緋弾のアリアGS Genius Scientist
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イ・ウー編
武偵殺し
4弾 ツインテールの転入生
「先生、あたしはアイツの隣に座りたい」
俺がクラス分けされた2年A組の、最初のHRで――――
不幸なことに同じ2年A組だった、あのピンクのツインテールが、いきなり俺を指してそんなことを言ったもんだから。
クラスメイト達は一瞬絶句して、それから一斉にこっちを見て……
わぁーっ! と歓声を上げた。
俺はというと――――
全力で寝たふりをしていた。
最早、現実逃避するしかない。
先生が「うふふ。じゃあまずは去年の3学期に転入してきたカーワイイ子から自己紹介してもらっちゃいますよー」などと前置きをしてたから、イヤな予感はしていた。
そして俺の死角にあった席を立ち教壇に上がったチビがまさにさっきの神崎・H・アリアだったわけで、さすがの俺もいきなりのことに混乱して、どうすればいいのか何も思い付かず、半分は銃撃される覚悟をしていた。
そしたらいきなり「隣に座りたい」ときた。
「な、なんでやねん」
思わず関西弁でツッコミを入れてしまった。
やばい。俺、殺されるかも。
「クソっ!なんでお前ばっかりモテんだよ!――――いや、待てよ。ミズキが転入生と仲良くなれば、星伽さんはフリーに……先生!オレ、転入生さんと席代わりますよ!」
いつも通りの勘違いも甚だしいことを叫んだと思ったら、なんだかよく意味がわからないことを呟き、その直後に、まるで当選した代議士の秘書みたいに俺の手を握ってブンブン振りながら、右隣に座っていたバカが席を立つ。
身長190近いこのツンツン頭のバカは、武藤剛気。
俺が強襲科にいた頃よく俺たちを現場に運んでくれた車輌科の優等生で、乗り物と名のつくものならスクーターからロケットまで何でも運転できる特技があるバカだ。
「あらあら。最近の女子高生は積極的ねぇー。じゃあ武藤くん、席を代わってあげて」
先生は何だか嬉しそうにアリアと俺を交互に見てから、事情を知らない武藤の提案を即OKしてしまう。
わーわー。ぱちぱち。
教室はとうとう拍手喝采を始めてしまった。
――――違うっ!俺はアイツのことなんか何も知らない。それどころかアイツはさっきまで俺に銃弾をぶっ放してた凶暴女なんだ、だから取り消してくれ!
そう先生に抗議しようとした時、アリアが、
「ミズキ、これ。さっきのベルト」
と、俺をいきなり呼び捨てにしつつ、体育倉庫で貸したベルトを放り投げてきた。
見れば、向こうの制服は上下共にどこかで調達してきたらしく新品になっている。
俺がベルトをキャッチすると――――
「理子分かった! 分かっちゃった! ――――これ、フラグばっきばきに立ってるよ!」
俺の左隣りに座っていた峰理子が、ガタン! と立ち上がった。
急に立ち上がって、いったい何が分かったっていうんだ?あと、フラグってあれか?死亡フラグか?
「ミーくん、ベルトしてない! そしてそのベルトをツインテールさんが持ってた! これ、謎でしょ謎でしょ!? でも理子には推理できた! できちゃった!」
アリアと同じくらい背の低い理子は、探偵科ナンバーワンのバカだ。
その証拠に、武偵校の制服をヒラヒラなフリルだらけの服に魔改造している。スイート・ロリータというファッションだ。
ちなみにミーくんというのはコイツが俺につけた変なあだ名である。
「ミーくんは彼女の前でベルトを取るような何らかの行為をした! そして彼女の部屋にベルトを忘れてきた! つまり2人は――――熱い熱い、恋愛の真っ最中なんだよ!」
ツーサイドアップに結ったゆるい天然パーマの髪をぴょんぴょんさせながら、理子はバカ推理をぶち上げる。
恋愛って。お前。
というか、何らかの行為ってなんだよ。俺がコイツとしたのは非常に危険な救出劇(自転車のアレ)と殺伐とした戦闘(俺からはほとんど何もしていないが)だけだぞ。
だがここはバカの吹き溜まり、武偵校。
そんなくだらないネタでもクラスは大盛り上がりしてしまった。
「ミ、ミズキがこんな可愛い子といつの間に!?」「いつもいつもお前ばかりモテやがって!」「三次元には興味無いんじゃなかったのか!?」「リア充は死ね!」
武偵高の生徒はこの一般科目でのクラス分けとは別に、それぞれ専門科目で部活のように組や学年を超えて学ぶ。ので、生徒同士の顔見知り率は高いのだが……
新学期なのに、息が合いすぎだろお前ら。こういうことになると。あと最後の奴、俺は別にリア充じゃねえ。
「お前らいい加減に……」
俺がいい加減怒ろうかと思ったとき――――
ずぎゅぎゅん!
鳴り響いた2連発の銃声が、クラスを一気に凍り付かせた。
――――真っ赤になったアリアが、例の二丁拳銃を抜きざまに撃ったのである。
「れ、恋愛だなんて……くっだらない!」
翼のように広げたその両腕の先には、左右の壁に一発ずつ穴が空いていた。
チンチンチチーン……
拳銃から排出された空薬莢が床に落ちて、静けさをさらに際立たせる。
バカ理子は前衛舞踏みたいなポーズで体をよじらせたまま、ず、ずず、と着席。
……武偵校では、『射撃場以外での発砲は必要以上にしないこと』となっている。つまり、してもいい。まあ、ここの生徒は銃撃戦が日常茶飯事の武偵になろうというのだから、日頃から発砲に対する感覚を軍人並に麻痺させておく必要がある。だからなのだが……
新学期の自己紹介でいきなり発砲したのは、コイツが初めてなんじゃないかな。たぶん。
「全員覚えておきなさい! そういうバカなこと言うヤツには……」
それが、神崎・H・アリアが武偵校のみんなに発した――――最初のセリフだった。
「――――風穴あけるわよ!」
昼休みになると同時に質問攻めの憂き目にあった俺は、なんとかクラスのバカども(主に武藤と理子)をまいて理科棟の屋上へと避難した。
だいたいアリアのことを聞かれても、俺には何も答えられないのだ。今朝初めて会ってチャリジャックから助けられて、それから追っかけまわされたというだけの関係。個人的なことは何も知らないようなものなんだから。
溜息混じりに黄昏てると……屋上に、何人かの女子が喋りながらやってきた。
声に聞き覚えがある。どうやらうちのクラスの、それも強襲科の女子らしい。
こそっ。俺は犯罪者のように物陰に隠れた。って何かこの例えは嫌だな。
訂正。
俺は張り込み時の探偵のように物陰に隠れた。うん、このほうがいいな。
「さっき教務科から出てた周知メールさ、2年生の男子が自転車を爆破されたってやつ。あれ、ミズキじゃない?」
「あ。あたしもそれ思った。始業式に出てなかったもんね」
「うわ。今日のミズキってば不幸だねー。チャリ爆破されて、しかもアリア?」
1・2・3と並んで金網の脇に座った女子たちは、俺のことを話題にしているようだ。
俺はとりあえずこのまま静かに身を潜めることにした。
「さっきのミズキ、カワイソーだったよねー」
「だったねー。アリア、朝からミズキのこと探って回ってたし」
「あ。あたしもアリアにいきなり聞かれた。ミズキってどんな武偵なのとか、実績とか。昔は強襲科で活躍してたよー、って適当に答えといたけど」
「アリア、さっきは教務科の前にいたよ。きっとミズキの資料漁ってるんだよ」
「うっわー。ガチでラブなんだ」
俺は渦中の人間として、ついつい会話を盗み聞きしてしまう。
朝から、俺を……ってことは、チャリジャックの直後からストーキングされてたんだな全然気が付かなかった。
「ミズキがカワイソー。よりによってアリアだもんねぇ。アリアってさ、ヨーロッパ育ちかなんか知らないけどさ、空気読めてないよねー」
「でもでも、アリアって、何気に男子の間では人気あるみたいだよ?」
「あーそうそう。3学期に転校してきてすぐにファンクラブとかできたんだって。写真部が盗撮した体育の写真とか、高値で取引されてるみたい」
「それ知ってる。フィギュアスケートとかチアリーディングの授業のポラ写真なんか、万単位の値段だってさ。あと新体操の写真も」
何なんだその授業。本当に大丈夫なのかこの高校は。色んな意味で。
「ていうかあの子さ、トモダチいないよね。しょっちゅう休んでるし」
「お昼も1人でお弁当食べてたよ。教室の隅っこでぽつーんって」
「うわっ、なんかキモぉー!」
わいわいと盛り上がる女子たちの話に、気分がどよーんと沈んでくる。
他人にあまり興味のない俺は、その存在すら知らずにいたが(むしろずっと知らずにいたかった)……
アリアはどうやら、この変人揃いの武偵校でも浮くぐらい目立つキャラらしい。
これはまた、やっかいな奴に目をつけられたもんだぜ。まったく。
後書き
一話からすべて読んでくれてる皆様はお久しぶり。「この話から見始めました!わふー!」というリトルバスターズのメンバーの一人みたいな人は初めまして。白崎黒絵です。
違うんです聞いてください。更新が止まったのは断じて書くのをサボっていたからじゃないんです。ちょっとPCに異常が起きただけなんです。信じてください。
さて、と。今回の話は……ミズキのクラスメイトたちの登場ですね。うん。
そして何故かまたやってることが(ほぼ)原作と同じですね。二次創作なのに。これはもう怪異現象か何かじゃないでしょうか?
上記のとおり、この作品は二次創作です。
「二次創作、二次創作って言ってる割には(ほぼ)原作と同じですよ?」
そう思う方もいらっしゃるかもしれません。
そんな方には、今回初登場の峰理子ちゃんから一言!
「細かいことは、気にしない方がいいんだよー!」
それでは皆さんまた次回!更新されたら!
疑問、質問、感想など待ってます。苦情はやめてね?いやマジで。
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