問題児たちが異世界から来るそうですよ? ~無形物を統べるもの~
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Tain Bo Cuailnge ② & 大祓 ①
「禍払いの札よ。わが身に宿りし、衰退の呪いを喰らい続けよ。」
一輝は体にお札を三枚、直接貼り付け、呪いを打ち消す。
「それ、参加者の男の人全員にやってあげないの?」
「もう数がないからな。それに、湖札とのバトルで必要になるかもしれないし。」
一輝はそのまま、一直線に森の奥へと進んでいく。
「あの・・・先ほどから迷わず進んでますが、こちらで合っているのですか?」
「間違いない・・・と思う。あいつはこっちにいる気がする。」
「気がするって・・・そんな曖昧な、」
「でも、兄妹ならではの感覚なのかもしれませんね。」
スレイブがこのような感覚的なことを信じたことに、その場の全員が驚く。
「・・・私だって変わっているんですよ?」
「あ、ああ。そうだよな。悪い。」
「でも、いい変化よね。」
「ええ。」
「いつかは、その敬語も消えるといいねっ。」
「それはありえない。」
そんな会話で全員の緊張はほぐれ、一輝は真剣な話を始める。
「さて、作戦の確認だが、これから戦う湖札は“主催者権限”を持ってる魔王だ。しかも、ヤシロちゃんの時とは違って、ゲームで魔王と戦うことになる可能性もあるし、一族の力で大量召喚してくる可能性がある。」
「もう、何でもありだね。」
「それが俺達の一族だからな・・・。しかも、奥義は全部持ってるし、俺は今回“無形物”のほうで行く予定だから数をぶつけれない。というわけで、俺とスレイブは湖札と戦って、妖怪どもは音央、鳴央、ヤシロちゃんに任せた。」
「了解!」
「分かりました!」
「任せて!」
「兄様の仰せのままに。」
スレイブは魔王と戦う前の重要なときだからか、素で返してしまい三人から「え・・・?」という目をされるが、
「・・・全員戦闘準備。あと少し進むと湖札がいる。」
一輝がいつになく真剣な声と顔で水樹の枝を取り出し、スレイブの手を取るので、全員服装を変えたり姿を変えたりして、戦闘準備を整える。
「・・・こんばんは、兄さん。」
「おう。偶然だな。こんなところで会うなんて。」
「そうだね。こんな森の中、どうして二人とも来たんだろ?」
「さあ?なんとなく、ここに湖札がいそうだと思っただけだよ。」
「そこまで偶然?」
「ってことは・・・」
「うん、私も。昔、何かあったのかな?」
二人は仲のいい兄妹のように・・・いや、仲のいい兄妹の会話をし、ゲームの話に移る。
「さて、そろそろ現状の話に移ろうか。」
「それもそうだな。」
「じゃあ、こっちから最後の提案。兄さん、こっちに来ない?」
「断るよ。これでも“ノーネーム”には貸しも有るし借りもある。仲間に友達もいるからな。裏切るつもりはない。」
「そっか、残念。」
「じゃあこっちから、湖札、“ノーネーム”に来ないか?」
「ごめん、無理。殿下たちには貸しも有れば借りも有るし、仲間で友達だからね。裏切りたくないな。」
二人は似たような質問をし、似たような返答をする。
それでも、一切隙を見せないのは最初から回答が分かっていたからだろう。
「でも、最後の肉親である兄さんとは一緒にいたいんだよね。だから、私が勝ったら兄さん・・・いや、五人まとめてでいいからこっちに来てね。」
「魔王のゲームに拒否権はないだろ。でも、こっちが勝ったら湖札は俺に隷属することになる。これはいいよな?」
「うん、それが箱庭の仕組みだからね。」
「なら、意地でも隷属してもらうぞ。新しい妹を二人、紹介しないとだしな。」
「はぁ・・・相変わらず、無意識のうちに・・・」
湖札は呆れた顔で一輝を見て、すぐに真剣な顔に戻る。
「じゃあ、始めるよ?私の主催する、私のゲームを。」
「こいよ。俺たち五人は、負けないけどな。」
湖札は両手を広げ、巫女服の袖から白い霧を広げていく。
今更になるが、湖札の着ている巫女服も、前にあったときよりも神々しさを有しており、その手にも腰にも妖刀はない。
向こうもまた、本気である。
そして、広がった霧は少しずつ固まっていき、黒く輝く契約書類となって降り注ぐ。
『ギフトゲーム名“大祓”
・参加者一覧
・寺西 一輝
・六実 音央
・六実 鳴央
・ヤシロ・フランソワ一世
・ダインスレイブ
・ホストマスター側 勝利条件
・大祓えを完遂する。
・プレイヤー側 勝利条件
一、ゲームマスターの打倒。
二、全ての鬼の殺害。
・備考
このゲームは、ゲームマスターが主催者権限を失うと同時に、勝敗を付けず、強制終了するものとする。
宣誓 上記を尊重し、誇りとホストマスターの名の下、ギフトゲームを開催します。
“天野湖札”印』
「さあ、鬼軍進行を始めましょう。」
その瞬間、辺り一面を白い霧が包んだ。
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