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Element Magic Trinity

作者:緋色の空
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てるてる坊主


「ジュビアは許さない!ルーシィを決して許さない!」
「あちっ!熱湯!?」
「てゆーか、何でルーシィにキレてるの!?」

エレメント4の1人『大海のジュビア』と対峙するグレイとルー。
・・・が、突然ジュビアがルーシィに対してキレはじめ、意味が解らない2人は戸惑う。

「シエラァ!」

ジュビアは全身を熱湯へ変え、2人に襲い掛かる。

「チッ!アイスメイ・・・」
「アリエス・・・」

グレイとルーは反撃しようとするが、2人の魔法が発動されるよりも早く、ジュビアの熱湯が襲い掛かってきた。

「速いっ!」
「俺の造形魔法が追いつかねぇだと!?」

グレイのウル仕込みの氷の造形魔法の造形スピードはかなりのものだ。
他の造形魔導士と比べてしまえばその速さは群を抜いている。
その造形魔法をも上回るスピードという事は、かなり速い事がそれだけで解る。

「ぬおっ!」
「わわっ!」

再び襲いかかってきた熱湯をグレイはギリギリで避け、ルーは一気に上昇する。

「時間をかせがねぇと」

そう言うが早いがグレイは入ってきた窓を破ってファントムギルド内に突入する。
当然敵を逃がさまいと熱湯へと姿を変えたジュビアが追う。
上昇したルーはグレイとジュビアを追って別の窓を割りギルド内に突入した。

「アイスメイク・・・(シールド)!」

花のように広がった盾が向かってくるジュビアの熱湯を受け止める。
が、その高温の熱湯で徐々にジュッ、ジュアッと音を立て、氷の盾が解け始めた。

「ゲ・・・マジかよ・・・」

グレイが驚いたように呟く。
もうその時には盾は原形を成していなかった。

「ジュビアのジェラシーは煮えたぎっているの!」
「何じゃそりゃ!」

ジュビアの意味不明な発言にツッコみを入れる。
が、そんなツッコみを入れている場合ではない。

「ぐぉああぁっ!」

その間にもグレイは熱湯を正面から喰らってしまう。

「熱・・・皮膚が焼けて・・・」

熱湯のあまりの高温でグレイは全身に火傷を負う。
そんなグレイに容赦なくジュビアの熱湯が向かっていく。

「僕の存在を忘れるなーーーー!バカーーーーーー!」

そこに緊張感を全く感じさせない声が響く。
と、同時に声の主はグレイを抱き抱えるように掴み、一気に上昇し、屋上へと舞い戻った。

「グレイ、重い。ティアの方が軽いよ」
「今んな事言ってる場合じゃねーだろ!つーか、アイツと俺は性別違ェからそりゃ重さも違ェだろうよ!」

ルーは「全く。僕を忘れるなんてひどいよ」と不機嫌そうに呟く。
すると、一気に上昇したグレイを追って、熱湯が屋上の一部を突き破って飛び出して来た。
それを見たグレイは自分を抱えたままのルーに指示を出す。

「ルー!俺をあの熱湯の真上に落とせ!」
「何言ってんの!?自滅しちゃうよ!?グレイはナツほどバカじゃないと思ってたけど、同じくらいバカだったの!?」
「いいから落とせ!」

この場にいないのにバカにされているナツはさておき、これ以上口論していても埒があかないと頭のネジが舞茸か何かにでもなっているであろうルーも悟ったらしい。
ティアと同じくらいのスピードでジュビアの真上で停止すると・・・。

「えい」

何の前触れもなく、グレイを落とした。

(落とせっつったのは俺だが、落とす時は合図くらいしろよ!?)

グレイは心の中でツッコみ、左手を熱湯に突っ込む。

「凍りつけェ!」

熱湯に突っ込んだ左手に魔力を集中させ、一気に熱湯を凍らせていく。
ピキピキ・・・と徐々に熱湯は凍っていき、予想もしていなかった事にジュビアは驚く。

「そ・・・そんな・・・ジュビアの熱湯が・・・凍りつくなんて・・・」
「へっ」

氷の中で驚愕するジュビアに得意げな表情を見せるグレイ。
そう、ここまではいいのだが・・・。

「しかも・・・」
「あ゛あ゛あ゛ーーーーー!」
「わぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」

あの熱湯はジュビアだった。
その熱湯を凍らせる為にはその熱湯の中に手を突っ込む。
つまり、熱湯であるジュビアに触れるという事になる。
という事は当然、凍らせる為に熱湯に手を突っ込んだグレイもジュビアに触れている訳であって・・・。

「うわーん!酷いよグレイ!それが目的だったのかー!僕ってば、何て事しちゃったんだろー!」
「違・・・!これは・・・!」

ルーがこんな反応をするのも仕方ない・・・のかもしれない。
なんと、グレイは氷の中にいるジュビアの胸を鷲掴みにしていたのだ。

(ジュビア恥ずかしい・・・いっそこのまま・・・あなたの氷の中で・・・)

慌ただしく騒ぐルーと必死に弁明するグレイ、そして頬を赤らめるジュビア。

「スマン!」

とりあえずグレイは氷を消し、ジュビアを解放する。

(氷から解放した!?なぜ!?優しすぎる!)

氷から解放してくれたグレイを涙を浮かべた目で見つめるジュビア。
・・・何故かその目はキラキラと煌めき、頬は赤く染まっている。

「し・・・仕切り直した!ルー!いくぞ!」
「無理だよ・・・僕はもうグレイを今までと同じ目では見れないかも・・・ぶつぶつぶつ・・・」
「だ、だから・・・!」
「なんてね。冗談だよ」
「・・・お前なァ」

こんな状況でも呑気に冗談を言うルーに対し、グレイは溜息をつく。
が、突然ジュビアが口を開いた。

「ダメよ・・・」
「!?」
「何が?」

立ち上がりながらそう言うジュビアに、グレイは驚き、ルーは首を傾げる。

「ジュビアにはあなたを傷つける事は出来ない」

煉獄砕破(アビスブレイク)の魔法陣は徐々に完成へ近づいていく。
が、不思議な事にその魔法陣のファントムギルド側・・・つまり、今グレイとルーがいる側には雨が降っているが、クロス達がいる妖精の尻尾(フェアリーテイル)のギルド側には全く雨が降っていないのだった。

「は?傷つけられねぇ・・・て、勝ち目はねぇって認めちまうのか?」
「あれ?あなた・・・ってグレイの方向いていったけど、僕は?」

ルーの言葉はスルーされた。

「ジュビアはルーシィより強い。ジュビアならあなたを守ってあげれる」
「守る?何で俺を」
「そ・・・それは、あの・・・」

ジュビアは頬を赤く染め、口ごもる。
すると、突然ルーが口を開いた。

「強いよ」
「え?」
「ルーシィだって強いよ。どんなに自分が不利な状況でも諦めないし、困ってる人がいるなら自分が傷つこうとその人を助ける。確かに力では君に及ばないかもしれないけど・・・」

そこで一旦区切り、真剣な目でジュビアを見つめた。

「ルーシィの強さは力なんかじゃない。力よりもっと大切なモノが強いんだ!」

それは、ルーシィが入って来た時から・・・ギルド所属・鉄の森(アイゼンヴァルト)事件・ガルナ島とほぼ全ての事に関わってきたルーだから言える事だった。
そんなルーシィの為だから、滅多に抜かない銃を抜き、助け、励まし、戦う。

「・・・」

珍しく真剣な顔つきのルーを仲間であるグレイでさえ驚いたような目で見る。
実をいうと、かつてのルーは『ティア以外の女の子には興味ないよ』とハッキリ言うほど、ティア以外の女に興味を示さないし関わろうともしなかった。
まぁエルザやミラと言ったギルドメンバーは別として、だ。
が、そんなルーが新人でまだよく知らないルーシィをとても気に入っている。
それだけでギルドを驚かせる事だったし、更にその少女の為に銃まで抜いたというではないか。
それを聞きつけたアルカがその日は豪勢なご馳走を作ったのだが・・・何故その日ご馳走だったかを当然ルーは知らない。

「・・・で、何でグレイを守るの?」
「は?」
「え?」

先ほどまでの真剣な顔つきはどこへやら。
ルーは一瞬にして普段の表情に戻り、首を傾げた。

「だってそうじゃん。ギルドでトップクラス、実はティアだって陰でその実力を評価してるほどの魔導士であるグレイを守る必要なんてなくない?」
「はぁ!?なんか今初耳すぎる情報言わなかったか!?」
「当たり前じゃん。これは僕しか知らないもん。でもね、ティアはナツとかグレイ、あとカナ辺りの実力は認めてるよ。ラクサスは認めてないけど」

その時グレイが「マジかよ」と言いたげな表情をしていたのは余談である。
更にルーは続ける。

「てかさー、そもそも僕達って敵同士じゃん?さっきの水流拘束(ウォーターロック)の時も思ったけど、どうしてグレイを倒そうとしないの?」
「そ、それは・・・その・・・」

再びジュビアは口ごもる。

「だ・・・だってジュビアは・・・あ、あなたの事が・・・す・・・す・・・」

ルーの言葉に言いよどむジュビア。

「てか雨強くなってねぇか?」
「確かにねー、ティアが喜びそう」
「は?何で」
「知らないの?ティアの魔法は雨の日に威力が上がるんだよ」
「ジュビアじれったい!」

言いたいのだが恥ずかしくて言えず、ジュビアはじれったそうに体をくねくねさせる。




「全く・・・うっとうしい雨だなぁ」



だがその言葉を聞いた瞬間・・・ジュビアの表情が一気に変わった。
頭の中でグレイの言葉がリピートされる。

(この人も・・・今までの人と同じ・・・)

そう思い、フルフルと小刻みに震える。

「同じなのねーーーーっ!」
「うお!?何だっ!?」
「あっ!もしかして・・・」

そして一気に体から湯気を噴き出す。
それを見たグレイは驚愕し、ルーは何かに気づいた。

「来るなら来やがれ!」
「相手になるよっ!」

2人は戦闘態勢を取る。

(ジュビア・・・もう恋なんていらないっ!)
「ぐぼぼぉっ!」
「うがっ!」

勢いよく襲い掛かってきた熱湯に飲み込まれるグレイとルー。

「また凍らせて・・・」

もう1度凍らせようと手をかざすが、凍らない。
凍るどころか、氷すら出てこないのだ。

「!さっきよりも高温なのか!?」
「風で熱気を飛ばしても・・・全然飛ばないよ!」
(いらないっ!)
「うわぁあっ!」
「わぁぁぁっ!」

そのまま2人は流される。
そんなジュビアの脳裏によみがえるのは、昔の光景。



『ジュビアちゃんは遠足休んでほしいよな』
『アイツいると、いつも雨降るし』

学校だろうか。
入り口に立つ幼いジュビアに気づかず、そんな会話をして笑い合う少年達。




(ジュビアは雨女・・・)

幼いジュビアは可愛らしいにっこり笑顔のてるてる坊主を作る。





『何でいつも雨なんだよ。君とは釣りにもキャンプにも行けないじゃないかっ!もう別れてくれないかな』

付き合っていた男に『雨女だから』を理由にフラれるジュビア。
ちなみにジュビアを振ったこの男、かつて火竜(サラマンダー)を名乗り悪事を働いていた、ナツとルーとルーシィが出会うきっかけになったとも言える、紅天(プロミネンス)のボラである。






「どうせジュビアはうっとうしい雨女!でもこんなジュビアを幽鬼の支配者(ファントムロード)は受け入れてくれた!ジュビアはエレメント4!ファントムの魔導士!」

ジュビアが叫ぶ。

「ぐあっ!」
「うわっ!」

何とか熱湯の中を抜け出す2人。
が、熱湯となったジュビアは容赦なくグレイとルーに襲い掛かる。

「シエラーーーーー!」
「負けられねぇんだよ!ファントムなんかによォ!」
「僕達には、負けられない理由があるんだァ!」

そう叫ぶとグレイは右手を熱湯に向けて突き出し、向かってくる熱湯を氷で防ぐ。
ルーはその後ろで即座に印を斬り、魔法陣を展開させる。

「ぬああああっ!」
「とりゃああっ!」

グレイが雄叫びを上げ、ルーが魔法陣に魔力を込める。
そして遂には降っている雨を凍らせ、空を覆っていた雨雲を晴らした。

「雨までも氷に・・・風で雨雲を晴らして・・・なんて魔力!?」

それを見て驚愕するジュビア。
そして・・・。




氷欠泉(アイスゲイザー)!」
大空翠緑迅(アリエスエメラ・バラム)!」



グレイは右手を床に当て、床から氷を間欠泉のように噴き出させる。
ルーは手を天に掲げ、上空から一気に風を吹き荒らした。

「ああああああああっ!」

熱湯ごと凍らされ、急激に熱気を奪われ、ジュビアは悲鳴を上げる。
氷が割れ風が止むと、ジュビアはその場に倒れた。

「ジュビアは・・・負けた!?」
「どーよ?熱は冷めたかい?」

グレイが呟く。
すると、ジュビアは倒れたまま空を見上げた。

「あれ・・・?」

そこにあったのは彼女が毎日のように見てきた、暗く厚い雲に覆われた雨空ではない。




「雨が・・・やんでる・・・」



そこに暗く厚い雲はなく、眩しい光を放つ青く透き通った綺麗な青空があった。

「お!やっと晴れたか」
「すっかりびしょびしょだよ」

グレイが濡れた髪を掻き揚げ空を見上げ、ルーは自分が着ていたブレザーを脱いで雑巾のように絞る。

(これが・・・青空・・・)

ジュビアは雨女。
その体質により、ずっと青空を見た事が無かった。
だが今、自分の目に映っているのは、いつか見てみたいと思っていた青空・・・。

(きれい・・・)

初めて見る青空の美しさに、ジュビアは目に涙を浮かべる。

「で・・・まだやんのかい?」

グレイがうっすら笑みを浮かべてジュビアにそう問いかける。
余談だが、ルーは必死にブレザーを絞っていた。




キャピン!きゅー・・・



そんなグレイを見てジュビアは目をハートにし、幸せそうに倒れたのだった。
その付近には、先ほどまで彼女の胸についていた、可愛らしいにっこり笑顔のてるてる坊主があった。





煉獄砕破(アビスブレイク)の発動まであと3分。

残るエレメント4はあと1人! 
 

 
後書き
こんにちは、緋色の空です。
あぁもう・・・ジュビア可愛いです。
私は大魔闘演武編のジュビアが大好きです!帽子に蝶の飾りを付けたあの格好です。

感想・批評、お待ちしてます。 
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