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ヘタリア大帝国

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TURN92 パルプナ=カラードその二

「エイリスはじまって以来の危機です」
「だから今度こそはな」
「勝たなければなりません」 
 こう兄に返す。
「どうしても」
「だからです」
 モンゴメリーが二人に言う。
「ここは正規軍だけではなくです」
「あの娘の力を借りるか」
「そうしましょう、ただ」
 モンゴメリーは決意に加えて後ろめたいものもその顔に見せた、そのうえでイギリス達にこうも言ったのだった。
「あの娘を利用するのは」
「ああ、それはな」
「よくないことです」
「戦場に立つのは軍人だけでいいからな」
「彼女は軍人ではありません」
「凄く優しい娘だよな」
「その娘を戦場に送り出すというのは」
 それはとてもだった。
「やはりどうしても」
「仕方ないか」
「そうなりますな」
 こうした話をしてだった、一行は南アフリカに降り立ちそうしてだった。
 総督の官邸に行く、すぐに太って天辺が聖職者の様に禿げた総督が彼等を出迎えた、だがその総督はだった。
 イギリスは恭しい出迎えをその右手で制してこう言った。
「あの娘はいるか?」
「パルプナですか」
「ああ、あんたの秘書だったよな」
「はい、そうです」
 その通りだと答える総督だった。
「ですがその、誓って言いますが」
「酷いことしてないでしょうね」
 マリーがむっとした目で総督を見て問うた。
「隠してもばれるわよ」
「その様なことは全く、祖国殿達に誓って」
「だといいけれどね」
「そのパルプナですね」
 総督は必死の顔で汗をしきりに拭きながら答える。
「ご用があるのは」
「ああ、ちょっと会いたいんだけれどな」
「わかりました、それでは」
 こうしてその少女パルプナ=カラードがイギリス達の前に出て来た。薄紫の波がかった長い髪の毛に褐色の肌をした整っているが弱々しい表情の少女だ。赤紫の優しい光の垂れ目が印象的だ。
 よく見れは長い髪をおさげにして左右に分けている、頭には褐色のカチューシャの様なリボンもある。リボンと同じ色と白のドレスを着ている。服は見事だがやはりおどおどとした態度である。
 そのパルプナを連れて来て総督は言うのだった。
「ちゃんと提督待遇ですし、食事も部屋もちゃんとしていますし」
「とにかく虐待はしていないのね」
「それはもう、前任者の様には」 
 前任者はマリーが来たと同時にその統治の実態を知った彼女によって更迭された、それで来た総督なのだ。 
 その総督がこう言ったのである。
「私は全くです」
「わかったから、もういいわよ」
「はい、私は別に虐待なぞはしていませんので」
 前任者と違い、というのだ。
「そのことはもうご安心下さい」
「とにかくね、この娘がね」
「はい、怪獣を操ることが出来ます」
 総督はパルプナを指し示して話す。
「それはもうかなりのものでして」
「わかったわ。じゃあパルプナだったわね」
「は、はい」
「いや、別にいじめないから」 
 びくっとしたパルプナにすぐに返す。
「怯えないでいいわよ」
「怯えないでいい・・・・・・」
「この総督にもさせないし。僕が来るまではね」
 それまでは違ったが、というのだ。
「とんでもなかったからね」
「俺もな、至らなかったよ」
 イギリスも顔を顰めさせて話す。 
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