問題児たちが異世界から来るそうですよ? ~無形物を統べるもの~
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荒野
一輝たちが飛ばされたのは、西部劇でもやりそうな荒野だった。
「これは・・・弓が面白いほど似合わないな。」
「うん・・・でも、兄さんのも、リボルバーじゃないし。」
「似合わないのは同じか。」
二人がそんな会話をしていると、どこからか声が聞こえてきて、ルールの再確認が始まる。
「では、ルールの確認を。まず、体に付けた小型の円盤が三つ壊れたら、その選手は失格。円盤は三つとも転送されるので、今から付けてください。」
二人の目の前に袋が転送され、二人はその中身を体に付けていく。
「次に、武器はこちらから出したもののみを使用、衝撃は与えられますが、一切の怪我にはなりません。」
「なら・・・」
「うん、割と簡単だね。」
二人は、まだ始まってすらいないのに、早くも結論を出す。
「そして、最高難度を選択されたので、対戦相手はこちらになります。」
二人の前後左右、ある程度の距離をとったところに一人ずつ、ガトリングを二門持った人が現れる。
「確かにこれは、難易度高めだな。」
「でも、どうにかできそうだね。」
「ああ。楽しめそうでもあるし、十分だ。」
二人は、それぞれの武器を手に持ち、いつでも始めれるようにする。
「それでは、準備も出来たようなので、始めたいと思います。
ゲーム、スタート!」
開始の合図と共に、二人は揃って・・・
「「「「はぁ!?」」」」
相手にそんな反応をさせた。
含む意味は、一人だけ違ってくるが、驚愕、という意味では同じである。
二人の行ったことは、二人の目の前にいる一人に向かって走り、残りの三人を無視する、というものだ。
だから、自分に向かってきた、という一人と、無視された、という三人では含む意味が変わってくる。
「兄さん!」
「了解!」
全員が呆然としているうちに、一輝は湖札の手首を持ち、斜め上方に投げる。
そのアクションで全員が現状を思い出し、ガトリングを一輝に向け、その引き金を引く。
同時に、湖札は狙っていた一人に対して矢を放ちまくり、一輝は丁寧に引き金を引いていく。
「撃て撃て撃て!まずはあの男の皿を破壊しろ!」
「いや、無理だよ?」
一輝はそういいながら、丁寧に、自分の皿に向かってくる弾丸を、撃ち落していく。
途中からは銃を使わず、避けたり弾丸を手で発射したりして、前方からは守りきる。
後ろには皿を一つも付けていないので、完全無視だ。
そんなことをしているうちに、湖札の矢が二つ、一輝の撃った弾の一つが偶然一つ、一人目の皿を割る。
「次、どの人を潰す?」
「それはその場で決めるとして、まずは武器を剥ぎ取ろう!」
着地した湖札の質問に対し、一輝はそう答え、ガトリングの弾を全て取っていく。
「あれ、銃は?」
「いらん!重いし、邪魔くさい!」
一輝はそのまま、失格にした一人をつかみ、振り回すことで自分達を守る盾にする。
「それのほうが、邪魔くさくない?」
「有効利用できるから、これは別!」
振り回している男の目は、既に白目を向いている。
それでも構わず使う兄と、それを心配しない妹。
本当に、性格が似ている。
「で、ここからどうするの?」
「う~ん・・・もう三人とも俺らの前だから、さっきの作戦は使えない。」
「なら、いっそ正面から行く?」
「それが一番難しそうだし、それでいこう!」
二人は、一輝がつかんでいた男を相手のほうに投げると同時に、三人に向かって走り出す。
「クソ、邪魔だ!」
相手は飛んできた男をガトリングで殴ってどかし、再び残りの二人と共に敵に向ける。
「えー、仲間を殴り飛ばす?」
「さすがに、ありえませんね。」
「人を盾にするやつらが言うな!」
三人はその言葉と共に再び弾をばら撒くが、二人には一発も当たらない。
弾を弾か矢ではじき、自分の元へは届かせない。
脅威の身体能力である。銃弾の速度以上に動きやがる。
「では、そろそろ・・・」
「壊していきましょう!」
二人は銃弾弾きを楽しむと、攻撃に移る。
どうせやるなら楽しく、が二人の今回決めたルールだ。
さっさと終わらせるために、一輝は三発一気に、湖札は三本一気に放ち、二人を片付ける。
「湖札―!残りの一人だけど・・・」
「うん・・・もう終わらせよう!」
そのままの勢いで、二人は残りの弾、矢を一気に放ち、ゲームを終わらせた。
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「お、お疲れ様でした・・・御二人は、どこかのコミュニティに所属しているのですか?」
二人が元の位置に転送されると、店員が二人に聞いてくる。
「俺は、ジン=ラッセルのノーネーム。湖札は?」
「私は・・・コミュニティには所属していますが、結構危ない品も取り扱っていますので、自分からは教えてはいけないんです。」
二人の答えに対し、店員はもったいなさそうな顔をして、二人を送り出す。
露店から少し歩き、ベンチがあるところにたどり着くと、湖札はふと前方を見て、
「・・・はぁ。兄さん、私、のど渇いたんだけど・・・」
「はいはい、わかりましたよ。何かジュースでも買ってくる。」
「よろしく~。」
一輝は、断っても無駄なことを知っているのでジュースを買いに行く。
その場に残り、ベンチに座った湖札は、
「・・・せっかくの兄さんとのデートの最中に、何か用?」
と、誰もいない状況でつぶやく。
「それは、邪魔をしちゃってスイマセン。なら、混世魔王さまに会いに行くのに、ついてきてはもらえませんか?」
その声に対して、リンの声が返ってくる。
姿を現してこそいないが、近くにいるのだろう。
「無理。それに、こっちも重要だって殿下が保障してくれてるでしょ?」
「はい。なので、絶対についてきて欲しいわけではないです。それにしても・・・あれは本当なんですか?」
リンは、疑っている声音で湖札に尋ねる。
まあ、湖札はそう思われても仕方がない情報を理由に、殿下から許可してもらっているので、当然であるが。
「うん。あの時はかもだったけど、今は間違いないって保障できるよ。」
「・・・マジですか?」
「うん、マジ。」
湖札は一度、一輝の行ったほうを見て、
「兄さんは、私と同じ方法で“主催者権限”を手に入れることが出来る。」
「・・・分かりました。では、勧誘活動、頑張ってください。」
「うん。といっても、出来そうにはないんだけどね。」
「そこは、湖札さんがどうにかしてください。」
その声で区切りがつき、リンの気配は遠ざかっていく。
「湖札、買ってきたぞ。」
「うん、ありがとう!」
湖札は、何もなかったかのようにジュースを受け取り、再び歩き出した。
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