

ラインハルト様が呟くとリュッケルト大将が頷いた。
「そうだ、あの男が味方に付いたという事はミューゼルってのは姉のおかげで出世したわけじゃないらしい、そう周囲に思わせるんだ。そういうのも力の一つなんだ。そう思われるようになればお前の能力も自然と周囲に受け入れられるし味方になる奴も増えてくる」
なるほど、私にも分かるような気がする、影響力を付けろという事だろう。確かにメルカッツ提督は実力は有るが影響力はあまり感じられない。

「今のお前は未だ生意気な小僧としか思われていない。いや、上の方はそういう風に持って行こうとしている。お前の立場を強くしたくねえんだ。こいつは戦争だぜ、ミューゼル。勝てば上に行ける、負ければ良い様に使われて御終いだ、メルカッツ大将のようにな」
ラインハルト様がギリッと唇をかんだ。

「そうはさせない、必ず勝つさ、そして上に行く。爺さん、その時には爺さんにも俺の味方になってもらう」
リュッケルト大将が笑い出した。
「味方? 部下になってやるよ、それが出来たらな」
「必ずだぞ、忘れるなよ」
「ああ、約束だ」

ラインハルト様が私を見て頷いた。こんなところで負けるわけにはいかない、必ず勝つ、ラインハルト様はそう言っている。その通りだ、負けるわけにはいかない、私達は必ず勝つ!

 
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