美しい毒
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第一章
第一章
美しい毒
ある資産家の家でだ。社長夫人が急死した。
死因は病死だとされた。しかしだ。
この急死について不審に思った者、その夫人の愛娘がだ。このことについて調べる為にだ。二人の探偵を雇った。その二人はというと。
京都にいた二人組の探偵達だ。一人は黒髪を短く刈り上の方だけを伸ばした精悍な顔立ちの確かな眉を持った青年でもう一人は茶色の髪を左右に分けた涼しげな面長な顔の、もう一人の青年より知的で年長の若者だ。この二人がだ。
今和歌山白浜のある喫茶店でだ。その娘と話をしていた。
黒髪の青年は黒いジャケットに白いシャツ、それに黒のジーンズというラフな格好である。もう一人はジャーマングレーのトレンチコートにダークグリーンのスーツ。その彼等がだ。白いワンピースの麗しい顔の少女がだ。
暗い顔でだ。こう言ったのである。
「本郷忠さんと役清明さんですね」
「はい、そうです」
「その通りです」
二人はその通りだとだ。その少女に答えた。
そして二人からだ。こう少女に尋ねた。
「宮里早苗さんですね」
「宮里美由紀さんの御息女の」
「はい、そうです」
その通りだとだ。少女は答えた。黒い髪をストレートで伸ばした楚々とした顔立ちをしている。ようやく高校を卒業した頃だろうか。
その少女がだ。こう名乗ったのである。
「それでなのですが」
「お母さんの美由紀さんのことですね」
「そのことで」
「はい、母は病死と伝えられています」
このことをだ。早苗は二人に話した。
「ですがそれは」
「信じられませんか」
「とても」
「はい、とても」
だからだとだ。早苗は思い詰めた顔で二人に話した。
「母は死ぬ直前までとても元気でした。ですから」
「それでなのですね」
「我々にお母さんの調査を」
「御願いします」
早苗はまた二人に話した。
「そうして真相を明らかにして下さい」
「わかりました」
役がだ。早苗に答えた。まずは彼だった。
「ではすぐに調査に取り掛からせてもらいます」
「有り難うございます」
「私達の仕事はこれですから」
そのだ。事件の真相の調査、そして解明だというのだ。
「そして時として」
「時として?」
「いえ、何もありません」
裏の、こちらの方が遥かに報酬がいい異形の者達との戦いのことについてはだ。役も、当然本郷も言わなかった。そのうえでだった。
本郷もだ。彼は明るい声で早苗に話した。
「宮里さんでいいですか?」
「はい」
苗字で呼ぶことをだ。早苗は許した。
「それでどうか」
「わかりました。じゃあ宮里さん」
本郷はあらためて早苗をこう呼びだ。そのうえで言うのだった。
「今回は俺達に全部任せて下さい」
「そうさせてもらいます」
二人は早苗に述べてだ。そのうえでだ。
事件の調査をはじめた。まずは事故現場である宮里家に入った。
その家は白い洋館だった。全てが白で統一されている。
家具も同じだ。しかし花だけはだ。
紅いものもあれば蒼もあり紫もある。その花を見て役が共にいる早苗に尋ねた。
「お母さんはお花が」
「はい、好きでした」
実際にそうだったとだ。早苗は役に答えた。
「特に紅い花が」
「紅がですか」
「薔薇をとりわけ」
「ああ、そういえば」
ここでだ。本郷は窓から見える庭を見た。白いカーテンが左右にあるその窓からだ。その緑の庭を見た。その庭には薔薇がある。
色は全て紅だ。その紅の薔薇を見て。本郷は話した。
「凄い咲き誇ってますよね」
「花は人の心を奇麗にする」
こうだ。早苗は呟く様にして述べた。
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