緋弾のアリアGS Genius Scientist
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
イ・ウー編
武偵殺し
2弾 VS.セグウェイ
前書き
タイトルにセンスが無くてすみません。マジで。
……
…………
「う……っ。痛ッてぇ……」
……俺は……
何か狭い箱のような空間に、尻餅をついた姿勢で収まっている。
――――ここは、どこだ。
俺は確か、体育倉庫に突っ込んでしまって……ああ、分かった。
ここは、跳び箱の中だ。
どうやら一番上の段を吹っ飛ばして、中に嵌ってしまったらしい。
しかし何故だろう。身動きがとれない。
身動きがとれないのはここが狭いせいもあるが、座っている俺の前に、甘酸っぱい香りのする何かがあるせいでもありそうだった。
なんだこれは。あったかくて、柔らかい?
脇腹を、両側から何か心地よい弾力を持ったものに挟まれているし、両肩に何かがもたれかかっている。さらに額の上には、ぷにぷにした物体が乗っていた。
「ん……?」
額と頬で、そのぷにぷにした何かを押しのけるようにすると――――
――――かくん。
俺に押し付けられたのは、
(…………可愛っ……!)
いい、と反射的に言ってしまいそうな……
女の子、の顔だった。
女子寮から飛び降り、パラグライダーに乗ったまま戦い、俺を空中にさらって助けた、さっきの勇敢な少女だ。
「……!」
それで気付く。
俺の脇腹を左右から挟んでいるのは、彼女のふともも。
両肩に乗っかっているのは、胸。
――――何がどうもつれ合ってこうなったのかは分からないが、俺は、彼女を抱っこして、ここに嵌ってしまっているらしいのだ!
ありえない。ありえないが。
今はあえてこう言おう。
(神様……ッ!ありがとうございます!)
俺も健全な男子高校生。こんな夢のような事態に陥って、嬉しくない訳がない。
だがしかし、先ほどのこの娘の言動を見るに、目を覚まされたら、たぶん俺は八つ裂きにされてしまうだろう。
ならば逆にさっさと起きてもらって、寝ぼけてる内に言い訳をしとかなければダメだな。うん。
「……お……おい」
声を掛けてみるが、答えはない。
少女は眠るように気を失っている。
その目を縁取るのは、ツンツンと長いまつげ。
甘酸っぱい香りの息を継ぐピンクの唇は、桜の花びらみたいに小さい。
ツインテールに結われた長い髪は、細い窓から届く光に、キラキラ……と豊かなツヤをきらめかせていた。色は、ピンク。珍しいな。ピンクブロンドってやつか。
さっきは俺も必死だったから気が付かなかったが……かわいい。文句なしに可愛い子だ。まるでファンタジー系のアニメから飛び出してきたような、作り物みたいに可憐な少女。
だが……この可愛さはあれだな。どちらかというと、子供とかお人形さんとかに感じる、そっち系の愛らしさだな。というのもコイツ、こうやって間近に見るとひとかわチビッ子なのだ。
この体格はたぶん、中等部。いや、もしかしたらインターン制度で入ってきた小学生かもしれないな。
こんな小さな子が、さっきの救出劇をやってのけたのか。
すごい。それはすごい、のだが……
「……くっ……」
この子はいま俺の腹にまたがるような姿勢になって、腹部をきつく圧迫してきていた。
息が、くるしい。
そのため、なんとか姿勢を変えられないものかと藻掻いていると――――
「?」
俺の鼻を、少女の名札がくすぐってきた。
今日が始業式なので学年やクラスは未記入だったが、名前は――――『神崎・H・アリア』。
「……?」
でも、なんでこんな高い位置に名札があるんだ?
そう思って視線をおろしていくと――――
「――――っ!」
このアリアとかいう少女のブラウスが……
首の辺りまで、思いっきりめくれ上がってしまっていたのだ!
どうやらここに転がり込んだ時の勢いで、ズレてしまったらしい。
おかげで、白地にハート・ダイヤ・スペード・クローバー。トランプのマークがぽちぽちプリントされたファンシーな下着が、丸出しになっている。
『 65A→B 』……?
下着の縁からぴょろっと出ていた妙なタグの表記に、ああ、と思いつく。
これはプッシュアップ・ブランジ・ブラ。いわゆる『寄せて上げるブラ』だ。
何でこんなことを知っているのかというと今はもう死んだ知り合いが詳しかったからで、断じて俺が自発的に知っていた事ではない。ないったら、ない。
それにしてもこのアリア、AカップをBカップに偽装しようとしているらしいのだが、気の毒なことに、その偽装は失敗していると言わざるをえないだろう。寄せて上げる元手に乏しすぎて、寄りも上がりもしていないからだ。
あまりにも可哀想なので、合掌しとこう。南無三。
「……へ……へ……」
「――――?」
「ヘンタイ――――――――!」
突然聞こえてきたのは、声オタだったら卒倒ものの(俺はそこまで重度の声オタではない。どちらかというと映像やストーリーが大事だ)アニメ声だった。
というかお前、その顔その姿でその声は反則じゃないか?
「さっ、さささっ、サイッテー!!」
どうやら意識を取り戻したらしいアリアさんは、ぎぎん! と俺を睨んで、ばっ! とブラウスを下ろすと――――
ぱかぽこ ぱかぽこ ぱかぽこ!
腕が曲がったままで力の籠もってないハンマーパンチを、俺の頭に落とし始めた。
「おっ、おい、やっ、やめろ」
「このチカン! 恩知らず! 人でなし!」
ぱかぽこぱかぽこぱかぽこぱかぽこ!
どうやらアリアは、自分のブラウスを俺がめくり上げたと勘違いしているらしい。まあ、普通はそう思うわな。だが一応、説明くらいしとかなきゃな。説明して分かってもらえるかは別として。
「ち、違う。こ、これは、俺が、やったんじゃ、な――――!」
そこまで、殴られつつ俺が言ったとき。
――――ガガガガガガガンッ!!
突然の轟音が、体育倉庫を襲った。
――――何だ!?
今、跳び箱にも何発か、背中の側に激しい衝撃があった。
まるで、銃撃されているような――――
「うっ! まだいたのねっ!」
アリアはその紅い瞳で跳び箱の外を睨むと、ばっ、とスカートの中から拳銃を出した。
「何がいたんだ?」
「あのヘンな二輪車! 『武偵殺し』のオモチャよ!」
『武偵殺し』?ヘンな二輪車? ――――さっきの、セグウェイのことか。
じゃあ今のは、まるで、じゃなくて本当に銃撃だったのか。
体育の授業でも拳銃を使う武偵校では、跳び箱も防弾製だ。そこはラッキーだった。
だが――――こんな箱に追い詰められた状態から、どうやって脱出したものかな。
「あんたも――――ほら! 戦いなさいよ! 仮にも武偵校の生徒でしょ!」
「無茶言うな!俺は後方支援が専門の装備科なんだよ!」
「これじゃあ火力負けする! 向こうは7台いるわ!」
7台……短機関銃が、7丁もこっちに向けられているっていうのか。絶望的だな。
「――――!」
その時だった。予想外のことが起きた。
銃を撃つため無意識に前のめりなったアリアが――――
その胸を、俺の顔に思いっきり押しつけてきたのだ。
ババッ! バババッ!
跳び箱の隙間から応射するアリアは射撃に集中しているらしく、自分の胸が俺の顔に密着していることに気づいていない。
一見無いように見えたが、いや、実際ほとんど無いのだが、そこは女子の胸。
こんなに小さいのに、ちゃんと柔らかいふくらみが、あった。
いま俺の顔面には、夢のように柔らかい、水まんじゅうみたいなかわいいものが押し当てられている。
知らなかった。女の子の胸とは、ちっこくても柔らかいものだったのか。もっと大きく丸くならないと柔らかくならないものかと思ってたが、違ったみたいだ。「貧乳はステータス」って言ってた奴らの気持ちは今ならよく分かる。
緊急時にもかかわらず、どこか冷静にそんなことを考えてしまってから、俺は決めた。
こんな小さくて柔らくて可愛い女の子が戦っているんだ。俺が傍観しているわけにはいかないだろ。それに、さっき助けてもらった恩もあることだしな。
ズガガガッ! ガキンッ!
弾切れの音を派手に上げたアリアが、身をかがめて拳銃に弾倉を挿し替える。
「――――やったか」
「射程圏外に追い払っただけよ。ヤツら、並木の向こうに隠れたけど……きっとすぐまた出てくるわ」
「OK。それで十分だ」
「……は?」
いきなり変なことを言いだした俺に、アリアが眉を寄せる。
一方、俺は今からやる行為が本当に必要かどうかを考えていた。
が、逡巡は、ほんの一瞬で。
(ええい。ここまできたらヤケクソだ。やってやる!)
俺はアリアの細い脚と、すっぽり腕に収まってしまう小柄な背中に手を回し、すっくと立ち上がった。
「きゃっ!?」
「しっかり、つかまって、ろよ!」
いきなりお姫様抱っこされたアリアが、ぼんっ。
ネコっぽい犬歯を驚きに開いて、真っ赤になった。
俺はアリアを抱いたまま跳び箱の縁に足をかけ、バッ、と倉庫の端まで跳ぶ。
そして、積み上げられたマットの上に……ちょこん。
アリアを、お人形さんみたいに座らせてやった。
「な、なな、なに……!?」
「お前はそこで座ってな。後は俺が引き受ける」
久しぶりの戦闘。腕が鈍ってなきゃいいんだが。
「あ……アンタ……どうしたのよ!? おかしくなっちゃったの!?」
慌てまくったアニメ声に、かぶせるようにして――――
ズガガガガガガンッ!
再び、UZIが体育倉庫に銃弾を浴びせてきた。
だが壁は防弾壁だし、ここはヤツらから見て死角になっている。撃つだけ弾の無駄だ。
俺は軽くため息を吐きながら……ヤツらの射撃線が交錯する、ドアの方へと歩いていった。
「あ、危ない! 撃たれるわ!」
「安心しろ。俺は撃たれないから」
「だ、だ、だから! さっきからなにヘンなこと言ってんのよ! 何をするの!」
俺は半分だけ振り返って、赤面しまくりのアリアに手を振ると――――
「オモチャを解体して遊んでくる」
青と銀色に着色された拳銃を抜いて、ドアの外へと身を晒した。
グラウンドに並んだ7台のセグウェイが、一斉にUZIで撃ってくる。
その弾は――――
すべて、当たらない。
当たるわけがない。
俺はUZIの銃口の向きから、飛んでくる弾の弾道を予測できるからな。
いい狙いだ。すべて、俺の頭部に照準を合わせてるな。
俺はその一斉射撃を――――上体を後ろに大きく反らして、やりすごしてやった。
そしてその姿勢のまま、左から右へ、腕を横に薙ぎながらフルオートで応射する。
使った弾丸は、14発。
その内の半分は、セグウェイたちのボディに。
もう半分は、UZIの銃口に飛び込んでいく。
ズガガガガガガガガガガガガガガンッ!!
セグウェイたちはすべて、その銃座のUZIと、本体の主機関を吹っ飛ばされた。
俺の、14発の銃弾に。あっけなく。
後書き
前回、前々回を読んでくださった皆様はお久しぶり。「この話から読み始めたんだよ!」という、どこぞの白いシスターを連想させる方は初めまして。白崎黒絵です。
今回はミズキが戦います。そりゃもう戦います。二次創作なのに、やってることは基本的に原作のキンジさんと同じですが(笑)
上記のとおり、この作品は二次創作です。本当ですよ?
「二次創作って言ってる割には、(ほぼ)原作通りなんだけど………(冷たい視線)」
そう言いたい方の気持ちもわかります。ですが冷たい視線はやめてください。心が折れるので。
今回はなんと、本作のヒロインの1人。神崎・H・アリアさんから一言。
「バカ! 細かいことは気にしないの!」
それでは皆さん。読んでくださってありがとうございました。また次回、無事に更新されたら会いましょう!
疑問、質問、感想、絶賛受付中です!苦情は送らないでね?心がry
ページ上へ戻る