中二病が主人公になったら?
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第5話
「ああー、金が欲しいー。」
ナルトがこんなことをため息交じりに言った。
この発言の数時間前、ナルトはそろそろ一人暮らしでもしようと考えていた。
一見、火影邸での暮らしは何の不自由も無い素晴らしい生活のように思えるが、実はそうではない。
飯は火影専属の料理人が火影の分だけでなくナルトの分も作ってくれるのだが、その料理人が作ってきた飯にナルトの分だけ毒が入っていることがあった。
火影の頑張りで今でこそ回数は少なくなったものの、それでもまだ毒殺される危険があるし、なにより、精神年齢は18歳なのでそろそろニートを辞めないと火影に何か悪い気がしたのもあってこのような考えに至ったのである。
それで早速、火影に許可を貰って、原作でナルトが住んでいた家賃0円のアパートに引っ越したのであったが、ここで問題が生じた。
「さて、食材の買い溜めしに行くかぁ~
あれ?金がねぇ。・・・・・・しまったぁぁぁぁぁ!」
ということで、今に至る。
しばらく「カネカネカネカネ・・・」と念仏のように唱えていたが、
突然、
「・・・キターーー!神が降りてキターーー!!」
と湯○弁護士ばりに頭を激しく旋回させながら狂ったように叫んだ。
どうやら、何か思いついたようだ。
ちなみに、幸いなことにこのアパートにはナルト以外誰も住んでいないので、壁ドンはされなかった。
「フッフッフ・・・
神は言っている。ここで死ぬ定めではないと!
『思い立ったが吉日。それ以外は全て凶日』だ。
よし、早速行くぞ!砂隠れへ!!」
3日後、彼は砂隠れの里の入り口の前にいた。
早速、門番の人に『通行証』を見せて颯爽と里に入っていった。
ちなみに、『通行証』は当然火影に頼んで書いて貰ったものであるが、もの凄くデレデレした顔で書いてくれたのは別のお話。
ではナルト君、初めて来た砂隠れの里の感想を一言!
「ふぅん、殺風景極まりな~い♪(キリッ)」
それは言わないで上げて、ナルト君(;^ω^)
里の財布ポイントは0・・・とまでは行かないが、かなり苦しんでるはずだ。
その原因は、砂漠地帯という過酷な環境であることもそうだが、なにより国の軍縮政策が一番の要因であろう。
まあ、我愛羅が風影になって以降は快方に向かうけどね。
さて話を戻すが、ナルトは入るや否や、まず『風』と大きく書かれた建物を探す。
それを見つけると、今度は建物のところまで向かって行き、自分の探している建物であるかを確認して中に入っていった。
どうやら、ナルトが探していた建物は『風影邸』のだったようだ。
最初に発見した職員に声を掛け、『通行証』とともに火影に書かせた『文書』をその職員に見せて、風影の下へ案内してもらう。
「風影様、木の葉の里から客がお見えになりました。」
「・・・うむ。入れ。」
「失礼します。」
ドアを開け、深くお辞儀をしてからナルトは部屋に入った。
「初めまして、風影様。
木の葉の里から参りました、うずまきナルトと申します。」
「私が四代目風影だ。こちらこそ宜しく。」
2人はそう言って握手し、
「長旅で疲れただろう。どうぞ座ってくれ。」
と風影が言うと、2人は部屋にあるソファーに向かい合って座った。
「火影殿から既に話は聞いている。
あの我愛羅を何とかしてくれるということだが・・・」
「はい、彼の定期的な暴走はおそらく彼自身の精神が不安定な状態にあることが原因と思われます。
しかし、不安定な状態にしてしまった原因は、周囲の人の接し方にあると思います。
たとえ忌み嫌われている人柱力であっても1人の人間であることには変わりないですから、
彼が優しさや愛情といった温かいものを感じることが出来るようになれば、きっと変わってくるはずです。
彼は今、親や兄弟ですら拒絶している状態であるようですが、私がそれを解決する取っ掛かりを作るので、それ以後は彼への態度を改め、親しく接するようにして下さい。」
「しかし、そう簡単に上手くいくものかね。」
「大丈夫です。同じ境遇を持つ者同士なら、ということで。」
「・・・そうか。済まないが、宜しく頼む。」
「はい、お任せ下さい。」
風影との対談が終わり、ナルトは我愛羅のいる部屋へ案内された。
「誰だ、お前。」
部屋に入ると、ナルトを睨み付けながらこんなことを言う子供がいた。
「初めまして、我愛羅君。
オレの名前はうずまきナルト。
オレは、お前と友達、もとい理解者になりに来た。」
「なん・・・だと・・・?」
「そういう反応するのも無理はない。
唐突にそんなことを言うヤツを見たことがないだろうからな。」
「・・・だがお前もどうせオレを裏切るのだろう?」
「それは絶対にしない!
オレだってお前と同じ人柱力、つまり、同じ痛みを知っている者なんだ。
自分だって嫌な思いをしたことを、他人にする訳がなかろう。」
「・・・・・・。」
「すぐにとは言わない。
少しずつでいいから、自分のことを話してくれねぇか?
俺も、お前に聞かれたことは全部答えるからさ。」
ナルトがそう言うと、我愛羅は殺気を引っ込め、何も言わず無表情で頷いた。
だが、確かに頷いたその姿に、ナルトは変わり始めた我愛羅の内面を見た気がした。
砂の国に滞在してから1週間が過ぎた。
最初はぎこちなかった我愛羅も、ナルトにだけは笑顔を見せるようになっていた。
その確かな変化に、風影は驚きながらも、これが普通なのだ・・・これが本来の我愛羅なのだ、と喜んでいた。
今まで我愛羅のことを怖がっていた兄のカンクロウや姉のテマリも、彼が変わったことで仲良くなり、3兄弟の微笑ましい光景が見られるようになった。
そして、さらに1週間後・・・
砂隠れの里のとある場所に人だかりが出来ていた。
その中心にある物は、小さな屋台であった。
その近くに『冷やし中華始めました』と書いてある旗が立っている。
「へい、お待ち!」
そう言って『冷やし中華』を出した人物は、日本語に訳すと『最後の物語』という名前が付いたゲームに出てくるラスボスを彷彿させるような長い銀髪の長身の男であった。
「ナルト、具材を全部切り終えたぞ。」
我愛羅はそういって切ったものを種類毎に分けて大きめの容器に入れて差し出す。
そう、我愛羅の発言からわかったと思うが、アレは『セ○ィロスに変化したナルト』であった。
何故それに変化したかと言うと、『イケメン効果で集客率を・・・!』らしい。
いまナルトが屋台を開いている理由は2つある。
1つは、『我愛羅と里人が仲良くなる切っ掛けを作る』ため。
そしてもう1つは、当初の目的であった『金稼ぎ』であった。
ちなみに、材料費は全部火影持ちである。
何と、あざといことか。
材料は全て巻物に収納して持ってきていたので暑さで腐ることもなく、常に暑い砂隠れでは『冷えていてしっかり食べれるもの』が売れるだろう、という読みは見事的中し、木の葉にいくらか納めたとしても最低5年は食べていけるほどの黒字を叩き出した。
我愛羅も里人とすっかり仲良くなり、この計画はまさしく一石二鳥となったのであった。
材料が底をつき、屋台を閉めたときに丁度、火影から『帰還するように』とお達しがあったことを風影から伝えられたので、早速荷物をまとめて帰ることにした。
里の出入口まで来たとき、風影と我愛羅、カンクロウ、テマリがナルトを見送りに来ていた。
「皆さん、お世話になりました。」
「もう行くのか・・・」
「ああ。でも、また会えるさ。」
「ナルトくん・・・君には、本当に感謝している・・・」
「風影様・・・」
「四代目火影、彼は変わったやつだったが、自然と信用できる人格者だった。
彼はあの当時の影の中では信頼できる人物だったよ、私にとって・・・」
「えっ?」
「だからこそ、嬉しいんだ。
私の息子を変えてくれたのが、あやつの息子の君で・・・」
「・・・・・・。」
「これからも真剣に向き合っていこうと思う。
あの子自身と・・・まっすぐに・・・
本当にありがとう・・・うずまきナルト・・・
少ないとは思うが、これは私からの餞別だ。受け取ってくれ。」
そう言うと、風影はアタッシュケースを4つ差し出した。
ナルトはこれを少し開いてみて、驚愕する。
「エッ!?こんなに貰っちゃっていいんですか!?」
「これでも少ないと思っている。
ナルト君には感謝しきれないくらいだからな。
ぜひ、受け取って欲しい。」
「・・・わかりました。有難く頂戴します。」
そう言うと、ナルトはアタッシュケースを4つ、巻物に収納した。
「ナルト、お前が来たおかげで俺たちは本当の兄姉になれた。
感謝してるじゃん。」
「なんだよ、そんなこと。
別に気にしなくて良いよ、カンクロウ。」
「本当に、感謝している。
我愛羅を良い方向に導いてくれたこと・・・」
「俺の方こそ、我愛羅に出会えて本当に良かったって思ってるよ。
テマリ、俺の方こそ・・・ありがとう・・・」
ナルトは少し照れて頭をかきながら、2人に感謝の言葉を述べた。
「・・・ナルト!」
「我愛羅、またいつか会おう。」
「・・・ナルト、お前に出会わなければ・・・俺は、きっと寂しい人間になっていたんだろうな・・・
父の心も兄姉たちの心も知らず・・・孤独な人間になっていたんだろう・・・
ナルト、お前に会えて・・・本当に・・・良かった・・・」
「なに辛気臭ぇこと言ってんだ!
我愛羅、俺たちは親友で、同士だ。
だけどな、ライバルだからな、俺たちは。
どっちが先に、火影か風影になるか勝負だ!」
ズビシッと指を指すナルトに、我愛羅は不適に笑い、
「望むところだ・・・負けんぞ・・・俺は!」
「おう!俺も負けねぇからな!!」
かくして、出会った一尾と九尾の少年はお互いを良き友として、時にはライバルとして、お互いの関係を認め合ったところで、ナルトは砂隠れの里を後にしたのだった。
余談だが、アタッシュケース1つにつき1000万両も入っていたらしい。
「エッ!?」とか言ってた癖に、実は内心遠慮なんぞ全くしていなかったそうだ。
経済難の里から多額の金を持って行ったナルト・・・悪魔や・・・
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