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儚き運命の罪と罰

作者:望月
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第一章「P.T事件編」
  第一話「二つの運命が交差する時。」

 
前書き
いよいよ本編スタート。

リオン君を格好よく書けるように頑張ります。 

 
黒髪の天才剣士はただ一つの愛に散り

金色の魔法少女は今心に宿るものが愛と信じていた。

運命(デスティニー)」、それを冠する物語の知られざる英雄であった少年が偶然か必然か「運命(フェイト)」の名前を持つ少女と出会うとき

二つの運命が交差を始める。















・・・・・・・・・・・・・・・・

・ぼ・ち・・・・ちゃん・・・・・

坊っちゃん!」

「!・・・ここは?どこだ…?」

「お目覚めですか?坊っちゃん。」

「シャルか…僕は…ッ!」

少年は思い出した。

自分が起きる前にあった事、その全てを。

少年は仲間を裏切り、彼らと戦い、そして最後にその仲間を生かすために命を散らした。






そう、まさしく「死んだ」







その筈だった。少なくとも少年はそう思った。

なのに、

「生きて…いるのか…?」

「その様ですよ、坊っちゃん。」

「何故…何故だ!確かに…僕は死んだ筈だ!」

そして、やつあたりだとわかってはいても、自らの相棒に聞かずにはいられなかった。

「どういうことだシャル!」

「落ち着いて下さいよ、坊っちゃん。」

「落ち着けだと!?ふざけるなこんなことがー」

「落ち着くんだ坊っちゃん。

・・・君は『エミリオ』と言う子供では無く『リオン・マグナス』と言う男であるのなら。」

「!・・・わかった。」

とは言えシャルティエ・・・それが少年リオン・マグナスの唯一無二の相棒たる喋る剣、ソーディアンの名前であるが、そのシャルティエがまだ人であった頃、とある軍に所属した過去を持ちその中で極めて有能な人物であった。

そんな彼でもこの状況を正確に把握できているわけではなかった。その事をこの気難しいマスターに伝えると、

「・・・そうか。」

と言って黙ってしまった。

当然と言えば当然の話である。死んだと自分で確信した人間がまるで知らない場所で目が覚さめ生きている。
これ程特殊な状況はそれ事態を引き起こすことが天文学的な確率であり、それを経験するとなればまさに神の意思の様な物でも自分に働かない限りあり得ないことだ。

当事者であるリオンとシャルティエ(剣を者と言って良いかどうかはまた別の話として)は勿論、第三者の目から見てもこの事態を把握できるものは極めて少ないであろう。

ただ揺るぎない事実として、「リオン・マグナスは生きている」

それが今最も確かな事だ。

「一体…どういう事だ…。」

「どういう事何でしょうね…でも今それを考えても仕方がないんじゃないですか坊っちゃん?」

「・・・そうだな。そう言えばシャル」

そう前起きして思いついたことを聞いた。

「お前ずっと起きていたのか?」

「ずっと…と言う訳じゃあ有りませんが坊っちゃんよりは大分早く起きてましたね。」

「なら、僕にこの毛布をかけたのは誰だ?」

そうリオンは手当てされていた。明らかに人為的なものだ。それも起きて今すぐ動けそうな位丁寧に手当てされていた。

「そうですね…顔色の悪い紫色の髪をした女性でした。」

「紫色の髪…?」

オベロン社に所属していたイレーヌと言う女を連想したが
・・・それは無いだろうとリオンは思い直す。
もし彼女ならシャルティエがそんなぼかした言い方をするわけがない。
それに幾ら情にあつい人間だろうと最終的にはリオンはオベロン社をも裏切ってスタン達を助けていた。
もし仮にそれを知らなかったとしてもあの崩れる洞窟の中に飛び込んで他人を助ける、そんなお人好しなんてリオンには「彼等」しか思いつかなかった。

「・・・ッ。」

やめよう、奴らのことを考えるのは。
そう思ってしまう程度にはリオンは彼らのことが気に入っていた。

「・・・・・・・・・・」

シャルティエもそれを察したのか黙していた。

そんな時、

パシーン・・・・パシーン

そんなかすかな音が聞こえてきた

「?何の音だ...?」

「なんだか他の音も聞こえますね。・・・いやこれは音と言うよりも・・・声?」

シャルティエの言うとおり、なにやら女性と少女のものと思しき声も聞こえていた。

ベッドから降りて、リオンは傍に立てかけてあったシャルティエを腰にさした。

「坊ちゃん、大丈夫ですか?」

一応は病み上がりであるマスターにそう尋ねる。尤も、

「僕を誰だと思ってる、シャル。」

返ってくる答えなど、これ以外に存在しえないことを知っていたが。

「そうですね...では、行きましょうか。坊ちゃん。」

「ああ、行くぞシャル。」

天才剣士、そう評されたソーディアンシャルティエのマスター。悲劇の運命に生き、そして儚き運命の中「裏切り」と言う罪に散り、仲間を捨て一つの愛に殉じた少年、リオン・マグナス。

彼はこの世界において、初めての一歩を踏み出した。
未だリオンはこの世界が異世界であることはまだ知らないが。

「取りあえずは、この音の発信源に行くとするか。」

「特に敵は居ないみたいですけどね...。」

「いた所で問題ない。斬り捨てるのみだ。」

「油断大敵ですよ。坊ちゃん。」

「油断...?何時誰が油断したと言うんだシャル。」

そんな会話を交えながら進む。

忘れてはいけない。リオンもシャルティエも幾多の修羅場を越えてきたそれぞれが百戦錬磨の強者だ。シャルティエだって剣となった今でもその経験は彼のうちに生きている。

軽い口を叩きながらでも決して周囲の警戒を彼らは怠っていなかった。
もし、今が好機とばかりにリオンに襲い掛かる様な魔物や曲者が居たとすれば。おそらく彼らは無慈悲にシャルティエで両断されるか貫かれるかあるいはシャルティエの晶術・・・この世界で言う魔法に相当するそれを身に受けて滅せられるのみであろう。
まだリオンはその存在を知らないが、それはこの世界の魔道士と呼ばれる相手であっても先程説明した彼等の例外ではないだろう。「エース」「ストライカー」、そう呼ばれる相手で無ければ障害物にすらならないかもしれない。ましてや勝つなど持っての他であるといえよう。

それ程に、リオン・マグナスは強者である。

「…どうやら近づいてきましたねぇ、坊ちゃん。」

「だな...?誰だアイツは。」

アイツ...リオンが見た先にはオレンジの髪をした女がさめざめと涙を流して膝をついていた。

「ううう...フェイトぉ...」

その向こうには重量感のある扉があった。

「何だ...?犬の耳?」

女はオレンジの髪のそのうえに犬の物と思しき耳をのっけていた。・・・否、あれは完全に

「バカな...生えている?」

生えていた。犬の耳が、心なしか尻尾のような物まで見える。

「いや、今は如何でも言いか...。」

そう割り切り、リオンは犬女?に話しかける。

「おい女。そこで何をやって居る。」

その声に女はハッとして身構える。

「だ...誰だいアンタ!」

泣いて充血した眼でリオンを睨みつける...が

パシーン

・・・・・・・・・・・・お・・さ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・・・・・あ・・・は・が・・り・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

それを聞くとすぐに扉に向き直る。それをみたリオンは

「おい、その先で何が起きている。」

それを聞いたアルフはリオンのほうに向き直った

「あ...アンタはあの鬼ババァの仲間じゃないのかい!?」

「…鬼ババァ?そんな知り合いは僕にはいないな。」

守銭奴や爆弾魔の女ならいるが。そう心の中で付け足した。

「ならお願いだよぉ...フェイトを助けてやってくれよぉ...」

この扉の先に、フェイトとやらが居るのだろうか。

「ふん...あいにく誰かを助けてと見知らぬ女に言われて助ける程、僕はお人好しじゃない。」

「なっ!?」

「だが、その先に用がないわけではない...そこをどけ。」

そういって、シャルティエを抜き放つ。

「出番ですか?坊っちゃん。」

「なっ!?剣が喋った!?インテリジェントデバイスなのかい…?」

シャルティエの声がどうやらこの女には聞こえる様だ。

ただインテリジェントデバイスという馴染みの無い単語が少し引っ掛かった。

あとで聞けばいいだろう…そう考えシャルティエを構える。

月閃光(げっせんこう)!」

斬撃が三日月の軌跡を描くリオンの十八番の技の一つ。
放った扉に傷をつけることはできたが、破れない。

リオンはこう考えた

「(この程度なら簡単に破ることができる…)・・・シャル!」

「わかってますよ、坊っちゃん。」

そして剣と主は声を重ねる。

「「デモンズランス!!」」

悪魔の槍の名を冠する晶術

その一撃が扉に命中、そして




ズガァン!




粉砕した。

「な、なんて力...」

「ふん、脆い。女、何をぼおっとしている。来る気が無いのか?」

「!あ...ああ。」

女...アルフは少し、いやかなりこの少年に恐怖を覚えていた。
あの魔法...「デモンズランス」と言ったか、明らかにオーバーSクラスの力を持っていた。

それをインテリジェントデバイスらしき剣が有るとは言え、詠唱も唱えず、チャージもせずに放ち、全く疲労の欠片も見えない少年を。
・・・だけどそれは後回しだね。
そう思い直し、心優しき主である少女の元へ駆け寄った。






少し時を遡る...

パシーン パシーン 

女の振るう鞭の音が部屋に反響する。

少女はただじっと痛みに耐えていた。

「フェイト...貴女は本当に使えない子ね...何でこれっぽっちしかジュエルシードを集めてこれなかったの?」

「母さん...ごめんなさい...」

十人に聞けば十人がこの状況を虐待と呼ぶことだろう。

少女の体には既に無数の痛々しい傷が刻まれていた。

そんな時、

「「デモンズランス!!」」

その声が聞こえると同時にその部屋に光が差した。

そして、

「フェイト!大丈夫かい!?」

「あ...アルフ...?」

弱々しい声で自分の使い魔の名前を呼んだ。

・・・アルフにはあの扉は破れない筈…

ぼんやりと考えていた。

「・・・紫の髪の女、アイツで間違い無いか、シャル。」

「そうですよ、坊っちゃん。」

黒髪で中性的な顔をした少年がカツカツと靴音をたてて入ってくるのを少女...フェイトは見た。

「・・・フン、随分と趣味と底意地の悪い女に助けられたものだな。」

「同感ですね、坊っちゃん。」

あの剣はデバイス...?

そして彼は何者...?

そんなことを考えながら少女は意識を手放していった・・・・・・・・・・ 
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