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第四章

「昨日の夜までね」
「ううん、何ていうか」
「デートの待合場所に行くまでそんなのだと周りも見えないでしょ」
「車に注意しろっていうのね」
「そう、それよ」
 母が今言いたいことはこのことだった。
「わかったわね」
「ええ、それじゃあ」
「あと待合場所に早過ぎて行かないこと」
 このことも大事だというのだ。
「さもないと待ち過ぎていらいらすることになるから」
「そのこともなの」
「そう、とにかくね」555
「とにかく?」
「後ね、期待はし過ぎないこと」
 これも大事だというのだ。
「わかったわね」
「期待もなの」
「ある程度はいいけれどし過ぎないことよ」
 このことも大事だというのだ。
「わかったわね」
「失望すると大きいからなの」
「どんと受け止めること、どんなことでもね」
「何かよくわからないけれど」
「あんたも何度かデートしてきたでしょ、その時と同じよ」
「じゃあ落ち着いてなの」
「あとでれでれしない」
 顔のことも言う。
「あのでへへ、って感じの顔にはならないでね」
「でへへって」
「あの顔はもう男の子が引くからね」
 それでだというのだ。
「その顔にはならないで」
「行けっていうのね」
「そうよ、じゃあいいわね」
「ええ、それじゃあ」
「頑張って行ってきなさい。健闘を祈るわ」
 母はここまで言って由紀を送り出した、由紀はそのロリータファッションで待ち合わせ場所まで行った、その時母に言われた通り早くは行かず時間丁度に行った。はやる気持ちを必死に抑えながら。
 するとそこには達也がいた、だがその達也はというと。
 妙にそわそわとした感じだ、かなり不安な様子だ。それでその場で待っている感じだった。
 その達也に時分から声をかけた、するとだった。
 驚いた様に背筋を立ててから由紀に顔を向けた、そのうえでこう言って来た。
「来てくれたんだ」
「あの、どうしたの?」
「どうしたのっていうと」
「何か凄く驚いたけれど」
「いや、それは」
 達也は由紀の今の言葉に戸惑いを感じた。それでだった。 
 己を何とか保ってだ、こう答えたのだった。
「来てくれるかどうか不安だったから」
「それでなの」
「そうなんだ、だから由紀ちゃんの声がして」
 それでだというのだ。
「これまでずっと不安だったけれど」
「ずっと?」
「本当にこの日が来るのか、デートになるのか」
 現実のものになるのかとだ、不安だったというのだ。 
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