銀河英雄伝説〜ラインハルトに負けません
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第百六十一話 別離
前書き
今回は早くできました。
別れが起こります。同盟内部に亀裂が生じます。
宇宙暦794年5月10日
■自由惑星同盟 首都星ハイネセン 統合作戦本部 ヤン・ウェンリー
ヴァンフリート星域会戦から戻った私は、シトレ元帥に呼び出された。
「ヤン大佐、出頭しました」
「入りたまえ」
本部長室に入ると既にシトレ本部長とキャゼルヌ先輩が待っていた。
「ヤン大佐、今回は活躍したそうだな」
「いえそんな事は」
「謙遜するなヤン、お前さんの献策で艦隊が全滅せずに済んだんだからな」
「キャゼルヌ准将の言う通りだ、グリーンヒル大将からもそう聞いている」
「しかし、基地を失いました」
「その点に関しては、ロボス元帥の指導ミスとの結論が出るはずだ」
「基地を放っておいて迷子になりかけたんだからな」
「はぁ」
私の献策と言ってもあの状態ではあれが精一杯だった、もう少し旨く出来れば犠牲者を減らす事も出来たかも知れないのだが。あの時は酷かった。
宇宙暦794年4月5日
■ヴァンフリート星域 同盟軍総旗艦アイアース
「第五艦隊へ向かった連絡艇からの返信がありません」
「どう言う事だ、第五艦隊はどうしたのだ!」
「依然不明」
第五艦隊へ帰投命令を伝えに行った連絡艇からの報告が途絶えた事で、司令部では苛ついたロボス元帥が参謀達を怒鳴りつけていた。其処へ追い打ちをかけるように、第十二艦隊が、進路をヴァンフリート4=2へ向けたとの報告が至近を通過していた第六艦隊からの報告で判った。
「第十二艦隊、進路を変えヴァンフリート4=2へ向かいます」
「なぜ勝手な行動を取るか、直ぐさま第十二艦隊へ帰投命令を出すようにせよ」
ロボス元帥の命令に第六艦隊経由で第十二艦隊へ命令を伝えたが、第十二艦隊からは“ヴァンフリート4=2後方基地が敵艦隊の攻撃を受けつつあるため、第五艦隊の増援に向かう”との返信があった。それを聞いたグリーンヒル閣下は“直ぐさま司令部艦隊を向かわせ統一指揮を取り敵艦隊と対峙するべき”と意見具申したが、ロボス元帥はそれを拒否した。
「ビュコックもボロディンも勝手な行動を取りおって、総司令官は私だぞ」
この言葉に私もグリーンヒル閣下も呆れてしまった。
へそを曲げたロボス元帥は“司令部が手薄であるため単独でヴァンフリート4=2宙域へは行きかねる、進撃中の第八艦隊と合流後、進撃する”との命令を出し、星系外縁への移動を命じた。
その後、第五艦隊、第六艦隊、第十二艦隊がヴァンフリート4=2宙域で包囲された際も、ロボス元帥は“だから言わぬ事では無い、ビッコックもボロディンも戦略を知らん”と怒り心頭で、救援にすら行こうとしなかったが、私とグリーンヒル閣下が考えた作戦案を何とか通して、合流した第八艦隊と共に攻撃する事が出来たが、既に遅く、第六艦隊は壊滅状態であり、残りの艦隊も三割以上の損害を受ける羽目になった。
しかも、大外から敵艦隊の攻撃を受けた際に、旗艦アイアースも損傷し被弾のショックで飛んだフォーク中佐がロボス元帥に当たり人事不能に成るというアクシデントもあり、艦隊が混乱したが、いち早くグリーンヒル閣下が撤退を命じたため、それ以上の損害を受ける事無く撤退できたが、基地を見捨てる羽目になった。
宇宙暦794年5月10日
■自由惑星同盟 首都星ハイネセン 統合作戦本部 ヤン・ウェンリー
「ヤン、それで、そんなに酷い状態だったのか」
「ええ、混乱と混戦で後方から撃った弾が味方に当たる状態まで有りましたが、敵艦隊はローテーション制を取っていたらしく、三隊が一隊事に二時間ずつのローテーションで攻撃するという方法を取っていました」
「なるほど、司令部からの報告書にもあったが、帝国軍も次第に精練されてきているようだな」
「ええ、特に第六艦隊を攻撃し、最後に我々を危機に訪れさせた、艦隊は驚異的な攻撃力と統制力を発揮しています」
あの黒い艦隊と、赤い総旗艦は脅威だった。
「しかし、第十二艦隊に痛撃された艦隊や、司令部艦隊と第八艦隊に攻撃された二個艦隊は右往左往するだけだったようだが」
「確かに、三個艦隊は練度も低く統率力も低い感じでしたが、安心は出来ません」
「痛撃してきた赤い旗艦の艦隊の事かね」
「はい、あの艦隊はフェザーンからの情報には記載されていませんでした」
「つまり大佐はフェザーンが態と知らせなかったと言うのかね?」
「可能性はあります、フェザーンは同盟と帝国のバランスを取る政策を取っていますから」
「それで態と知らせなかった訳だと」
「はい、その可能性は否定できません」
「うむ、情報部には調べさせてはいるのだがな」
「未だ判らない訳ですか」
「そう言う事だ」
「ともかくも、今回は御苦労だった、貴官は今回の事で准将に昇進する事が決まった。グリーンヒル大将からの推薦もあった、大将の期待を裏切らないよう、より一層の努力を願うものだ」
「准将ですか、余り嬉しくはないですけど」
「ヤン、貰っておける物は貰っておけ」
また辞め損ねたな、これじゃ何時辞められるのやら。
宇宙暦794年5月15日
■自由惑星同盟 首都星ハイネセン 統合作戦本部 ヤン・ウェンリー
今回もまた本部長に呼ばれここに来た。
「ヤン大佐、出頭しました」
「入りたまえ」
本部長室に入るとまたもシトレ本部長とキャゼルヌ先輩が待っていた。
私が席に着くのとほぼ同時に、先輩が資料を私に渡してきた。
「ヤン、あの赤い旗艦の指揮官が判ったぞ、フェザーンからの情報なのがしゃくに障るがな。司令官の名前は、ウルリッヒ・フォン・ケスラー中将、帝国暦452年生まれの33歳、つまりは宇宙暦761年生まれで、俺と同じ年だな」
先輩と同じ年で中将しかもフォン持ち、貴族と言う訳か。
「貴族にしては、非常に出来る人材と思えるのですが」
私の疑問を先輩が氷解してくれる。
「それは其処、元々は平民階級出身で皇帝の肝いりで帝国騎士に叙爵されたらしい」
「成るほど、新貴族と言う訳ですか」
「その様だな、調べた所、ケスラー中将は辺境のクライゲント出身で士官学校卒業後に憲兵隊へ所属し、あのサイオキシン麻薬事件の際の主任捜査官を務めたらしい」
サイオキシン麻薬事件と言えば、同盟にも影響のあったあの事件か。
「しかし、憲兵隊出身者が艦隊司令というのは」
「腑に落ちないと言う考えか」
「ええ」
「その辺だが、どうやら第五次イゼルローン攻略戦で、トールハンマーが味方殺しをした際に直前で上昇して難を逃れた艦隊があったろう」
「ええ、見事なタイミングでしたが、まさかあの艦隊が」
「そうらしい、あの艦隊の指揮官が当時代将のケスラー大佐だったようだ」
本部長は苦い思い出なのか、皺を寄せながら私に話しかけてくる。
「なるほど、あの動きとタイミングは見事でしたから、それで艦隊司令官に」
「その様だな、そのせいか、皇帝の元侍従武官で現憲兵隊総監グリンメルスハウゼン上級大将の高級副官も務めているらしい」
「尤も、グリンメルスハウゼン上級大将は七十代後半の昼行灯で、実際に憲兵隊を動かしているのはケスラー中将らしいが」
「あの攻撃は、とても艦隊戦を知らない人物とは思えませんから、相当な人物です」
「情報部としても、ケスラー中将には多大なる関心を持っている」
「それと、ケスラー艦隊の前衛を務めた黒い艦隊だがな、指揮官はフリッツ・ヨーゼフ・フォン・ビッテンフェルト少将、彼も新貴族だ、艦隊名は黒色槍騎兵艦隊( シュワルツ・ランツェンレイター)と言うそうだ。この艦隊名はテレーゼ皇女の肝いりで名付けられたそうだ」
「そう言う事は、皇女のお気に入りと言う訳ですか」
「その様だな、皇女としてみれば、お気に入りの寵臣に艦隊を預けたつもりだろうが」
「それが図に見事にはまった訳だな」
本部長も先輩もそう言うが、皇女がその人物の鑑定をして司令官に推挙したとしたら?しかし相手は未だ十四歳ユリアンと殆ど変わらない年齢で其処まで考えつくだろうか?やはり私の考えすぎだろうか?
「厄介な敵が出てきましたね」
「その通りだな、これからは帝国がどう出るかが問題だ」
厄介な敵が出てきた、果たして戦局のどう影響するのだろうか、ユリアンが戦争に行かないような世界が来て欲しいものだ。
宇宙暦794年6月12日
■自由惑星同盟 首都星ハイネセン 統合作戦本部 ヤン・ウェンリー
私がハイネセンへ戻ってから一ヶ月後、再度、統合作戦本部長シトレ元帥の下へ出頭を命じられた。
「ヤン准将、出頭しました」
「入りたまえ」
今回も本部長室にはキャゼルヌ先輩が先に来ていた。
「本部長、キャゼルヌ准将、今回は何があったのでしょうか?」
私としては、先頃出したヴァンフリート星域会戦のレポートに関する事だと思っていたのであるが、本部長(シトレ元帥)と先輩(キャゼルヌ准将)の顔を見ると、思案している顔であり、何か有ったのかと直ぐに判った。
「本部長、何かあったのでしょうか?」
本部長に聞くと、先輩が苦虫を噛み潰したような顔をしながら喋り始めた。
「忌々しい事だが、情報部の防諜課から、照会が来ている」
「何がですか?」
「うむ、最近我が軍の作戦が敵に知られているのではないかという疑念だ」
「それは、考えすぎでは?」
「いや、余りに手際が良すぎるのだよ。第5次イゼルローンの平行追撃だが、敵に知られていたらしい」
「まさか、敵は知りながら味方ごと殴殺したのですか?」
先輩の言葉に私は驚いた、確かにあの時の敵の動きは可笑しいと言えたが、味方ごと殴殺出来る物だろうか?
「それはそれ、どうやらイゼルローンの要塞司令部と駐留艦隊司令部がお互いに啀みあった結果、此方が平行追撃を行うと言う統帥本部情報部からの情報を無視したらしい」
「まさか、其処まで愚かだとは」
「何でも、現地に派遣されていた兵站統括部の一中尉でさえ、平行追撃に気が付いて指摘していたらしいが、それも無視したようだ」
「そう言う事だ、帝国らしいと言えば帝国らしい事態だな」
「人命より帝国の安全を取るですか」
「向こうには有権者や政党なんぞは存在しないからな」
「人命軽視でも何ら問題にならん訳だ」
呆れたと同時に帝国の恐ろしさが嫌なほど感じて気持ちが悪くなる程だ。
「それとヤン、実はな……」
先輩が非常に辛そうな顔で話しかけてくる。
「キャゼルヌ先輩、何か有ったのですか?」
「実は、ユリアンの事なんだが」
「ユリアンがどうかしましたか?」
「情報部から、ユリアンをお前の所に置いておくのは不味いと指摘が来てな」
ユリアンを私の頃に置いておけない?私が生活不能者でユリアンに家事をさせて居るから、児童虐待とかなのだろうか?
「なぜですか?一人暮らしだからでしょうか?それともユリアンに家事をさせているからなのでしょうか?」
私の指摘に先輩は困った顔をしながら答えてくれた。
「いや違うんだ、ヤンが生活破綻者である事が原因じゃない。忌々しい事だが、ユリアンの父親で戦死したミンツ大尉が帝国のスパイだったという疑惑が、フェザーンからの情報で判ったと言うんだ」
あの紅茶を入れるのが旨いミンツ大尉がスパイなどあり得ない!
「ミンツ大尉がですか、あり得ない事でしょう」
「俺もそう思うさ、あのミンツ大尉がスパイの訳がない」
「じゃあ、なぜ、情報部は?」
私と先輩の会話を黙って聞いていた本部長が徐に話し始めた。
「ヤン准将、証拠が挙がったのだよ」
本部長の話しに私は怪訝な顔をした。
「本部長、証拠とは?」
「同盟軍が作戦を行う事が統合作戦本部で決まった時期にフェザーンにあるミンツ大尉夫人名義の口座に多額の資金が振り込まれていたのだよ、しかもその作戦終了後にも資金が振り込まれている」
資金を提供、確かに可能性ではあるだろうが、帝国が離間の策をしている可能性も有る。
「本部長、しかしそれだけでは証拠としては弱いでしょう、帝国が態とその様な事をしている可能性もありますし」
私の反論に本部長も眉間に深い皺を目立たせながら答えてくれる。
「私も、その事は考えたのだが……」
本部長はそう言いながら先輩の方を見て目配せする。
目配せされた先輩は、本部長に代わり説明し始める。
「俺の方でもその辺を調べたんだが、くだんの口座だが、ミンツ大尉が帝国からの亡命貴族の令嬢と結婚後に開かれた事が判明している。その上で作戦毎に資金が振り込まれているんだ。
しかも口座の名義は最初は夫人で夫人死亡後にはユリアン名義に変更されている。更に、ミンツ夫妻の資料や写真は全て彼の母が焼却処分している上に、彼の母親、ユリアンに取っては実の祖母なのにも係わらず、異常なほどユリアンを虐待していた。
つまりだ、情報部としてはユリアンの祖母はミンツ家が長征一万光年の参加者の子孫であることを誇りにしていたからこそ、家から裏切り者が出た事が発覚する事を恐れて証拠隠滅したのではないかと疑っている訳だ」
「本部長も先輩も、荒唐無稽な事で、ユリアンを私から引き離せと言うのですか!」
先輩の説明に私も反論せざるを得なかった。
「違う、俺もこの話は荒唐無稽だと考えているし、本部長も同じ考えだが」
先輩の説明に本部長も頷いてくれる。
「無論、私とて、ユリアン君がスパイなどとは思ってはいないが、情報部としては疑いの目で見ている事は確かだ」
「ユリアンはどうなるんですか?」
情報部云々よりユリアンの事が心配だ。
「一時的に、准将の家から施設へ戻し、事実関係を調べた後で、然るべき相手を選ぶ事に成るかも知れない」
つまりは私から引き離せと言う訳か。
「それでは、ユリアンが可哀想すぎます」
私に指摘に本部長も先輩も済まないと頭を下げてくれるが、そんな事よりユリアンの事を何とかして欲しい。
「ヤン准将、今回の件はユリアン君だけでは無いのだよ」
本部長の言葉に、先輩が資料を見せてくる。
「ヤン、これを見てくれ」
「何ですかこれは」
その資料には、一人の少女と母親らしい人物が写っていた。
「母親のローザライン・エリザベート・フォン・クロイツェルと娘のカーテローゼ・フォン・クロイツェルだ」
「この二人はいったい?」
「ヤンも見た事があるんじゃないか?」
「初めて見ますが」
「一躍有名になったシンデレラさ」
シンデレラ、シンデレラ、あっあの逆亡命の話か。
「やっと判ったようだな、ヤン准将」
「逆亡命して伯爵令嬢になった話ですね」
私の指摘に本部長も先輩も肯定する。
「その伯爵令嬢だが、彼女の母親もスパイだったという疑念を情報部は考えている」
「しかし、逆亡命など幾らでもあるはずです、以前マンフリート二世は同盟から帰国して皇帝に即位していますし」
「そうなんだがな、この親子の場合、父親が問題なんだ」
「この資料には父親の項目がありませんが?」
「ああ、私生児なんだが、父親は判明した」
父親がいる以上、帝国へ行く可能性が少ないはず、既に亡くなっているのか?そう思う私の考えの斜め上の答えが、本部長から話された。
「この子の、父親の名前は、ワルター・フォン・シェーンコップ、ローゼンリッターの副連隊長だ」
ローゼンリッターと言えば、ヴァンフリート星域会戦で部隊ごと捕虜になった。
「情報部としては、元々シェーンコップ中佐の動向を注目していたのだよ」
「何があったのですか?」
「中佐は常日頃から、現体制に批判的な言動を続けていて、クーデターを起こすのではないかと危険視されていたのだよ」
「しかし、元々亡命者達は不当に扱われてきましたから、不平不満が上がるのも多々有ったはずですが?」
「そうなのだが、今回のヴァンフリート4=2後方基地は軍内部でも殆ど知られていなかったにも係わらず、帝国軍は真っ直ぐに後方基地を攻略している。とても偶然とは思えないのだよ」
確かに、あの手際の良さは異常と言えた。
「其処で、フェザーンからの情報で、スパイ疑惑が上がった以上、シェーンコップ中佐に関して情報部が調べた結果、クロイツェル母娘の存在が浮かび上がったと言う訳だ」
「しかし、ローゼンリッターと言えば、最前戦で他より多量に血を流してきています。そんな彼等が裏切るなど」
「しかし、ローゼンリッター歴代連隊長の中でも五名が逆亡命している、その辺を情報部が危惧したのだよ」
「其処で、調べた結果、シェーンコップ中佐の娘が帝国へ帰国後、伯爵位を受けた上に、テレーゼ皇女の義妹として優遇されている事が判った。逆亡命者が帝国でこれほどまでに優遇された例が存在しない、更に皇位継承者と共にいる事態が異常だ。これにより情報部はシェーンコップ中佐が限りなく黒だと践んだ」
「しかしそれは憶測による物でしょう」
「そうなのだがな、調べていく中でシェーンコップ中佐が軍内部に諜報網を張り巡らしている事が判明したのだよ」
「本部長それは?」
「うむ、シェーンコップ中佐は名うてのプレーボーイで、軍内部に多数の愛人を作り、その愛人達が、給湯室お喋りで情報を手に入れていた事が判明してる」
「情報その物はくだらない物が殆どだが、情報網を張り巡らしていた事が明白な以上、シェーンコップ中佐がスパイである可能性は否定できない状態だそうだ」
スケープゴードか、何時も犠牲になるのは弱い立場の人間だ。
「その為に、帝国出身者や、帝国系の親の居る人物、帝国出身者に関係のある者などを一斉に調べる事になった」
「その為にユリアンをなんですか?」
「ヤン准将、これは最高評議会で決まった事なのだよ」
「致し方ない事だが、出来る限りユリアンを帰宅できるようにするから、我慢してくれ」
本部長と先輩にそう言われても、ユリアンにどう言ったら良いか私は悩みまくった。
翌日、ユリアンに伝えると、既に学校で呼び出されその話を聞いていると、言われたときは目の前が真っ暗になった。
「ヤン准将、食事はチャンと取って下さいね、それと掃除と洗濯はこまめにして下さいね」
そう言い、ユリアンは迎えの者と共に我が家を去っていった。
ユリアン、すまない力ない私を怨んでくれて良い。
後書き
シェーンコップのスパイ疑惑は情報部にしてみれば、愛人から情報仕入れていると思われても不思議じゃないぐらいですからね。
テレーゼの場合、関係無い連中にはトコトン利用しまくりますが、自分の味方を落とし入れる様な真似はしませんからね。
結局の所テレーゼは帝国臣民二百五十億を背負っている訳で、同盟百三十億、フェザーン二十億の人間の面倒までは見れませんし、見る義務もない訳ですからね。
今回もシェーンコップやローゼンリッターがスパイとは一言も伝えてないですし、カリン母のスパイ疑惑も流してません、単に同盟側が疑心暗鬼で疑っているだけですから、斜に構えるシェーンコップでも、へそを曲げない可能性が大きいですからね。
下手に小細工したら、シェーンコップの信用信頼を得る事は無理ですから、誠意を持って対処してる訳です。
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