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ベイサイドの悪夢

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第三章

「それまでこの掲示板で一度も出ていない」
「尚且つ風聞の形で書いてますね」
「しかもこの書き込みがあってすぐに議論になりだ」
「話がネットのあちこちに拡散していますね」
 ツイッター等を使ってだ、それこそ信じられない速さで拡散していた。
「驚く位ね」
「大統領選挙の後の当選した本人の書き込みの様にな」
 急に知られたというのだ。
「どうもおかしいな」
「ですね、この場合は」
 パソコンの画面、検索を続けているその画面を観ながらだ、キッドニーはホイットマンに対して答えた。
「そうとしか思えないですね」
「ネットはこうだ、ではだ」
「次はですね」
「飲み屋からも噂が出ているな」
「ええ」
「次はそこに行くぞ」
 そうして調べるとだ、ホイットマンはキッドニーに言った。そうしてだった。
 二人は今度はシアトルの繁華街、噂が出たもう一つの場所に向かった。そうして話を聞いて回ってみた。
 話をしていた者に誰から聞いていたかを聞いてその誰かにどの人間から聞いたかを聞いてそのどの人間にも聞いていく、そうして伝っていくという気の長い仕事を周到にしていくと。
 最後に辿り着いた噂の出処は実に剣呑な場所だった、そこはというと。
「あのバーですか」
「ヘンケンだな」
「ええ、あそこは確か」
「ローザンヌファミリーの店だ」
 シアトルで有名なマフィアのファミリーの一つだ、アメリカでは珍しいことにフランスにルーツがあるファミリーである。
「あそこのな
「ローザンヌファミリーですか」
 普段は明るいキッドニーの顔がここで曇った、そのうえで言うことは。
「あそこはやばいですよ」
「ルール無用だからな」
「裏の社会にも一応ルールがありますからね」
「そうだ、彼等なりのな」
 だがそのローザンヌファミリーはというと。
「やりたい放題だからな」
「抗争相手は容赦なく皆殺しですからね」
「そして儲け方もな」
「ええ、麻薬に売春に人身売買に」
「内蔵もやっている」
 臓器売買、それもしているというのだ。
「そうした相手だからな」
「証拠は見せないですけれどね」
「そこがまた厄介だ」
 それもまた、だというのだ。
「狡猾な奴等だ」
「ですね、そこが出処でしたか」
「怪しいな」
 ここでホイットマンの黒い目が光った、そのうえでキッドニーに言う。
「これは」
「と、いいますと」
「ネットの書き込みのIPだが」
「全部プロクシーを使っていましたね」
 そこも調べたのだ、警察の技術を使って。
「マレーシアだのタイだのになっていましたが」
「検索の結果な」
「ネットカフェから書き込んでいましたね」
「そのネットカフェもだ」
 日本に由来しているこの店もだった、そこもまた。
「カモフラージュしているがな」
「ええ、ローザンヌファミリーの経営している店でしたね」
 こうした店の経営もマフィアの収入源なのだ、こうしたやり方で表の世界にも関わっているのが彼等なのだ。
「ということは」
「あの家が怪しいな」
「はい、そうですね」
 こう二人で話す。
「間違いなく」
「どう思う」
 ホイットマンは鋭い目でキッドニーに問うた。 
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