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流星のロックマン STARDUST BEGINS

作者:Arcadia
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星屑の覚醒
  14 地の底での出会い

 
前書き
今回は中盤とラストにゲスト?が登場です!
ご注目を 

 
彩斗はセントラルエリアへとやってきた。
多くのナビたちが行き交い、多くのデータが流れていく。
ネットナビたちはオペレーターに変わりあらゆる作業を行っている。
ハッキリ言ってしまえば、多くのネットナビは傀儡だ。
オペレーターのコマンドを実行するために存在する。
しかし電脳空間に自ら足を踏み入れ、会話できるようになってみると、それが友達だと思い始める。
メリーがネットナビであるからというのが大きいだろう。
普通に会話して喜びを共有できる。
そんな感傷に浸りながら、彩斗は石碑の前に座り腕を組みながら周囲を伺っていた。
あの掲示板の書き込みが確かならば、ValkyrieのナビはすぐにValkyrieのナビだと分かるだけの外見をしているのだと踏んでいた。
だがふと後ろを振り向けばセントラルタウンに伝わる伝説が記された石碑があった。
どうやら昔、人間のエゴ、バグの集合体が凄まじい悪魔を生み出したらしい。
その名は『電脳獣グレイガ』。
巨大な狼のような姿をしてその鋭い牙で沢山のデータを破壊し尽くした。
人類はそれに対向するために、もう一体の電脳獣を作り上げた。
『電脳獣ファルザー』。
巨大な翼を持った電脳獣。
人類はグレイガと戦わせ、グレイガをデリートさせようとした。
だが戦いを重ねる度にファルザーも野生の本能に覚醒し、人類のコントロールから離れ、タダの獣と化した。
結果として人類は最悪の敵を自らの手で増やした。
だが対向する術もなく、電脳獣2体は各地で暴れ回り、最後はこのセントラルエリアで決着がついた。
その際に出来たのがセントラルエリアの大穴だった。
石碑の内容を大まかにまとめるとこういうことだ。
早い話が人間の愚かな歴史を反省し、前に進もうという精神を表そうとしている。
彩斗は再び辺りを見渡す。
すると自分の辺りのナビたちから衆目を浴びていることに気づいた。

「ねぇ、あのコ、何だか変わったファッションよね?」
「でもカッコイイわ。私のオペレーターと同じような格好」
「何だろ?新しいドレスアップチップか?」
「いいじゃん。それに可愛い顔してるし。何かの宣伝じゃない?」

「....」

彩斗は他のナビと違って、格好としては普通の人間だ。
Gパンにワイシャツという至って普通の格好。
だが電脳空間では変わり者にしか見えない。
彩斗は視線を無視しながら目的を探す。
しかし見つからなかった。

「...もう別のエリアに移動したのか?」

彩斗は立ち上がり、自分に向けられる注目を跳ね除けるように移動を始めた。
適当に掲示板を探し、情報を探るためだ。
だがふとエリアの中央にある巨大な穴に足が動いた。
電脳獣が戦ったことにより生じた巨大な傷跡。
ニュースによれば昨年、この穴から電脳獣が復活して才葉シティで暴れまわったらしい。
だから今は電脳獣など存在しない。
それは理解していた。
だが覗きこんでみると足が竦む。

「っ....」

今にも電脳獣が飛び出してきそうな恐怖に襲われた。
底の見えない、まさに地獄に通じる
だがその時、ふと耳に声が聞こえてきた。

「!?」

他のナビには聞こえていないようだが彩斗には確実に聞こえた。

助けて....

救いを求める声だ。
おまけに頭にイメージが浮かぶ。
甘音色の髪に町の髪飾りが特徴的な少女の姿。
前に頭に染み付いて離れないそれが再び呼び起こされた。

「....気のせい...だよね」

彩斗は踵を返し、再び歩き出す。
どうも最近はこの少女のイメージが頭から抜けない。
事あるごとに彼女の存在が浮かぶが、姿がハッキリと出てこない。
今のように頭に浮かぶのは稀だった。
原因を思い出そうとしながら歩き続けると目の前が歪み始めた。

「.....」

彩斗は自分の目を擦った。
眠気はない。
考え事のし過ぎて頭の回転が鈍っているのかも思った。
だが違う。
確実にセントラルエリアが歪んでいた。
他のナビたちの驚きの声を上げていたのだ。

「....何だ?」

少女からこの異常事態に思考を切り替える。
しかしそれを待たずして彩斗の耳に声が聞こえた。

『サイトさん!!早くプラグアウトしてください!!』

「!?メリー...」

メリーは部屋の椅子でグッタリとしている彩斗の耳に話しかけているのだ。
恐らくは大声で鼓膜が破れるほどの大声だ。
彩斗は頭を押さえる。

『DOS攻撃でセントラルエリアのサーバーがダウン寸前です!!このままじゃシス..テ...ダ.......ます!!!』

「!?」

確かにDOS攻撃に見られる典型的な状態だ。
大量のアクセスの影響でサーバーがダウン寸前。
それもウイルスなどが感染したボットマシンのネットワークから攻撃でもされていたらダウンどころかデータが破損する。
所詮この空間はサーバーのデータで構成された仮想空間だ。
データが改変されればエリアは別世界のように改変され、破壊されれば跡形もなく崩壊する。
そんなガラス細工よりも脆い世界だ。
彩斗は事の重大さに気づく。
そしてプラグアウトしようとする。
だが既に遅かった。

「!?な....はっ...」

既にプラグアウトしようとするナビが殺到し、回線の速度が大幅に低下、それどころかタスクの処理待ちで彩斗はプラグアウトすることが出来なかった。
それと同時に足元がグラグラと地震のように揺れ始める。
エリアが崩壊を始めた。
電脳獣の石碑も崩れ落ち、地面に亀裂が入ってくる。

「あぁ...あ....」

他のナビたちは悲鳴を上げて逃げ惑っているというのに、彩斗は一歩も動かなかった。
恐怖で足が竦んでいるわけでもなく、自分の無力を恥じ、逃げることを忘れていた。
Valkyrieの策略に嵌ったようなものだ。
最初から負けていた。
このエリアでの目撃情報があったことから容易に何かしらの罠があることを予想できたはずだ。
そうしている間にも亀裂は彩斗の足元を捉えていた。
大きな物音を立てながらエリアの地面が崩れ落ちていく。
そして彩斗はその場に跪き、その亀裂に飲み込まれた。

















ここは何処だ?

単純極まりない疑問を抱きながらもはや夜のジャングルにも近い荒れ野原を彷徨う存在がいた。
ここが俗に『アンダーグラウンド』と呼ばれている場所なのは分かりきっていることだった。
彼は『フォルテ』という名のネットナビだ。
オペレーターを無くした俗に言う『はぐれナビ』。
しかしこのナビはオペレーターを必要と考えてはいなかった。
むしろ人間の存在など必要性を微塵も感じていなかった。
かつて人間に裏切られた。
無実の罪で完全に存在を消され掛かったのだ。
それ以来、人間に収まること無い恨みを抱いている。
もはや怨念と言っても過言ではない。
そして彼にはもう1つの疑問があった。

なぜオレはアイツに負けた?

かつて今まで無敗を誇ってきた自分が一度だけ負けたことがあるのだ。
それも人間の味方をするような一風変わった者に。
今でもその青い姿と憎ったらしい宝塚の男役のような声。
名前は『ロックマンエグゼ』と言った。
自らの生き方を否定し、圧倒的な戦力差にも関わらず何度も挑みかかってきた。
最終的に自らを倒した。
どう考えてもありえない。
その理由、そして更なる強さを求めてこの世界を放浪し続けている。
だがその時、ふと頭上から光が刺した。

「ん?」

見上げれば、まるで隕石のように何かが降ってきている。
まるで流星群だ。
たとえ何処まで心が荒んでいようともその美しさに心奪われぬ者はいないだろう。
幻想的な風景だ。
だがその正体はすぐに分かってしまう。
正体は美しさとはかけ離れたものだった。

「.....フン」

目の前に降ってきたそれを軽くひと蹴りして歩き続ける。
降ってきたのはデリート寸前のナビたちだ。
大気圏で焼け焦げたかのようで虫の息と言った状態だ。
何が起こったかは分からないがオモテのエリアが崩壊したために落ちてきたようだ。

「ん?....キサマは...ロックマン」

フォルテの目に同じく流星の如く落下してきた少年が留まった。
見覚えのある顔だった。
彩斗だ。
かつて自分を倒したロックマンエグゼとそっくりだった。
思わず怒りが込み上げ拳を握る。
だがすぐに拳を緩めた。
顔は同じでも外見が違った。
白いワイシャツに青のGパンというネットナビとはかけ離れた格好をしていた。
ナビマークも無ければ、どう考えて普通のネットナビとは言い難い謎の存在だった。

「...勘違いか....」

フォルテはため息をつくと再び足を動かした。
『イモータルエリア』へと向かうためだった。
そこには自分の今までに戦ったことの無いような存在がいるような気がしていた。
だが彩斗の顔は喉に刺さった骨のように頭から消えることはなかった。

「アイツは...一体」

間違いなく普通のネットナビではなかった。
だがこの空間にいる以上はネットナビかそれに近い者、もしくはウイルスだ。
もし仮にネットナビでなく人間に作られたウイルスならば相当な悪意を感じた。
まるで自分を馬鹿にしているかのように。

「アイツは1人いれば十分だ...」















「あぁ......」

彩斗は目を覚ました。
数分の間、意識を失っていたのだ。
あの地獄のような電脳空間での人為的な大災害。
その地割れに飲み込まれて落下した。
無事であるのが不思議な感じはなかった。
辺りを見渡せば、既にデリート寸前のナビたちが大量に転がっている。
自分は他のナビたちとは違うと理解していたのだ。

「ここは....まさか」

なんとなく察しがついていた。
先程見ていた石碑に記されていた電脳獣が戦ったことによって出来た空間だ。
あの大穴の底、アンダーグラウンドだ。
薄暗くまるでジャングルのような異様な空間だ。
だが間違いなく電脳空間だった。

「早く出ないと...」

腹部と足に激痛が走りながらも彩斗は立ち上がった。
そして出口を探して歩き始める。
辺りではうめき声を上げてデリートを待つだけのネットナビの凄惨な死に様が何度も目に入る。
正直言ってネットナビの死と人間の死の違いは大きいものかと彩斗は思っていた。
違いと言えば死体が残るか残らないか程度。
人間は死ねば死体が残る、ネットナビは完全に消滅する、その程度の違いだ。
ネットナビであろうと人間同様に死は恐れるものだ。
ウイルス感染、データの破損、そして人為的なデリートコマンド、人間で言うところの病気、怪我、殺人によって死ぬのとほぼ同義だ。

「うっ!」

彩斗は足元の残骸データに引っ掛かりバランスを崩して膝をつく。
だが立ち上がり、再び歩き続けた。
地獄の屏風絵が司会に広がっている。
むしろ跪いて下を向いていた方が良かったように思える光景だ。
歩きながらもう世界の終わりのような感覚を覚えた。
目の前には数体の野生化したウイルスがいる。
今にも自分の襲い掛かってきそうな感じだ。
だが襲われる前に彩斗はふと足を掴まれた。

「!?うわっ!!!」

その場に倒れ、足を引っ張られた。

「う...誰?」

彩斗は洞穴のような場所に引っ張られたのだった。
その場にいたネットナビによって。

「ロックマン...頼む。この娘を...」
「!?」

そこにはまるで軍人のような格好をしたナビがいた。
全体的に灰色から黒のネットナビ。
そして可愛らしい甘音色の髪のネットナビを抱えていた。
だが彩斗は自分が『ロックマン』と呼ばれたことの方が違和感があった。

「君は...どうして僕がロックマンだと」
「何を言っている?キサマ、ロックマンではないのか?」

この2人の間での『ロックマン』の認識は大きく異なっていた。
彩斗は自分が昨晩姿を変えた『ロックマン』。
そしてこのナビはかつての友であった『ロックマン』。
この両者は根本は同じでも全く異なるものだった。

「今はそんなことはどうでもいい!!キサマが誰であれ、この娘をつれて早くここから出ろ!!」

ナビはそう言いながら彩斗に自分が抱えていた少女を彩斗に渡した。
だが彩斗は全く理解が及ばないというのに拒むことなく受け取った。
彩斗の胸にふわりとした感覚が伝わってくる。

「この娘は....」

見覚えがあった。
いつも夢に出てくる亜麻色のロングヘアーに蝶の髪飾り、そして可愛らしいドレスとそれに違和感がないくらいの美しい顔立ちが特徴的な少女だ。
どうしてここにいるのか。
そんなことは考える暇はなかった。
ナビは既にデリート寸前だったのだ。

「おい!あんた...」
「私はもう間に合わん....だがこの娘だけは....」
「...くっ」

いくら本人が死を悟っていても、デリートを目で見ることになるというのは何があっても辛いことだ。
彩斗はデリート寸前にどうしても聞いておきたい疑問を口にする。

「でもどうやって?」
「上だ、このエリアはセントラルエリアの真下だ。真上を目指せば脱出できる」
「僕には出来ない」
「私の力を与える...お前なら使えるはずだ」
「君の名前は?」

彩斗は最初にすべき質問を口にした。

「『カーネル』だ。この娘の兄だ。時間が無い!私のデータをお前にインストールする!」
「!?...分かったよ、カーネル」

兄という言葉に彩斗は反応した。
カーネルとこの娘を見て、自分とメリーを重ねた。
自分とメリーが同じ状況ならば同じ事するはずだと思ったのだ。
彩斗は立ち上がり目を閉じた。
そしてカーネルの体は消滅し始め、その光は彩斗を包み込んだ。
耳にはカーネルの最後の言葉が聞こえていた。

「....この娘を...『アイリス』を頼んだぞ...」

彩斗は既に姿を変えていた。
カーネルそっくりの『ロックマンエグゼ カーネルソウル』。
そしてアイリスをしっかりと抱え、目の前のウイルスたちを睨んだ。



 
 

 
後書き
今回のエグゼからのゲストはカーネルとフォルテ、そしてアイリスでした!
でもアイリスはこれまで数話登場してますし、これからメインキャラクターとなっていきます!
 
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