学園バラライカ
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5.誓い
私は一人でした、最初は一人でした
そして今のお父さんとお母さんが現れました
退屈な日々が楽しくなりました
友達が少ないわけでもなくて多いわけでもなくて
喧嘩もなくて泣く事もなくて
いつも笑う事ばかりで、それは学園に入っても同じで
叉慧先輩が話しかけてくれた日
生徒会に入れてもらった日
月子さんに出会った日
新しい事ばかりで私の歩く道はまるで色んな色の花が
咲いているような道で
セシリアは私に、セシリアの力の一部をくれました
セシリアの桃色の瞳と同じ色の欠片をくれました
セシリアはあの屋敷に術で縛られているらしく
屋敷からは出られないのです
だからセシリアの欠片を術に変えて私の体内に入れる事で
セシリアは私と共に外に出れるようになるみたいです
セシリアの一部は私に憑依したと言う感じらしいです
つまり私は常にセシリアと一緒です
あのイヴァレータ国の王族、元女王と同化するのは少し
恥ずかしくて、でもセシリアはとても良い人で
落ち着くような、安心するような、そんな存在で
「セシリアが喋っても私以外には聞こえないと言う事ね」
「ええそうよ、ふふふ、薫、どうして嬉しそうなの?」
「えっと、その、なんというか、」
「狗神家には今日来客が来ているのかしら」
「えっと、会議が今日はあって、私も真理子さんと一緒に来たんです」
「ええ、とっても懐かしい、ルーナもいるのね、ヴィチカもいるわ」
「ここからでもわかるんですか?」
首をかしげて狗神家本家を見る
「魔力の数値でわかるわ、そうねでも、叉慧君とやらは・・・、
いいえ・・・、普通の子ね、とても良い子なんでしょうね」
「はいっ!叉慧先輩はとても良い人ですよ」
それからはセシリアは黙ってしまった
狗神家の屋敷の中では喋らない方が良いだろうと言う
セシリアからの提案だった
確かに他人からは独り言をしているようにしか
見られないだろうし、その方が私も助かるかもしれない
「真理子さん?会議は終わりましたか?」
「ええ、なんとかまとまったわ、叉慧の件についても
ついでに話し合いが出来たの」
「どうでしたか?」
「現在の状況だと暴走は近い、暴走が遅れたとしても
攻撃の制御など何処か不具合が必ず出てくる
今日のテストですら、力の制御が出来なくなってる所が
多々あったりもしたわ・・・、」
「そうですか・・・、」
つまりそれは叉慧先輩が壊れ始めていると言う事
終わりのはじまりが近づいて来ていると言う事
それは大切な物が無くなってしまうと言う事
「薫」
セシリアの声が聞こえてビクリと肩を震わせる
「私は貴方の味方よ、貴方の体にいる限り貴方の願いは私の願い
ねえ、薫、もう一度願いを言って頂戴」
「わ、私は・・・、」
《薫、願いを、貴方が本当に望む願いを》
「叉慧先輩を助けたいんです!」
《ええ、しっかり聴いたわ》
そう泣きながら叫ぶ
真理子さんも驚いたように目を見開くが
フッと微笑み私の頭を撫でた
「私も私でがんばるわ、薫、貴方は泣かなくていいからね」
「は、はい・・・、」
「ああ、そうだ薫、よく聞きなさい」
「はい」
「夜の10時以降は自分の部屋から出ちゃ駄目よ
トイレの場合は私の部屋の近くにあるトイレを使いなさい、いいわね」
「は、はい、わかりました・・・・、」
そう返事をすると真理子さんは笑って「宜しい」と言った
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