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管理局の問題児

作者:くま吉
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第14話 任務終了。

 
前書き
遅れてしまい申し訳ありません。

色々と忙しく、ちまちま書いていたら時間がかかってしまいました。
その為内容やキャラの口調等、おかしな点があったらお知らせください。 

 


「大丈夫リッくん!?」

「リク!大丈夫!?」

 剣崎シオンが消えてすぐ、なのはとフェイトがやってきた。二人が来たという事は、少なくとも空中にいたガジェットは殲滅し終えたのだろう。

「ああ。ダメージは左程ない」

 リクの言葉に、なのはとフェイトは安堵を息を吐く。
 二人は、突然剣崎シオンが現れた時、激しく動揺した。なのはとフェイトは、リク達剣の民のように鋭い魔力察知能力は持っていない。だが、剣崎シオンはそんな二人でも「強い」と有無を言わさず断言出来る程の高い魔力を発していた。

「リッくんが戦ってたのってやっぱり…」

「ああ、剣の民だな」

 その言葉に、なのはとフェイトの表情が強張る。
 このタイミングで出てきたという事は、今回の事件に関わっている可能性が極めて高いという事だ。そしてそれが剣の民というのなら、非常に厄介と言わざるを得ない。

「まさか剣の民が敵側にいるなんて…」

「とは言っても俺も剣の民全員を知ってるわけではないからな」

 フェイトの言葉にリクはそう返す。
 剣の民の住処…集落はあらゆる次元世界に及ぶ。ミッドチルダに存在している集落もあるし、なのは達の故郷、地球に住んでいる「剣の民」だっている。
 そんな中、リク、レイ、アキの住んでいた集落は、自然が多い所で、別段変わったところのない世界だ。そこにいた「剣の民」の数はそこまで多くなく、精々二十人程度。
 だからといって他の「剣の民」を探そうとは考えなかった。

(風の噂で数百人程度が暮らす集落があるってのは聞いたが…)

「“剣の民”の事は後ではやての報告するとして、今はあいつら四人の事だ」

 リクはこの話を一旦切り上げ、新人四人に意識を向ける。
 それに倣い、なのは、フェイトの両名も、通信で四人の無事を確認し始める。その通信を聞いている限り、多少危ない所はあったが、問題なくレリックは回収出来たらしかった。

「ふう、とりあえず任務終了だね」

 安堵の溜息を吐きながら、嬉しそうになのはが言う。
 やはり教え子が頑張り、結果を残すと教導官として嬉しいのだろう。

「それじゃ二人共帰ろう」

 フェイトが言った言葉に頷いたリクとなのは。
 これで機動六課初の任務は無事終わりを迎えた。しかし新たな問題が発生し、今だ油断を許さぬ状況である事に変わりはないが。



* * *



 任務を無事終え、機動六課に帰ってきた六課メンバー。
 新人は休み、残りの者達は隊長室に集まっていた。
 集まったメンバーはスターズ分隊、ライトニング分隊の隊長、副隊長。その他にリクやアキ、レイ。そしてシャマルとザフィーラだ。

「皆、今日はよう頑張ってくれた。おかげでレリックは無事回収や。ほんとにご苦労様」

 皆が集まり、はやては最初に今日実戦に出た者達に労いの言葉を掛けた。勿論皆が皆前置きである事を理解しているので、笑って返すくらいの反応しかない。
 そしてはやては、空中にディスプレイを映し出す。
 そこには今日の戦闘でリクと交戦した剣崎シオンが写し出されていた。

「集まってもらったんは他でもない、今日現れたこの人についてや」

「どうみても“剣の民”だな」

 映像を見たシグナムがそう言った。

「そや。解析してみても、リク君達“剣の民”の魔力パターンに似通った点がいくつも見られることからも彼が“剣の民”である事は間違いないやろ。問題は―――」

「なぜ“剣の民”がこの場に現れたか、ってことだよね」

 はやての言葉を遮り、フェイトが言う。
 そして、彼女の言葉に反応するようにリク達“剣の民”を除くメンバーが、リク達を見る。

「いや、俺達も何故かは分からない。そもそもこの剣崎シオンとかいう奴は俺達とは別の集落…というか世界に住んでいた奴の可能性が高い」

「だから理由や、目的は全く分からへんってことか?」

「そうです。ただ―――」

 リクは一旦言葉を区切り、ディスプレイの映像を切り変える。
 映し出されたのはシオンが氷の龍をだす瞬間の映像だ。

「―――こいつの実力は凄まじい。恐らく俺達と同等かと思われます」

 周りが息を呑む。
 リク達は現在この機動六課内でもトップクラスの実力者だ。そのリク達と同等という事の恐ろしさになのは達は戦慄する。

「お前らみたいなのが敵にいるのかよ…」

 ヴィータに至っては非常に面倒臭そうな顔をしている。

「くく、心配しなくてもヴィータのようなお子様は相手にされないと思うぜー?」

「んなっ!?レイてめえふざけんなー!」

 今まで黙って聞いていたレイが暇つぶしにヴィータをからかい始め、ヴィータがそれに乗り、喧嘩が始まる。
 それを全員がスルーしながら、話は進んでいく。

「とりあえず今出来る事は次この敵が現れた時に備えて準備しておくくらいや。解析もまだ済んでへんし、そもそも出来るかどうかも不明や。いいか?皆、今まで以上に任務に出た時は警戒を怠らんといてな」



* * *



「どー思うよ?」

 話し合いが終わり、それぞれが帰路に着いている中、一緒に帰っていたリク、レイ、アキ。
 レイがふと言ったこの言葉にアキが反応する。

「あぁ?どうってどういう事だ?」

「リクを圧倒したあの剣の民の事だよ」

「ああ…、別に気にする必要ない。アタシ達はアタシ達のやるべき事をやるだけだ―――」

「いやいやちょっと待て。何で俺が圧倒されたみたいに話してんだお前ら。全然圧倒されてなかったろ。むしろ俺は手加減してたくらいだし、そもそも本気すら出してなかったよ俺は?」

 二人の言葉に納得出来ないリクは少しだけ声を荒げて突っかかる。
 しかしその反応は二人の嗜虐心をくすぐるだけである。

「なーに慌ててんだリク?その慌てよう、まさしく圧倒された証拠じゃねーかよ」

 レイの言葉にアキもクスクスと笑う。

「そうそう。あの氷の龍が出てきた時なんて結構ビビってたし」

「あぁあ!?誰がビビってるってこのアホ共がッ!全然余裕ですー。実力の3%くらいしか出してないし!!」

「負け惜しみかリク。情けない。アタシは悲しいよ。アタシ達の里では稀代の天才と言われたお前がまさかあんな醜態を晒すなんて…」

「そーだぜ。俺も悲しい」

「こ、こいつら…」

 ひくひくと頬を動かしながらリクは拳を握る。
 今すぐ殴りかかりたい衝動に駆られるリクだが、流石に二体一ではボコボコにされるのは分かっているので、自重する。

「あ、ところでお前らちょっと聞きたい事があるんだが」

 ふとある事を思い出し、一気に怒りが霧散したリクは、さっきまで形相はどこへやら。至って普通の顔で二人に尋ねた。

「毎日夜にティアナとスバルの訓練を見てるんだけどお前らの参加するか?するよな、というかしろ」

「いきなり何だお前。アタシはそんな暇じゃない。今夜はこの前口説いた妻子持ちの男と一発かます予定があ―――」

「キャンセルしろそんなもん」

「待て待て待て。俺だってこ―――」

「キャンセルしろそんなもん。という事でお前らの予定は無くなった。なので今から訓練しに向かう。黙ってついてこい」

 明らかな暴論を振りかざし二人の予定を消した…というか強制的に無くしたリクは、そのまま二人を連れてスバルとティアナの部屋に向かった。



* * *



 二人の部屋の前に着いた三人。

「おいおい。マジで今日するのかよ?俺マジで怠いからパスしたいんだけどー?」

 この場に来てもなお文句を言うレイ。
 アキは既に諦めたのか、それともやる気になったのか、黙って付いてきている。この辺りは彼女らしいといえば彼女らしい。

「お前は今日働いてないだろ。それにアキを見ろ。既にやる気じゃねえか」

「こいつはやる気つーか“殺る気”だろーが!訓練と称してあの子達ボコボコにするつもりだぞ!」

「うっせえなクソ金髪。とりあえずリク、あいつら呼んだらどうだ?」

「それもそうだな」

 リクは部屋のチャイムを鳴らし二人が出てくるまで待つ。

『あ、はいはーい。ティア、誰か来たよー?』

『あ、それ多分キャロよ。今晩ちょっと用事があったから部屋に呼んだのよ』

『そうなんだ。ならこの恰好でも大丈夫だよね!』

(―――ん?なにか嫌な予感が…)

 リクは強烈な悪寒を感じた。そう、まるであの日、なのはとの一件の時のような強烈な悪寒が。

「あ、ちょ、まっ―――」

 リクが言うよりも早く、部屋の扉が開く。
 そしてリクの眼前に見えたのは引き締められながらも、とっても柔らかそうな肌色。

「へ?」
「あ」
「お―――ぐぼべらぁ!!」
「天誅」

 部屋の扉が開くと同時に出てきたパンツだけを身に付けたスバル。スバルはリクを見ると同時に固まり、小さな声を漏らし、それを聞いたリクは気まずそうに、そして「やっぱりか」と内心で呟きながら間抜けな声を出す。
 レイは出てきたティアナを視界に収めた瞬間「おおおおお!!」という感嘆の声を出そうとしたが、アキの全力で放った超速の拳が頭部を打ち抜き、数メートル程吹き飛んだ。結果スバルを視界に収めたのはコンマ一秒程度である。
 レイを殴り飛ばしたアキはとても満足そうな表情で「天誅」と呟いた。

「な、ななななんでリクさん達がいるんですか?え?っていうかキャロが来てるんじゃ…え?あれ?」

 何が起こったか未だに理解出来ていないスバルは盛大にテンパり、そして盛大に狼狽える。

「ス、スバルとりあえず落ち着け。ほら俺の上着着ろ。な?」

 こういう事は二回目なリク。最早慣れたものである彼は冷静に上着を脱ぎスバルにかけようとする。
 それを後ろで見ていたアキは一人、「こいつやけに落ち着いてんな」と感心しながら成行きを傍観していたが、ふとある事を思いつく。

 ―――ニヤリ。

 そんな音が聞こえてきそうな程意地の悪い笑みを浮かべたアキは、リクの背中をドンッと蹴った。

「は?」
「え?」

 いきなりの衝撃に完全に不意を突かれたリクは体勢を崩し、前のめりに倒れて行く。そしていきなり大の男が倒れてきた事で再び固まるスバル。
 それ故にスバルはリクを支える事が出来ずにそのままリクと一緒に。

 ドスンッ!

 そんな音を立てて一緒に床に倒れ込んだ。

「いっつ…。おい大丈夫かスバ―――」

「あわわわわわわわわっ!!だ、ダメですリクさん。あ、あたしまだこ、ここここ心の準備がっ!?そ、それにティ、ティアにもそのっ、わ、悪いしっ」

「な、何を言ってんだお前?ってそれよりも悪いな、早く退くか―――あれ?」

 ―――動かない。

 リクはスバルを押し倒した…そのような状態のまま全く動けぬ事に気が付いた。
 疑問に思うと同時に閃く。このような効果を持つ魔法、いや、「鬼道」を自分が知っている事に。

(ア、アキーッ!!)

 扉の陰に隠れていたアキはリクを蹴り飛ばした瞬間義魂丸を噛み砕き、死覇装を纏った。そしてリクがスバルと一緒に倒れた瞬間「縛道」で縛ったのだ。

 ―――縛道の一“塞”。

 対象者の手足の動きを封じる縛道。
 しかし縛道の中では最もレベルの低い者で、通常戦闘では全く役に立たないものだ。しかし義魂丸を使用していないリクではこの術を解くのに数秒の時間を要する。

(止めだリク。アタシの特技で―――死ねッ!)

 最早アキの悪ノリはとどまる所を知らない。
 自分の悪ふざけに全力を注ぎ成功させようとしているアキ。そんなアキの特技は―――。

「いやぁあああ!ティア!たす、助けてぇッ!!」

 ―――声真似であった。

 当然それを聞いたスバルは驚き、それ以上に驚いた、いや、絶望したのはリクだった。

「な、何してとんじゃあの女ーッ!!?」

 慌てふためくリク。
 しかしもう一人、その声に驚いた者がいる。

「スバル!?どうしたの…よ…?」

 シャワーを浴びていたのだろう。部屋から出てきたティアナはスバル同様パンツだけを身に付け、上はタオルで隠すという扇情的な恰好だ。
 そんな彼女の眼に飛び込んできたのは、ルームメイトで、親友のスバルを押し倒すリクの姿。

「い、いや…その…こ、これはじ、事故みたいなもんでして…」

 ティアナが放つを凄まじい怒気に頬を引き攣らせながら、リクは必至に弁明する。が、上手い言葉が出てこない。
 そもそもアキが悪いと言った所で意味は無い。

(あの女の事だ。もし仮にあいつが鬼道を使った痕跡が出たとしても問題ない言い訳を容易しているに違いない)

 子供の頃、リク、レイ、アキの三人で悪戯してばれた時、アキは自分で自分の顔を殴り唇をワザと切り、無理矢理リクとレイに従わされたという嘘を使い見事に罪を逃れた過去がある。
 そんな「え?マジでそこまでする?」ような事を平然とやってのける女なのである。剣葉アキという女は。

 まあ、つまり、リクには言い逃れをする事など出来ないという事である。

「あんた…いったい…なに、…なにしてんのよぉぉおおお!!!」

「誤解だぁぁああ!!」

 ブチ切れたティアナに対し、縛道により動けないリクはその場で殴る蹴るのされ放題で、後に騒ぎを聞きつけたエリオとキャロが現れ、そして更に騒ぎは発展し、結果なのはとフェイトがやってくるまでこの騒動は続いたのだった。

 
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