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久遠の神話

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第五十七話 北の国からその十一

「そしてキリスト教は一面でしかありません」
「欧州の」
「そうです。二千年程のです」72
 一面ではないというのだ。
「ほんの」
「一面でしたか」
「人の心は意識だけでなく」
 聡美はさらに言う。
「無意識もありますね」
「はい」
「意識より無意識の方が深く広いのです」
「そしてその中にですか」
「キリスト教以前の世界がです」
「あるのですね」
「欧州はそうなのです」
 人だけでなく欧州の世界全体がというのだ。
「無意識の中にです」
「様々な宗教があり」
「私達もいるのです」
 聡美はまた失言したが二人はここでも気付かなかった。
 そしてそのまま問うたのである。
「日本と同じです」
「日本とですか」
「この国は面白いですね。あらゆる神々が集っています」
 ここで聡美が言うのは日本の神々だけではなかった。
「あらゆる国の」
「キリスト教の神もですね」
「はい」
 無論この神もだというのだ。
「います」
「確かに。この国はです」 
 大石も聡美に応じて言う。
「様々な宗教が存在して共存しています」
「こうした国は少ないです。ですが」
「世界ではですね」
「そうはいかないです、その剣士の方もです」
 これから会うであろう彼もだというのだ。
「カトリックではないので」
「この教会に入ることはですか」
「あまり好まれません」
「それではです」
 ここまで聞いて確かな声で言った大石だった。
「私から出ます」
「そうして会われますか」
「はい」
 謙虚な物腰で答える。
「そうさせて頂きます」
「それではです」 
 聡美も大石のその言葉を受けた、そのうえでだった。
 今度は高代に顔を向けてそして言ったのである。
「貴方はどうされますか」
「私は宗教は仏教ですが」
「そうなのですか」
「浄土宗です」
 これが彼の宗教、宗派だった。
「キリスト教に特に思うことはありません」
「そうでしたか」
「ですから今も特に思うことはありません」
「外で会われることにも」
「抵抗も拒否もありません」
 そのどちらもだというのだ、高代は今は聡美に対して淡々とした調子で何も思うことなく告げていくのだった。
「では」
「はい、それでは」
 聡美は高代の話も受けた、そうしてだった。
 二人は席を立ち聡美と共に教会の礼拝堂を出た、教会の前に出ると。
 そこに大柄な、二メートルを悠々と越える巨体の金髪の青年がいた、高い鼻は大きく赤い。
 顔立ちは素朴で大人しげな青い目である。逞しい身体を厚い服で包んでいる。 
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